第6回(203号/7月号)
貴重な資料を次世代へつなぐ-社会運動資料センターの発足
第15回公開講座(2019.11.16)
●社会運動の資料保全と運動の軌跡を次世代に繋ぐラストチャンス
とくしま社会運動資料センターは、公益法人改革に伴う労働福祉会館の公益目的事業として、2016年10月1日に開所しました。
開所に先立って、労福協を中心に川崎労福協「労働資料室」、友愛労働歴史館、大崎労政会館資料室などを視察し、検討を重ねました。当初は労働福祉会館が“労働者の砦”としての役割を担ってきたことから労働運動資料センターとしての設立をと考えていましたが、戦前・戦後の労働運動をみてみると、紛れもなく社会全体の課題を労働者の課題として、労働運動が社会運動の中心を担ってきた歴史があり、社会運動資料センターとして設立するとの結論に至りました。
と同時に、県内の労働運動、社会運動の中心となった団塊の世代が高齢化する中で、貴重な資料が散逸する危険もあり、戦後70年を迎える今が資料保全と運動の軌跡を次世代へと繋ぐラストチャンスであるとの強い思いもありました。
設立に際しては、労金、全労済による書庫、パネル等の寄贈もあり、文字どおり労福協・労働者福祉事業団体を中心とする社会運動関係団体の協働事業としてのスタートとなりました。
具体的な事業としては、資料の収集・保全・公開を基本として、①資料収集と検証・研究、②常設の資料閲覧室、③公開講座と特別企画展の開催を三本柱と位置付けました。
とくしま社会運動資料センター開所(徳島新聞2014.09.01)
とくしま社会運動資料センター開会式典(2014.10.01)
おかげさまで、開所以来今日まで多くの関係者の協力で、①約2万点の資料収集、②「輝いた阿波の女性たち」「徳島の部落史・社会運動史」などをテーマとした16回の公開講座、③「賀川豊彦と𠮷野作造」「20年目の吉野川第十堰住民投票」など7回の特別企画展、④公開講座講演録の3回発刊などに取り組むことができました。
現在は労働福祉会館と労福協の法人統合により労福協が運営主体となっています。
出版記念祝賀会(2016.12.10)
とくしま社会運動資料センターの発刊物
第6回パネル展「吉野川第十堰の可動堰化計画と住民投票」(2020.1.23-30)
●戦後労働者福祉運動の「全国の資料収集と聞き取り」を通じて「歴史と教訓」を次世代に
2年後に沖縄と徳島労福協が設立50周年を迎え、2025年には中央労福協75年の歴史と共に全ての地方労福協も50年の歴史を経ることとなります。おそらく、50周年記念誌も全て出揃い、それぞれの地方における素晴らしい活動がまとめられていることと思います。この50年から75年にわたる「戦後の労働者福祉」の歩みをしっかりと次世代に継承していくことが私たちの課題だと思います。
中央労福協ニュース(187号)で、高橋均元事務局長は「戦前・戦後の労働運動に関する膨大な資料は多くの関係組織で分散所蔵されており、散逸を防ぐためにも労働運動のアーカイブを作ろう。残された時間はそれほどないのだから」と呼びかけています。
幸いにも、中央-地方労福協でさまざまな特色ある活動に取り組んだ事務局長経験者の多くは現在も元気で活躍されています。この50周年を節目に、今こそ中央労福協が中心となり、これらの人たちとの協働で全国の労福協運動の貴重な資料の収集・保全・聞き取りなどに取り組み、戦後の労働者福祉の歴史と教訓についてとりまとめることは私たちの責務であると思います。是非とも実現へ向け努力されることを強く期待いたします。
最後となりましたが、これまで6回にわたり、後発の徳島の地での5つのチャレンジを紹介してまいりました。思いを充分に伝えることはできませんでしたが、少しでも参考になることがあれば嬉しく思います。半年間のお付き合いに感謝を申し上げるとともに、労福協に集う仲間の皆さんの更なるご活躍をご祈念申し上げます。
久積 育郎 さん
公益社団法人 徳島県労働者福祉協議会 元会長
徳島県阿南市生まれ。1996年5月から、社団法人徳島県労働者福祉協議会専務理事、2008年5月から同会長に就任。2011年5月から財団法人徳島県勤労者福祉ネットワーク理事長に就任し、この間、ファミリーサポートセンター、若者サポートステーション、ジョブ無料職業紹介所、なのはな介護支援センター、勤労者福祉サービスセンター、シニアNPO壮生、NPOフードバンク、社会運動資料センター、NPOこども食堂ネットワークなどの設立に取り組む。現在は、徳島県勤労者福祉ネットワーク理事長、認定NPO賀川豊彦記念・鳴門友愛会理事長を務める。