第4回(177号/5月号)
運動への参画を意識的に (奨学金制度)
● 当たり前となっていることの歴史を常に意識することで労福協運動の強化を
例えば「労金運動」「労済運動」の出発点は何だったのでしょうか。「安心・安全の生活」からほど遠い状況におかれていた暮らしを改善しようとする崇高な想いだったと思います。そして、それは単なる歴史のⅠページの出来事ではなく、現在に至るまでの連続し、かつ連帯に裏打ちされた取り組みであったということです。この点について、道内の労福協構成団体は共有した認識として、学習会はもとより各種会合の挨拶の中で、運動の中で意識的に取り上げるようにしています。なぜならば、「労金・労済運動」をはじめとした労福協運動は、誰かに与えられたものではなく、運動に参画し創り上げてきたものだということを再確認する必要性に迫られていると考えたからです。「困っているんです」「助けてください」と声をあげられる関係や環境を意識して創り出していくことが求められていると思います。上意下達のものではなく、繰り返し触れることで、あるいはその活動を自ら行うことによって「事業団体とお客さん」「与えられたから仕方なくやる」という意識の払しょくにつながるはずです。
● 共通語となった「奨学金制度の抜本的な改善」について
「奨学金に関わる返済が生活の負担になっている」という一本の電話相談。まさに「助けて」という声を形にしようとした瞬間であったと思います。中央労福協はこの切実な声を「奨学金制度の抜本的な改善」という形で全国運動におしあげ牽引してくれています。この運動は、学生のみならず返済に苦しむ社会人、学生をもつ保護者へと広がりを見せました。奨学金返済に苦しまなかった世代に対して現状認識の変革を迫りました。同時に、高騰する入学金や授業料、奨学金という仮面をかぶった日本の教育ローン実態、無償であるべき教育制度の理念崩壊にまでメスを入れることとなったのです。個人の問題と思われたことが、改善すべき一つの問題すなわち共通語となったのです。
このことは、労福協運動の歴史が証明していることでもあります。
北海道においては、連合、生協連、労働金庫、退職者連合がいち早く自らの課題として受け止め、北海道奨学金ネットワークの結成、組合員や大学生の実態調査、道内民間団体の奨学金支給実態調査、奨学金借り換えローン開発などに取り組んでいただくこととなり大きな財産となりました。今では、多くの個人・団体からも積極的に運動に対する理解の声が寄せられています。
一連の取り組みは、「ストップ。格差・貧困拡大」という観点から、コロナ禍で困窮する若者・学生を「食」で応援する『ほっかいどう若者応援プロジェクト』につながっていることも報告させていただきます。
札幌大学での食料支援(2021.04.23)
天使大学での食料支援(2021.04.25)
小関 顕太郎 さん
北海道労働者福祉協議会 前副理事長兼事務局長
1955年 北海道増毛町生まれ。
北海道教職員組合専従執行委員等を22年間経験。その後、2016年より北海道労働者福祉協議会の副理事長兼事務局長を勤める。2020年の総会をもって退任し、以降、北海道勤労者住宅生活協同組合の理事長として、労福協副理事長の任も担いながら現在に至る。
北海道労福協在任中は、「労働金庫全道推進会議事務局長」「労済運動推進会議事務局長」として、関係団体・事務局の皆さんの多大な協力のもと、労金運動・労済運動の推進役を果たすことができました。また、連合北海道や各地域協議会の応援をいただきながら、「勤労者福祉向上キャンペーン」(政策制度要求を含む)を全道展開しました。