第3弾は静岡県労福協で2016年より専務理事を務められた大滝正さんです。労働団体、事業団体などが強固に連携、意思疎通を図りながら、また地域とのつながりの中でさまざまな福祉の活動を展開する静岡県労福協。労働者福祉を中心とした幅広い活動にかける大滝さんの熱い思いを全6回に渡って連載します。
第1回(161号/1月号)
静岡の労福協運動の原点を踏まえて
● はじめに
私は、2019年6月に(一社)静岡県労働者福祉協議会の専務理事を退任した大滝です。この度、中央労福協からご依頼をいただき、静岡県における労働者自主福祉の活動を6回に渡り執筆させていただくことになりました。1979年4月に静岡県労働金庫に入庫し、労金で37年間、労福協で3年間、労働者福祉運動の専従者として活動に従事させていただきました。多くの方にご指導ご支援いただいた結果として今日の自分があると思っていますので、その恩返しの意味も込めてこのシリーズを担当させていただきます。なお、『「助け合い・支え合いの現場から」静岡県における労働者福祉運動』と銘打っていますが、自分自身が何かしらの立場で体現できた部分のみの表現となりますので、もっと様々な観点で静岡県の運動を語れる人が多くいますが、その点はあくまでも大滝サイズである点はご容赦いただきたいと思います。
● 労福協2020年ビジョンを受けて
昨年11月に中央労福協は総会において、「労福協2030年ビジョン」を採択しました。そのビジョン作成のワーキングにも参加させていただき、特に2020年ビジョンの総括なり成果なり課題等について意見を述べさせていただきました。2030年ビジョンは、2020年ビジョンの大きな方向性を引き継いでいますので、2020年ビジョンにおける静岡県の活動を中心として紹介することで、多少なりとも各都道府県労福協における2030年までの取組みへの参考になればと思います。
● 静岡における「労福協運動の原則」
最初に、各取組み内容に入る前に、紹介したいものがあります。「労福協運動の原則」として1974年に制定されたものです。もう46年も前のものですが、現在でも錆びることなく、この内容こそが静岡の運動そのものを示しています。私も、日常的に何かを考えるときには、必ずこの原則に立ち戻るようにしていましたので、バイブル的な位置づけであると思ってください。
● 労福協『運動の原則』 昭和49年(1974年)2月制定
私たちが、基本理念の実現をめざして労働者福祉運動を進めていく場合
- 労働者福祉運動は、労働者を中心とした職場や地域における永い闘いの歴史の中から生み出されたものであり、労働者の諸要求を実現する闘いの主体的条件である統一と団結の為に欠くことのできないものである。
- 労働者福祉運動は、労働者の経済要求のうち、福祉に関する要求を通じて労働者の暮らしを高めていくものであり、その要求は保守的政治や資本のおこなう福祉とは本質的に相違するという意識で組織されていくものである。
- 労働者福祉運動は、国にたいする社会保障拡充の闘い、資本にたいする企業内福祉の闘い、労働者の意思に依拠しておこなわれる協同事業の活動、これらの総合した力の中で拡大し発展していくものである。
- 労働者福祉運動は、暮らしの基盤である地域を活動の拠点とし、組織、未組織を問わず、全ての労働者、家族を集結した活動として進めなければならないし、各地域の活動は、固く結び合わなければならないものである。
- 労働者福祉運動における協同事業活動は、協同組合の理念、原則にもとづいて活動し、再収奪と闘い、労働者の福祉要求実現の闘いを促進していかなければならない。
この原則を守りながら静岡の運動が展開されていますので、この後の紹介する各取組みにおいて確認していただければと思います。次回以降、2020年ビジョン制定以降に静岡県が取組んできた労働者自主福祉運動の活動を報告させていただきます。
1964年の創立総会時の写真
労福協設立を伝える福祉新聞
大滝 正 さん
一般社団法人 静岡県労働者福祉協議会 前専務理事
静岡県清水市(現静岡市)生まれ。静岡県労金の役職員を経て、2016年6月から3年間、静岡県労福協専務理事に就任。2017年6月からは、福祉基金協会専務理事も兼務。労金在籍時から労福協活動に関わる。役員就任時には、フードバンクふじのくに副理事長や県ボランティア協会理事などを歴任。福祉の活動を会員と共に進めると共に、地域における福祉関係の団体との連携を重視してきた。
現在は、フリーな立場でホームレス支援のビッグイシューの活動をボランティアとして進めている。