政策・制度
政策・制度 2024年度政策制度要請
- SDGs(持続可能な開発目標)の達成と協同組合の促進・支援
- 大規模災害等の被災者支援と復興・再生および防災・減災対策の強化
- 格差の是正、貧困のない社会に向けたセーフティネットの強化
- 消費者政策の充実強化
- ディーセント・ワークの確立
- 中小企業勤労者の福祉格差の是正
- 勤労者の生活設計・保障への支援
- 安心・信頼できる社会保障の構築
- くらしの安全・安心の確保
2024年度 中央労福協における政策・制度実現に関する申し入れ
1.SDGs(持続可能な開発目標)の達成と協同組合の促進・支援
(1)政府のSDGs実施方針の優先課題の一つである「生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」の推進をはかるため、化石燃料に依存したエネルギー政策の抜本的な見直しと、「地域循環共生圏」の早期構築に向け、住民一人ひとりの主体性をもとに、これまで協同組合が培ってきた活動を活かし、国、地方が一体となり持続可能な地域づくりを推進する。
(2)国連は2023年11月、2025年を「国際協同組合年」とすることを宣言した。この中で国連は、協同組合の取り組みをさらに広げ進めるため、また、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた協同組合の実践、社会や経済の発展への協同組合の貢献に対する認知を高めるために、国連、各国政府、協同組合が、この機会を活用することを求めている。
日本政府において、2023年12月に改定された「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」の中で協同組合は「公共的な活動を担う民間主体」の一つとして位置づけられている。国連が2025年を「国際協同組合年」としたこともふまえ、政府による協同組合支援を強化すること、そのためにも協同組合との積極的な対話を進める。
(3)労働者協同組合法の目的に掲げられている「多様な就労機会の創出」と「持続可能で活力ある地域社会の実現」に向けて、各省庁の地域づくりの政策に労働者協同組合を位置づけるとともに、設立の促進に向けた予算措置の拡充を講じる。
2024年度より新たに実施される厚生労働省の「労働者協同組合促進モデル事業」(3ヵ年・新規)の着実な実行と、さらなる充実(モデル地域の拡充など)をはかる。
2.大規模災害等の被災者支援と復興・再生および防災・減災対策の強化
能登半島地震の際に、被災者生活再建支援法上の支援金に加え、珠洲市・輪島市など特定の市町村における高齢者・障がい者のいる世帯などを対象に追加支援が行われた。この支援内容を被災者生活再建支援法上の恒久制度とするとともに、被災地の実情を把握したうえで対象要件を撤廃するなど、制度の改善・拡充に向けて継続的な検討を行う。
また、被災者生活再建支援法の支援内容について、近年の自然災害の大規模化・広域化などに照らして適切なものとなっているか、5年を目途とするなど定期的な見直しの条項を追加する。
3.格差の是正、貧困のない社会に向けたセーフティネットの強化
(1)就学前教育から高等教育まで、すべての教育にかかる費用の無償化を行い、社会全体で子どもたちの学びを支える。特に、高等教育の漸進的無償化に向けて、少子化対策の集中取組期間とされる今後3年の間(2024年~2026年)に、以下の3点について改善をはかる。
- ① すべての学生を対象に、大学、短大、高等専門学校(4年・5年)、専門学校の授業料を現在の半額にすること。
- ② 大学等修学支援制度の対象を多子世帯や理工農系に限定することなく年収600万円まで拡大するとともに、授業料減免額も拡大すること。
- ③ 奨学金返済に係る負担の軽減に向けて、貸与型を有利子から無利子へ、所得に応じた無理のない返済制度や返済困難な場合の救済制度を拡充すること。
(2)生活困窮者自立支援法の改正を踏まえて、居住支援の強化や他施策との連携を着実に進めるとともに、就労準備支援事業や家計改善支援事業の速やかな完全実施の達成など残された課題への対応をはかる。また、制度を持続可能なものとするため、制度を担う相談支援員の処遇改善や委託期間を5年以上とするなど委託契約のあり方を見直し、支援の質の向上や事業基盤の安定をはかる。
(3)この間の物価高騰の影響を適切に評価し、2025年度の予算編成過程における保護基準の再検討待たず早急に引き上げを行う。
また、下位10%の低所得者層の消費水準と生活保護基準を比較する方法を改め、新たな検証方法を確立し、健康で文化的な生活水準を確実に確保できる基準を確保する。
(4)フードバンクを食品ロスの削減のみならず福祉分野と災害時の食糧支援システムとして積極的に位置づけ、省庁横断的な施策を推進する。また、フードバンクが継続的・安定的に発展できるよう、フードバンク団体の基盤強化(活動に必要な人件費への補助、事務所・倉庫・配送用車両等のインフラ整備への助成、人材育成など)への国や自治体の支援策を拡充し、2024年度末に閣議決定される予定の「食品ロス削減推進基本方針」の見直しに反映する。
(5)住居確保給付金の制度改善・拡充をはかるとともに、住宅セーフティネットや社会保障施策の全般的な枠組みの中で見直し再編し、公的な住宅手当制度(普遍的な家賃補助制度)として再編・拡充する。
また、住宅施策と福祉施策が連携した住宅セーフティネットや居住支援体制の強化をはかるとともに、公営住宅をはじめとする公的賃貸住宅政策の充実や家賃低廉化をはかる。
4.公正な労働条件の確保
(1)最低賃金は、生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準への引上げと地域間格差の是正に向け、中期的に最低賃金の国際標準を踏まえた水準である一般労働者の賃金中央値の6割水準をめざし、早期の実現に向けた一層の引き上げと環境整備をはかる。あわせて、監督体制の強化などを通じ、履行確保を徹底する。
(2)公的機関が民間企業などへ委託・発注するすべての事業において、適正な労働条件とサービスの質を確保するため、低価格入札に拘束された発注、不当な人件費や人員の削減、不安定雇用、下請け業者へのしわ寄せを排除する公契約基本法や条例を制定する。
(3)ILOの「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶」に関する条約の批准に向け、ハラスメント対策関連法を改正し、ハラスメントそのものを禁止する規定を創設する。あわせて、性的指向・性自認に関する差別・偏見をなくし、すべての人の対等・平等、人権の尊重のために、性的指向・性自認(SOGI)に関する差別を禁止する法律を制定する。
5.勤労者の福祉格差の是正、生活設計・保障への支援
(1)改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が努力義務となったことを受け、非課税財形(年金・住宅)契約時の年齢制限(55歳未満)を引き上げる。
(2)現行の生命保険料控除制度(一般生命保険料控除)を、国民生活の安定に資するため、また、国民の自助・自立のための環境を整備する観点から、制度を拡充すること(23歳未満の扶養親族を有する場合は、所得税法上の一般生命保険料控除の限度額を6万円とする)。
(3)中小企業勤労者の福利厚生の促進に向けて、働き方改革、構造的な人手不足状況等を踏まえ、改めて昭和63年通達の見直しを行い、国・自治体・事業主の役割・責務等を明確にした法整備を行うとともに、従業員の福利厚生に積極的な取り組みを行う事業主や、多様な働き方をする労働者等が福利厚生制度を利用できる様、財政面を支援する補助金ないし助成金を設ける。
6.安心・信頼できる社会保障の構築
(1)こども基本法の理念にもとづき、保護者が安心して生み育てられる条件整備や、子どもが健やかに育つための環境整備をはかる。また、子育ては当事者・家族に委ねるのではなく社会全体で支えることについて合意形成をはかり、十分な財源を確保する。
(2)医療従事者の確保と育成、処遇改善の方法を適宜見直す。国の政策として必要な診療科の専門医育成をすすめる。また医師と診療科の地域偏在是正へのさらなる取り組み、人材紹介業者に依存しない医療従事者確保を国や都道府県主体ですすめる。
(3)マイナンバーカードの取得は本人の選択に基づくという原則を遵守する。また、マイナ保険証への移行にあたっては、国民の不安を払拭するために国民・患者目線での丁寧な周知とともに、マイナ保険証の利用が安心して質の高い医療につながる体制を構築する。
(4)将来にわたり誰もが住み慣れた地域で質の高い介護保険サービスを受けられるよう、介護人材の確保・定着に向けて、継続的な賃金・労働条件の改善やハラスメント対策の強化など、やりがいや誇りを持って働くことがきる職場づくりをすすめるとともに、介護職の魅力発信や周知等を強化する。また、ヤングケアラーを含めた介護にかかる現状をふまえ、若年層など当事者だけの問題とせず地域や社会全体で介護を支えるよう啓発・情報提供・相談支援などをすすめる。
なお、今回の介護報酬改定において訪問系サービスの基本報酬が切り下げられたことから、地域医療介護総合確保基金や各種交付金・助成金等を活用しながら、施策の拡充をはかる。
2024年度 中央労福協の政策集
1.SDGs(持続可能な開発目標)の達成と協同組合の促進・支援
(1)政府におけるSDGs推進
- ① SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、協同組合や労働組合、労働者福祉に関わる団体などが連携し、地域における貧困・格差・福祉・教育・環境・自然災害などの社会的課題の解決に取り組み持続可能な社会づくりに向けて役割を発揮するために、政府による支援を強化する。
- ② 政府のSDGs実施方針の優先課題の一つである「生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」の推進をはかるため、化石燃料に依存したエネルギー政策の抜本的な見直しと、「地域循環共生圏」の早期構築に向け、住民一人ひとりの主体性をもとに、これまで協同組合が培ってきた活動を活かし、国、地方が一体となり持続可能な地域づくりを推進する。
- ③ 労働者協同組合法の目的に掲げられている「多様な就労機会の創出」と「持続可能で活力ある地域社会の実現」に向けて、各省庁の地域づくりの政策に労働者協同組合を位置づけるとともに、設立の促進に向けた予算措置の拡充を講じる。
2024年度より新たに実施される厚生労働省の「労働者協同組合促進モデル事業」(3ヵ年・新規)の着実な実行と、さらなる充実(モデル地域の拡充など)をはかる。 - ④ 政府が行うSDGs実施関連施策においては、本来SDGsの中で最も重要な目標の一つである「貧困の根絶・格差の是正」を重要項目として位置付け、貧困の削減目標を設定し、着実に取り組む。
- ⑤ 2023年12月に改定されたSDGs実施指針においては、協同組合をはじめとした公共的な活動を担う民間主体による地域の課題解決に向けた取り組みへの期待が明確に記載されている。
この点をふまえ協同組合をはじめ地域の各ステークホルダーが、よりスピーディーかつ積極的に取り組めるよう、行政との連携強化や支援の強化をはかるよう求める。
また、SDGsの達成に向けて「市民社会・消費者」がより参画していけるよう、啓発・広報を工夫し、実施体制・ステークホルダー間の連携強化に向けた施策を強化することを求める。
あわせて、地球規模の主要課題である気候危機の回避に向け、再生可能エネルギーの導入拡大を求める。
これらの前提として、平和の持続と持続可能な開発の一体的推進、および包摂社会の実現に向けた人権課題への取り組みについて、社会全体で推進するよう一層強化することを求める。 - ⑥ 政府はSDGsで掲げられている「全ての人の人権が尊重される、誰一人取り残さない社会」のために、外国人・外国にルーツを持つ人々が地域の中で安心して暮らせるよう、人権・労働基本権の保障、交通インフラの整備、保健医療サービスへのアクセスの保障、教育の機会均等など多文化共生社会への転換をはかる。
(2)政府による協同組合支援の強化
- ① 国連は2023年11月、2025年を「国際協同組合年」とすることを宣言した。この中で国連は、協同組合の取り組みをさらに広げ進めるため、また、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けた協同組合の実践、社会や経済の発展への協同組合の貢献に対する認知を高めるために、国連、各国政府、協同組合が、この機会を活用することを求めている。
日本政府においても、2023年12月に改定された「持続可能な開発目標(SDGs)実施指針」の中で協同組合は「公共的な活動を担う民間主体」の一つとして位置づけられている。このことも踏まえ、政府による協同組合支援を強化すること、そのためにも協同組合との積極的な対話を進めることを求める。 - ② 人口急減地域特定地域づくり推進法や労働者協同組合法の成立など、持続可能な社会づくりに向けた協同組合の役割発揮への期待は、コロナ禍で「人と人とのつながり」のかたちが大きく変容する中においても引き続き高く、政府による協同組合の支援についてより一層強化する。
- ③ 協同組合憲章を定める等、協同組合全体を貫く協同組合政策の基本的な考え方と方針をよりいっそう明確にする。
- ④ 2012国際協同組合年の取り組みを踏まえて、「自主・自立」、「民主的運営」を基本に組合員の出資・運営参加により事業を実施する協同組合が社会の中で認知され、持続的に役割を発揮できるよう政府による支援を継続的に行う(政府広報、統一的な統計調査、学校教育における協同組合に関する授業の強化など)。そのため、政府において、協同組合政策に関する調整窓口を設置する。
(3)協同組合の独自性や社会的役割を考慮した税制の適用
非営利の相互扶助組織としての協同組合の社会的・公共的な役割と持続可能な経営基盤の確立の重要性に鑑み、協同組合に配慮した税制を継続する。
(4)生協法の改正
少子高齢化の進展、格差拡大、自然災害の増加など社会の変化に伴う地域の課題に取り組み、持続可能な社会づくりを進める上で、行政や諸団体、市民から生協への役割発揮の期待が高まる中、そうした期待に幅広くこたえることを可能とする法制度面の改善を求める。
(5)持続可能な地域づくりに向けた非営利・協同組織と自治体・行政との協働関係の充実
持続可能な地域づくりのために、自治体・行政と非営利・協同組織との関係を、単なるコスト削減や下請け型の業務委託ではなく、目的や基準(公正労働基準)を明確にした上での対等なパートナーシップにもとづく協働の関係へと再編成する。そのため、地域福祉の向上と住民自治の促進をはかる目的で、指定管理者制度などの公共サービスを支え充実させるための制度・政策を総合的に見直し、充実させる。
特に、指定管理者制度においては①フルコスト・リカバリーの考え方をもとに一般管理費を含む間接経費全体を人たるに値する人件費(公正労働基準)を見込んだ積算とする、②一定額の利益、繰越金(あるいは積立金)を認めて「精算」項目を廃止する、③指定管理料の適正化、④印紙税や消費税の非課税扱いの徹底、⑤会計処理と監査の改善、⑥制度の趣旨に相応しい科目の創設、以上をはかる。また、公共施設の公募・選定にあたっては、①住民参加の評価と②選定基準の明確化と結果(理由)の公開、③「持続可能な地域づくりに資する業務運営」などの基準(項目)を設ける。
2.大規模災害等の被災者支援と復興・再生および防災・減災対策の強化
(1)大規模災害等の被災者への生活支援
- ① 能登半島地震の際に、被災者生活再建支援法上の支援金に加え、珠洲市・輪島市など特定の市町村における高齢者・障がい者のいる世帯などを対象に追加支援が行われた。この支援内容を被災者生活再建支援法上の恒久制度とするとともに、被災地の実情を把握したうえで対象要件を撤廃するなど、制度の改善・拡充に向けて継続的な検討を行う。
また、被災者生活再建支援法の支援内容について、近年の自然災害の大規模化・広域化などに照らして適切なものとなっているか、5年を目途とするなど定期的な見直しの条項を追加する。 - ② 子ども・被災者支援法にもとづく「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針」に関する各種施策など、原発事故被害者も含む被災者への支援を確実に実施する。
- ③ 原発のALPS処理水の海洋放出については、国際基準を満たす科学的根拠は示されたものの、漁業関係者をはじめ心理的不安は未だ解消されていない。引き続き、地域住民や漁業関係者などへの丁寧な説明と理解醸成に努め、危惧される風評被害等による影響などが生ずることのないよう、つぶさな状況把握と情報発信をはかる。
- ④ 二重ローン等の住宅等の既存債務問題について、政府方針を受けたガイドラインによる運用も進められているが、被災者の生活再建を柔軟に支援する観点から、国による一層の施策の周知広報をはかる。
- ⑤ 近年、復興住宅での高齢者の孤独死が増えていることから、入居者の孤立化防止の観点から、相談員による見守り・相談などの寄り添い支援を充実させるためにも、既存コミュニティや自治会、社会福祉協議会やNPO等の支援団体との連携強化をはかり、引きこもり防止に向けた対応を進める。
(2)住民主体による復興・再生の取り組みの制度化
- ① 被災地・被災者の「生活」の確保・安定に最大限の努力を費やすとともに、地震など自然災害からの復興・再生を住民主体による取り組みと位置づけ、被災地・被災者自身の自主的・自発的な復興・再生の取り組みを支援する制度の創設を検討する。
- ② 復興・再生を従来型の行政主導・行政本位にせず、市民・地域の力を集めた取り組みにするための、組織的・政策的な位置づけを国の方針として明確化する。具体的には、地域の民間組織や非営利組織等も交えた復興・再生のためのネットワーク組織の結成を促進し、官民一体となった取り組みを活発化させ、これを国として支援する。
- ③ 被災地・被災者の仕事の確保・創出について、地域の産業創出や従事する就労分野の変更を制度的に支える研修・訓練制度と、公的に就労を保障する制度を組み合わせた、「公的訓練・就労事業制度」(仮称)を新たに創設する。
- ④ 政策・方針など意思決定の場に女性の参画を拡大すること。特に防災・復興に関する方針決定、現場対応について早急に女性参画を進めること。
(3)平時における防災・減災の対策
- ① 災害からのくらし全般の復興支援に向けて、地方自治体が平時から行政・社協・NPO等民間との多様な連携を促進し、非常時に備えた財源づくりを検討するよう、国は助言や支援を行う。
- ② 将来起こりうる大規模災害に備え、燃料確保や物流網の維持確保等の課題に消費者ニーズを反映するため、政府の各種審議会等に、消費者団体等の意見を反映させる。
- ③ 災害時の災害対応拠点となる自治体庁舎・公共施設・医療施設等の耐震化を徹底する。
- ④ 災害時に手助けが必要な高齢者や障がい者、外国人などの迅速な避難が優先されるよう、改正災害対策基本法(2021年5月20日施行)にもとづく「避難情報に関するガイドライン」の実効性を高めるよう、自治体への取り組みを促進し、通信手段の確保や情報提供のあり方など情報発信に関する総合的な取り組みを強化する。
- ⑤ 学校教育における防災教育や避難訓練の充実をはかり、避難対策等を徹底する。
- ⑥ 国は地方自治体に対して、避難者間で感染症などの疾病が蔓延しないよう、大規模災害時の避難や避難所における感染症対策の備えを徹底させ、地域住民への周知・広報を徹底させる。
3.格差の是正、貧困のない社会に向けたセーフティネットの強化
(1)教育の機会均等 ~奨学金制度等の拡充・改善と教育費の負担軽減~
- ① 幼児教育、初等教育、中等教育、高等教育等すべての子どもに保障し、教育費の無償化を漸進的にめざす。
給付型奨学金制度の創設を契機として、有利子から無利子へ、貸与から給付への流れを加速し、既存の返済者の負担軽減や救済制度の拡充、学費を含む教育費負担の軽減につなげる。 - ② 高等教育費の漸進的無償化へ向けた対応として以下の改善を行う
- a)教育の機会均等の確保、将来を担う人材の育成、親・保護者の経済的負担の軽減をはかるなどの観点から、政府は教育における公財政支出をOECD平均まで引き上げる。
- b)「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」における「高等教育の漸進的無償化」の実現に向け、将来的には授業料無償化の対象者を段階的に広げていくことを展望してロードマップの検討・策定を行う。
- c)「高等教育の漸進的無償化」に向けて、大学・短大・専門学校の授業料を現在の半額へ引き下げることを目標としつつ、大学の授業料の引き上げに歯止めをかけ、高騰した大学等の授業料等の引き下げを可能にする環境を整えるため、国立大学法人運営費交付金や私学助成を拡充する。
- ③ 「大学等における修学の支援に関する法律」の施行後4年の見直しに伴う制度改正にあたり以下の対応を行う。
- a)支援対象の上限を、多子世帯や理工農系に関わらず標準世帯(4人世帯)年収600万円まで引き上げ、中間所得層まで支援を拡大する。
- b)高校等卒業後2年以内に入学とする期間要件は撤廃し、支援対象を18歳以上の全ての年齢とする。
- c)制度の利用状況について詳細なデータを公表するとともに、施行後のニーズの充足状況の調査や運用に伴う問題点の実態把握、検証を行う。
- d)家計が急変した学生等を修学支援制度により多くつなげるため、制度の周知広報を徹底するとともに、必要十分な予算を確保する。
- e) 大学等の機関要件は、学生の選択肢を狭め、大学の自治や学問の自由への不当な介入とならないよう、見直す。
- f) 学生等に対する支援の継続を判断するにあたり、相対評価による学業成績が下位4分の1に属することを理由とする支援打切りは行わない。
- ④ 大学院生(大学院修士課程・博士課程学生)に対しても給付型奨学金を導入する。
- ⑤ 授業料後払い制度への対応
授業料後払い制度の実施にあたり、以下の対応を行う。- a)大学等への制度の拡大を検討する場合は、現行の奨学金制度との関係や、大学等修学支援制度、将来的な高等教育無償化への影響など様々な観点からの検討が必要なことから、幅広い国民各層の参加のもとでのオープンな議論を進めていく。
- b)返済が困難になった場合の十分な救済策や一定時点での返還免除を織り込んだ制度設計とする。
- c)卒業後、年収ゼロでも月額2,000円の返還を行うとする制度設計を見直す。
- d)今後の方向性として高等教育の漸進的無償化(公費負担の増加による授業料・学費の引き下げ、授業料減免の対象者拡大、給付型奨学金の拡充など)を進めていくことを明確にする。
- ⑥ 貸与奨学金は全面的に無利子とするため、独立行政法人日本学生支援機構法を改正し、一般財源化する。少なくとも、無利子が有利子を上回るよう、貸与基準を緩和し、無利子奨学金を大幅に拡充する。
- ⑦ 返還期限猶予制度について以下の改善を行う。
- a)延滞があることによって猶予制度の利用を制限しない。
- b)返還猶予期限(通算10年)をさらに延長(10年→15年)するなど、返済困難者への緊急の救済措置を講ずる。将来的には、返済開始から一定期間経過もしくは一定年齢に達した後は残額を免除する制度の導入を検討する。
- c)所得基準(年収300万円以下、給与所得者以外は年間所得200万円以下)を大幅に緩和する。
- ⑧ 貸与型奨学金の減額返還制度について、対象者の拡大や、ライフイベントに応じて柔軟に返還できる制度への改善を早急に行う。
- ⑨ 延滞金は廃止する。廃止までの間、延滞金賦課率(現行3%)の引き下げを行うとともに、以前の賦課率(2014年3月までの10%、2014年4月~2020年3月までの5%)も引き下げる。また、元本返済が後回しとなる現行の充当順位は「延滞金→利息→元本」から「元本→利息→延滞金」に変更する。支払い能力がないにもかかわらず繰り上げ一括返済を求める運用は直ちに是正する。延滞者には救済支援を優先し、安易な信用情報機関への登録は行わない。
- ⑩ 所得連動返還型奨学金制度については、年収ゼロや非課税世帯であっても月額2,000円を返還させることの見直しなど、返済困難者の実情を踏まえて改善を行うとともに有利子奨学金や既返済者への適用を拡大する。また、返済を開始する最低年収は少なくとも300万円以上に設定し、閾値を超えるまでは猶予を申請せずとも返済を求められないようにする。少なくとも返済者が年収300万円以下の場合は、奨学金申請時の家計支持者の年収いかんにかかわらず、返還猶予の申請可能年数は無期限とする。
- ⑪ 貸与型奨学金における人的保証については、奨学生や保証人の負担が大きいことを踏まえ、当面は機関保証を中心とした制度への移行を進めつつ、保証のあり方についても抜本的な検討を行う。機関保証についても、保証料を引き下げるなど負担軽減策を講じるとともに、返済困難者に寄り添った救済を行う観点から制度や運用を改善する。
また、自宅不動産等の生活手段からの回収を行わないなど、保証人に対して無理な返済を求めないよう適切なガイドラインを作成し、実行する。 - ⑫ 奨学金返済者全体の負担軽減をはかる観点から、奨学金返済金への税制支援(所得控除または税額控除など)を導入する。
- ⑬ 親・保護者の学費等の負担軽減をはかるため、政策減税を講じる。
- ⑭ 入学金・授業料等の入学時一括支払いを求められて対応に困難をきたすことのないよう、入学時の費用についての支援を強化する。
- ⑮ 政府および日本学生支援機構は、奨学金を借りる際の丁寧な制度説明、および返済が困難になった場合の相談方法等の周知徹底に努める。また、スカラシップ・アドバイザー事業については、これまでの実施状況や受講した生徒や親・保護者、教員等の声を踏まえて検証・改善を行うとともに、相談に応じられる体制を構築する。
- ⑯ 大学等修学支援制度の見直し、授業料後払い制度の導入により、日本学生支援機構の業務量や相談の増加が見込まれることから、それに見合った十分な相談体制の拡充、人員や体制の整備をはかる。また、申請書の簡素化をすすめ、申請者および学校の事務負担の軽減を行う。
- ⑰ 文部科学省の奨学金に関わる検討の場や学生支援機構の運営(運営評議会など)への奨学金利用者・保護者や勤労者代表の参画・意見反映を進める。
- ⑱ 返還期限猶予制度等の救済措置の周知を徹底する。学生支援機構の裁量による恣意的な利用制限が行われないよう、法制度や運用の見直しを行う。
- ⑲ 社会人が学び直しのできるリカレント教育の促進や生涯学習推進のための施策の拡充や環境整備を行う。とりわけ、国公立の職業訓練校の拡充など、高校卒業生や社会人を対象とする職業教育の拡充をはかる。
- ⑳ 大学等における貸与型奨学金の在学採用を通年化する。
- ㉑ 初等・中等教育の無償化を以下のように拡充する。
- a)学習に必要な教材等の無償化。
- b)義務教育における学校給食の無償化。
- c)高校授業料の無償化にあたり設定されている年収要件を撤廃。
(2)地域共生社会の実現に向けて
重層的支援体制整備事業の推進にあたっては、補助金の一括交付の対象となる生活困窮、高齢、障がい、子どもの各分野についての予算を全体的に拡充する。また、制度・分野の縦割りを超えた伴走型支援、社会参加、地域づくりという本来の趣旨が生かせるよう、関連施策との一層の連携をはかる。
(3)生活困窮者自立支援制度の拡充・体制整備
- ① 全国どこでも必要な支援が受けられるよう、就労準備支援事業、家計改善支援事業については未実施自治体に対する国の懇切丁寧な支援や広域連携等の環境整備に努め、速やかにすべての福祉事務所設置自治体での完全実施を達成し、次期法改正においておいて必須事業化する。
- ② 子どもの学習支援・生活支援事業については、自治体の実施率を高めるとともに、支援ニーズを持つ子どもや若者に支援が届くよう、子ども食堂など居場所の提供者や教育関係者などとの連携、アウトリーチの強化をはかる。
- ③ 努力義務化された居住支援事業については、対象者をホームレスから居住支援を必要とするすべての人に広げることで実施率を高め、次期法改正において必須事業化する。また、居住支援事業において公営住宅やセーフティネット住宅、空き家の活用を進めるとともに、居住支援法人等との連携を強化する。
- ④ 住居確保給付金の制度改善・拡充をはかるとともに、住宅セーフティネットや社会保障施策の全般的な枠組みの中で見直し、公的な住宅手当制度(普遍的な家賃補助制度)として再編・拡充する。
- a)住居確保給付金の支給期間(最大9ヵ月)や再支給の条件を拡大し、支援が必要な時にはいつでも再申請できる制度とする。
- b)「離職・廃業後2年以内」という離職要件や求職活動要件を撤廃し、求職政策とは切り離して居住水準保障を目的とした制度に再編する。
- c)収入要件を公営住宅並みの入居水準に緩和するとともに、支給額については引き上げを行う。
- ⑤ 相談員・支援員の雇用の安定と処遇の改善等をはかる。
- a)寄り添い型の支援が十分におこなえるよう、地域の特性に配慮しつつ、人口規模等に応じて必要な人的体制の整備をはかる。また、自立相談支援と他の業務との兼務体制をとっている自治体も多いことから、専門的知識をもった専任職員の配置を促進し、各自立相談支援機関に少なくとも1名以上の専任・常勤の主任相談支援員を配置できる予算を国庫により保障する。
- b)相談支援員が一生の仕事として誇りをもって安心して働けるよう、雇用の安定、賃金水準の大幅な引き上げ等の処遇改善、定着促進をはかる。そのために、国の責任において、相談支援員の賃金や業務の内容をしっかりと把握・実態調査した上で、良質な人材の確保や処遇改善に応じた補助の加算、就労契約形態の全国基準化や適切な賃金水準の目安を示すなど、自治体への指導強化や財政支援を行う。
- c)相談支援にあたる人材の専門的資質を高め、社会福祉士など適切な資格をもつ人を配置することが望まれることから、相談支援員に対して研修の充実、資格取得へのサポート、専門性にみあった報酬水準への引き上げをはかる。
- d)事業の委託契約にあたっては、事業の安定的運営やサービスの質の向上、利用者との信頼関係に立った継続的な支援、人材の確保やノウハウの継承をはかる観点から、価格競争や単年度実績で評価するのではなく、委託期間は最低5年以上とし支援の質や実績を総合的に判断するよう、ガイドラインの策定をはじめ厚生労働省と総務省が共同で自治体関係者に通達等を発出し周知徹底するなど実効的な措置を講ずる。
- e)委託事業者の管理部門に要する経費が持ち出しとならないよう、生活困窮者自立支援事業の委託費の対象経費の見直しや一般管理費の設定を行う。
- ⑥ 生活保護制度と生活困窮者自立支援制度との密接な連携のもと、それぞれの特色を活かした上で重なり合い、一体的で切れ目ない支援を行う。今次法改正で生活困窮者向けの就労準備支援・家計改善支援・居住支援を行う事業に生活保護利用者が参加することが可能となるが、その場合でも保護のケースワーカーが継続的に関与することや、現場の業務負担の増加により支援の質の低下を招かないよう両実施機関の適切な人員配置を確保する。
- ⑦ 支援会議の設置の努力義務化にあたっては、他の法定会議や支援調整会議も含めて現場に負荷をかけないよう留意し、機能的・効率的な運用ができるよう工夫を促し、好事例を横展開する。
- ⑧ 支援をより効果的に行うため、就労支援期間中の生活支援給付や所持金のない相談者への緊急支援のための小口貸付・小口給付の制度化を検討する。
- ⑨ 2024年度予算に盛り込まれた就労準備支援事業における就労体験先への交通費支給について国の補助を拡充し実効的なものとする。さらに、生活困窮者自立支援制度における補助対象として、就労体験時の昼食代、子どもの学習・生活支援事業における食材費などへ広げる。
- ⑩ 就労準備支援事業や就労訓練事業などを地域で支える受け皿となる企業・団体へのインセンティブ(優先発注の促進、特定求職者雇用開発助成金の活用など助成の拡充に向けた制度改善)を確保するための施策の実効化・拡充をはかる。
- ⑪ 2025年度の予算編成にあたっては、生活保護費等の削減によることなく、生活困窮者自立支援制度をさらに強化していくための十分な予算を確保する。
- ⑫ 子ども食堂など地域の自発的で多様な多世代交流活動・居場所づくが広がるよう行政としても環境整備に努めるとともに、そうした場を通じて様々な課題を抱えた方々が必要な支援につながるよう、アウトリーチ機能の強化や補助事業の拡充を行う。
- ⑬ 引きこもりを対象とした貧困ビジネス「引き出し屋」による被害の実態調査を行い、消費者への注意喚起、相談体制の整備、悪質な業者の摘発等を行うとともに、被害発生防止のための法規制や被害回復のための民事ルールの整備等を検討する。あわせて、支援を必要とする人が適切な公的支援につながるよう、生活困窮者自立支援事業や引きこもり支援センター等の周知やアウトリーチを強化する。
- ⑭ 「生活困窮者自立支援制度」等社会的困難にある人々に対する自立・就労支援における社会的事業者の活用と雇用・就労創出策の充実
- a)生活困窮者自立支援制度」等で実施される「就労準備支援事業」「就労訓練事業(中間的就労)」等において、「社会的企業」や労働者協同組合を積極的に位置づけ活用し、地域における雇用・就労創出や社会的居場所の推進と連動させる政策を推進する。特に「就労訓練事業」においては、事業所認定の推進をはかるとともに、地方自治体による優先発注など公共調達の充実をはかるために特段の支援策を講じる。
- b)就労困難な若者や女性、高齢者、障がい者など社会的困難にある人々を対象に、地域における就労創出による社会参加と居場所づくりを目的に、労働者協同組合づくりを含めた社会的訓練などの公的職業訓練と公的に就労を保障する制度を組み合わせた「公的訓練・就労事業制度」(仮称)を新たに創設する。
- c)こども基本法・こども大綱において「悩みや不安を抱える若者や家族に対する相談体制の充実」が掲げられており、その推進のため、困難な状態にある若者の相談や就労を支えるような居場所機能の充実をはかること。また、「求職者支援訓練」においても、「生活困窮者自立支援制度」や「就職氷河期世代活躍支援プラン」との積極的な連携をはかるとともに、制度の抜本的見直し(※1)を行い、公的職業訓練の一層の充実と制度の弾力的運用(※2)、訓練メニューの創造的開発などをはかる。
※1 ①求職を一律の目的としない、仕事おこしや分野別の縦割りを超えたカリキュラムの設計と弾力的運用、②就労に困難を抱える若者や高齢者、障がい者などに受講の枠を広げるためにも雇用保険財源から一般財源への移行等{}
※2 公共的社会サービスを担う地域の非営利組織、協同組合、中小企業等のコミュニティ事業者が実施主体となることが可能となる等
(4)人間の尊厳が保障され、利用しやすい生活保護制度への改善
- ① この間の物価高騰の影響を適切に評価し、2025年度の予算編成過程における保護基準の再検討を待たず早急に引き上げを行う。また、下位10%の低所得者層の消費水準と生活保護基準を比較する方法を改め、新たな検証方法を確立し、健康で文化的な生活水準を確実に確保できる基準を確保する。
- ② 全国各地で行われている生活保護基準引下げの取消等を求める裁判について、厚生労働大臣の裁量権の逸脱・濫用があったとして、原告側勝訴が相次いでいることを真摯に受け止め、健康で文化的な生活水準を確実に確保できる基準へ向け、早急に対応を行う。
- ③ 生活保護基準の決定のあり方について、厚生労働大臣の告示のみで決定できる現行の仕組みを見直し、生活保護基準部会への諮問、答申の尊重義務や当事者の参画をはかるなどの改善を行う。
- ④ 社会保障の脆弱さが生活保護制度に過度に負荷をかけている制度全般のあり方を見直すとともに、人としての尊厳や生存権を保障する観点から生活保護法を見直し「生活保障法」への改正を検討する。
- ⑤ 生活保護世帯の子どもが大学等に進学した場合、本人の健康保険料を免除するなどの負担軽減を行う。
- ⑥ 生活保護受給者の医療機関受診に際しての窓口負担については、最低生活費を割り込む恐れや受診抑制が懸念されることから、償還払いの試行・導入は行わない。また、生活保護利用者以外の生活困窮者に対しても、医療アクセスを保障する観点から医療扶助を適用する。
- ⑦ 生活保護制度の申請は国民の権利であることを広く市民に知らせ、申請書やパンフレットを福祉事務所や行政の各相談窓口に設置する。また、申請書等をウェブに掲載しオンライン申請に対応するなど運用の緩和を行う。
- ⑧ 生活保護法の運用にあたっては、生活資金が逼迫している場合は速やかに保護を開始するとともに、生活保護の申請抑制や扶養義務の強化を招くことがないよう、現場に徹底する。
- ⑨ 生活保護の利用にあたって行われる扶養照会については、扶養照会を拒否する要保護者の意向を尊重した対応を徹底するよう、国は地方自治体に指導する。また、要保護者が生活保護の利用をためらう一因となっていることに鑑み、扶養照会を撤廃する。
- ⑩ 住居のない要保護者について、無料低額宿泊所等の集団処遇施設に入居することを条件とする運用を改め、居宅保護を原則するとともに、居宅保護までの一時生活支援においても個室提供を原則とする。
- ⑪ 申請等に関する苦情や相談、不服申し立て(審査請求)を受付け、調査権と行政への勧告権を持つ「第三者機関」を設置する。
- ⑫ 生活保護行政の公的責任や業務拡大・高度化等を踏まえ、地方交付税の福祉事務所費の大幅な改善をはかり、正規公務員によるケースワーカーを増員するとともに、職員の専門性を高める。また、ケースワーク業務の外部委託は、申請・受給抑制を生じ、生活保護行政の劣化を招く恐れがあることから行わない。
- ⑬ 資産を使い果たさなければ保護しないために自立をかえって困難にしているという観点から、最低生活費3ヵ月分程度までの現金・預貯金は認めるなど資産要件を緩和する。
- ⑭ 生活保護の準用を認める外国人の在留資格について、要件緩和を行う。
(5)子どもの貧困・虐待対策の強化
- ① 2023年4月1日のこども家庭庁の創設、こども基本法の制定、その後2023年度末に制定された「こども大綱」をふまえ、当事者である子どもの視点を大切にし、「将来」だけでなく、「現在」の生活の支援、経済的支援、教育支援に取り組む基本姿勢をいっそう明確化し、以下の観点から根本的な貧困対策を推進する。また、コロナ禍が長期化する中で、子どもを取り巻く環境はさらに深刻化(貧困の深刻化、いじめの拡大、虐待の増加、子どもの自殺など)している。2023年度創設された「こども家庭庁」と関係省庁が緊密な連携をはかり、包括的な支援策を迅速に進める。
- a)市町村活動計画の努力義務化を受けて、具体的な対策実施の徹底
- b)多様な貧困指標と改善目標の設定
- c)教育無償化の中間層への拡大
- d)奨学金制度の改善
- e)生活保護世帯の大学進学支援措置の拡充
- f)乳幼児期への支援強化
- g)保護者の就労支援における、所得の増大他、職業生活の安定向上支援策の実施
- ② 子どもの貧困は親・保護者の貧困に起因しており、特にひとり親世帯の約半数の子どもたちが貧困状態にあることから、ひとり親世帯に対して、公的手当や税額控除の拡大など、総合的な対策を実施する。その場合は、離死別・未婚を問わないものとする。
- ③ 児童手当や児童扶養手当など公的手当の支給は、低所得世帯の収入の安定のため、毎月の支給とする。
- ④ 相次ぐ児童の虐待死、児童虐待の増加という現状を踏まえ、児童相談所の体制強化や地方自治体における実態把握、関係機関の連携強化などをはかる。
(6)フードバンク活動の促進
- ① フードバンクを食品ロスの削減のみならず福祉分野と災害時の食糧支援システムとして積極的に位置づけ、省庁横断的な施策を推進する。生活困窮者支援に関わる行政や様々な民間団体を通じたフードバンク食品の提供や、パントリー設備の整備、食品ロス削減を通じた環境負荷の低減など、福祉・環境政策とも連携した施策を推進する。
- ② フードバンクが継続的・安定的に発展できるよう、フードバンク団体の基盤強化(活動に必要な人件費への補助、事務所・倉庫・配送用車両等のインフラ整備への助成、人材育成など)への国や自治体の支援策を拡充し、2024年度末に閣議決定される予定の「食品ロス削減推進基本方針」の見直しに反映する。
- a)地方公共団体が策定する食品ロス削減推進計画において、地方自治体がフードバンク活動の支援策を盛り込むよう、国からも必要な助言や支援を行う。
- b)フードバンク活動やフードロス削減、地方創生に対する国および自治体の補助金、交付金については、フードバンク団体の基盤強化に柔軟に活用できるようするとともに、さらなる拡充と継続的な支援を行う。
- c)物価高騰等に対応し、政府備蓄米のさらなる提供や余剰農産物の活用などにより、フードバンクを通じた国民への食の支援を積極的に行う。
- ③ フードバンクへの食品提供を促進するため、寄附された食品の管理に関するガイドラインを作成し寄贈食品への社会的信頼を高めていくとともに、食品寄附に伴って生じる民事責任のあり方を検討し必要な法整備をはかる。
(7)自死・多重債務対策等
- ① 自殺総合対策大綱にもとづき、地方自治体や学校、地域の団体における実効性のある自殺対策に向けて、相談体制を拡充や、自殺予防教育の充実など、「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現」への十分な対策を講じる。
- ② 多重債務者対策本部が貸金業者による脱法行為を厳しく監視できるよう、都道府県・多重債務対策協議会における実態の検証・分析の強化と多重債務者対策本部との関係で有機的な連携をはかる。
- ③ 生活困窮者や多重債務者等の生活支援を目的とする生活再建支援事業(相談貸付事業等)を行う民間非営利組織が活用できる公的信用保証制度等のしくみを検討する。
- ④ 多重債務問題の誘発が懸念されるカジノ問題については、カジノ解禁の見直し・廃止について検討する。
- ⑤ 政府の多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会でも指摘されているとおり、総量規制の対象外である銀行カードローンに起因する過剰融資や、貸金業法等の適用を逃れSNS個人間融資・後払い現金化・先払い買取現金化等を行うヤミ金融などについて、多重債務防止の観点から啓発活動をはじめ法改正を含めた必要な対応をはかる。
- ⑥ 成人年齢の引き下げにより、18歳、19歳が 未成年者取消権を行使できなくなったことから、若者が過大な債務を負うことがないよう、学校・家庭等における金融教育の充実や情報発信の強化をはかるとともに、貸金業者に対し総量規制など貸金業法の諸規定を確実に遵守するよう指導を徹底する。
(8)住まいの安心、住宅セーフティネットの拡充
- ① 「居住の権利」を基本的人権と位置づけ、分立する住宅保障の仕組みを統合し、住宅政策(国土交通省)と生活困窮者支援政策(厚生労働省)、刑余者支援(法務省)との連携や一体的な運用をさらに強化する。将来的には「居住支援基本法(仮称)」などの理念法を制定し,省庁横断的な取り組みを促進する。
- ② 住宅セーフティネット制度の見直しと拡充
- a) 改正住宅セーフティネット法や改正生活困窮者自立支援法を踏まえて、住宅施策と福祉施策が連携した住宅セーフティネットや居住支援体制の強化をはかるとともに、公営住宅をはじめとする公的賃貸住宅政策の充実や家賃低廉化をはかる。
- b) セーフティネット住宅は目標を大幅に超える登録数にもかかわらず専用住宅や空室が極端に少なくほとんど利用できない状況にあることから、登録目的や基準等を見直す。
- c) 家賃及び家賃債務保証料の低廉化補助を拡充する。
- d) 居住支援協議会の設置・実動化や居住支援法人の活動推進のための補助事業を継続・拡充する。
- e) 居住支援法人等が見守りや生活支援を行う「居住サポート住宅」の認定制度の創設にあたっては、貧困ビジネスなどに悪用されることがないよう万全の措置を講ずるとともに、優良な事業者への公的支援を強化し質の高いサービスの提供を促進する。
- ③ 一定所得以下の賃貸住宅居住者に対して、支払い家賃額20%(上限は24万円)を各年分の所得税額から控除する「家賃比例税額控除制度」を創設する。
- ④ 生活困窮者を食い物にする「貧困ビジネス」(追い出し屋、脱法ハウスなど)を根絶するための規制を強化する。
- ⑤ 行政の保有する居住施設や公的住宅(公営・UR・公社)の空き室を活用し、住居喪失者に無償で提供するとともに、NPOや居住支援法人等と連携し、生活・就労支援を行う。また、「セーフティネット住宅」等、民間住宅の空き家・空き室を行政が借り上げて、住居喪失者に無償提供する。
- ⑥ 身寄りのない一人暮らしの高齢者等が増加していることから、公営住宅に入居を希望する際に保証人を求めている地方自治体に対して、保証人確保の規定を廃止するよう指導をさらに強化する。
- ⑦ 高齢者の居住用資産の有効活用により生活の安定・向上をはかるため、リバースモーゲージ制度の普及に向けた支援を講ずる。
4.消費者政策の充実強化
(1)地方消費者行政の充実・強化
「地方消費者行政強化交付金」の予算や消費者行政担当職員を確実に確保し、DX化も想定し、地方自治体と二人三脚で消費者行政の充実・強化をはかる。特に消費生活相談員の育成等の相談員確保・強化のための対策を重点課題とし、引き続き取り組む。なお、消費生活相談のDX化については、自治体との丁寧な情報共有・意見交換を行いながら進める。
(2)消費者団体の公益的活動に対する支援
消費者庁は、現に公益的な活動を行う適格消費者団体、特定適格消費者団体および各地に設立されている消費者団体に対し、その意義を社会的にも評価し、財政面・情報面の支援を行うこと。
また、2022年に改正された「消費者裁判手続き特例法(以下特例法という)」附則第7条では、法の趣旨および内容について国民への周知をはかるよう努めるものとされており、引き続き国民への制度の周知をはかる。
さらに、改正特例法に盛り込まれた「消費者団体訴訟等支援法人」について、支援法人が期待される役割を発揮できるよう、法人の認定等の準備を着実に行うなど、必要な支援を行う。
また、2022年に改正された「消費者裁判手続き特例法(以下特例法という)」附則第7条では、法の趣旨および内容について国民への周知をはかるよう努めるものとされており、引き続き国民への制度の周知をはかる。
さらに、改正特例法に盛り込まれた「消費者団体訴訟等支援法人」について、支援法人が期待される役割を発揮できるよう、法人の認定等の準備を着実に行うなど、必要な支援を行う。
(3)地域での消費者教育の推進に対する支援
消費者被害の未然防止に向けた取り組みを積極的に進めるため、成年年齢引下げに伴う若年者への消費者教育を行う教育機関や国民生活センターなどとの連携体制の構築、国の重点施策における好事例の情報提供、「消費者教育コーディネーター」の活用等、消費者教育の充実に取り組む。
(4)その他
- ① 物価の動向を引き続き監視するとともに、電気料金・都市ガス料金の自由化により、すでに自由料金であるLPガス・灯油・ガソリン価格を含めて家庭用エネルギー料金がすべて自由化された状況を踏まえ、消費者の権利を確保するための新たな政策を検討する。電気の小売規制料金の値上げは、電力会社から分かりやすい説明を行うとともに、適切な対応となるよう、消費者・需要家の意見を十分に聞きながら値上げ幅が適切なものとなるよう厳しく審査を行う。
- ② LPガス、石油製品(ガソリン・灯油)については、消費者のくらしに欠かせないものであることを踏まえ、公共料金に準じ、価格の決定過程の透明性、消費者参画の機会および価格の適正性など、様々な観点を踏まえた施策をおこなうこと。
とりわけLPガスについては、経済産業省の「液化石油ガスワーキンググループ」の報告をもとに、関係省庁が連携して実効ある措置をおこなうこと。 - ③ 一部の消費者による過剰な要求、暴言・暴力等の問題について、公共の利益および消費者・労働者双方の権利を守る観点から、消費者と事業者がともに尊重しあい良好かつ健全なコミュニケーションを促進するよう普及・啓発を進める。
- ④ 公正な取引を担保するため、サプライチェーン全体における労働環境への理解を促す消費者教育や、雇用・労働を含む人や社会・環境に配慮したエシカル消費を促進する。
5.ディーセントワークの実現
(1)働き方改革関連法の周知・徹底
- ① 働き方改革関連法の遵守に向けて、事業主に対して内容の周知・徹底をはかる。
- ② 「高度プロフェショナル制度」は、施行後の状況を検証し、対象労働者の働き方や健康確保、対象業務の運用などに問題がみられる場合は、廃止も含めて制度の見直しを行う。
- ③ パート・有期雇用労働者のあらゆる待遇差の処遇改善をはかるため、「同一労働同一賃金」の適用を徹底するよう指導する。
- ④ すべての労働者を対象に「休息時間(勤務間インターバル)(原則11時間)」の導入を促進する。
(2)最低賃金の引き上げ、公契約基本法等の制定
- ① 最低賃金は、生存権を確保した上で労働の対価としてふさわしいナショナルミニマム水準への引上げと地域間格差の是正に向け、中期的に最低賃金の国際標準を踏まえた水準である一般労働者の賃金中央値の6割水準をめざし、早期の実現に向けた一層の引き上げと環境整備をはかる。あわせて、監督体制の強化などを通じ、履行確保を徹底する。
- ② 公的機関が民間企業などへ委託・発注するすべての事業において、適正な労働条件とサービスの質を確保するため、低価格入札に拘束された発注、不当な人件費や人員の削減、不安定雇用、下請け業者へのしわ寄せを排除する公契約基本法や条例を制定する。
(3)障がい者雇用の促進
法定雇用率の引き上げを踏まえ障害者雇用率の達成に取り組むとともに、障がい者一人ひとりの特徴や場面に応じた合理的配慮の提供や差別禁止の徹底が適切に実施されるよう指導する。
(4)高齢者の就労環境改善
- ① 希望する高齢者の就労条件を整備するため、働きに応じた処遇を実現するとともに、高齢者の体力や健康状態その他の本人を取り巻く状況に合致した職場環境を整備する。加えて高年齢者就業確保措置として業務委託契約など雇用契約以外の契約方式をとる場合であっても、安全および健康への配慮に十全を期す。
- ② 低所得高齢単身女性を生み出している主要な原因の一つである雇用における男女の不平等をなくすため、速やかに法的措置を講じ、体系的・計画的施策を進める。
(5)職場におけるハラスメントの根絶
ILOの「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶」に関する条約の批准に向け、ハラスメント対策関連法を改正し、ハラスメントそのものを禁止する規定を創設する。あわせて、性的指向・性自認に関する差別・偏見をなくし、すべての人の対等・平等、人権の尊重のために、性的指向・性自認(SOGI)に関する差別を禁止する法律を制定する。
(6)ワーク・ライフ・バランスの推進
- ① 仕事と家庭・子育ての両立を促進するために、特に男性の労働時間短縮やテレワーク等の働き方改革を促進する。その際、テレワーク等になじまない職種に従事する労働者も含めて対策を講じる。
- ② 待機児童の解消に向けて、保育士の人材確保、処遇改善を早急に進める。保育の質の向上、事故防止等の観点から教育訓練を実施・促進する。
また、働き方に中立的な社会保障制度等の構築に際して、働く意欲のある保護者のニーズに十分に応えられるよう量的な充実をはかる。
(7)その他
社会保障の基盤である良質な雇用の安定と拡大をはかる。なかでも偽装請負契約・ギグ労働、フリーランス等の「雇用類似の働き方」の実態を調査し、高齢者を含む全ての就労者を保護する法制を整備する。
6.中小企業勤労者の福祉格差の是正
- ① 中小企業勤労者の福祉格差の是正に向けて、国・自治体・事業主の役割・責務等の明確化、ワーク・ライフ・バランスの推進、また、政府が進める「働き方改革」が勤労者の生活を「ゆとりと健康で充実したもの」とするため福利厚生の必要性を明確にし、国・自治体等・事業主の責務を明確にした法整備を行うこと。あわせて、従業員の福利厚生に積極的な取り組みを行う事業主、非正規労働者等が福利厚生制度を利用できるよう、財政面の充実をはかること。
- ② 中小企業勤労者福祉サービスセンターの自立と再生に向けて、広域化を推進するとともに、中小企業の「働き方改革」を福利厚生面から支える総合的福祉センターを展望し、魅力あるサービス内容への抜本改革を進める。
7.勤労者の生活設計・保障への支援
(1)財形制度の改善
- ① 改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が努力義務となったことを受け、非課税財形(年金・住宅)契約時の年齢制限(55歳未満)を引き上げる。
- ② 福利厚生の均等・均衡待遇の確保の観点から、パート・有期契約等で働く勤労者が財形貯蓄制度を利用しやすいように対策を講ずる。
- ③ 「NISA」や「iDeCo」などの資産形成手段が注目されるなかであっても、給与天引きによる積立である財形貯蓄制度が資産形成の基盤となることを勤労者に積極的にアピールする。
- ④ 財形貯蓄制度の導入および利用促進に向けて、これまで行った広報活動などを検証し、実効性のある周知広報活動および支援を行う。
- ⑤ NISAの非課税保有限度額が拡大したことを踏まえ、財形年金貯蓄および財形住宅貯蓄においても非課税限度額を引き上げる。
- ⑥ 財形住宅貯蓄の増改築(リフォーム等を含む)における適格払出しの要件を緩和し、本人が居住する住宅に係る屋根修理・外壁塗装や、災害に備えた増改築等(水道管凍結防止設備、家庭用蓄電池の設置など)を対象にすること。また、適格払出しの費用要件(75万円超)を撤廃する。
- ⑦ 介護や子育て・教育に係る非課税財形の払出し時には利子等を非課税とし、遡及課税しない扱いとする。また、財形住宅貯蓄の払出し時には自然災害等により被災した場合に限らず、本人と生計を一にする親族が所有している住宅の建替え、改修等にも利子等を非課税とし、遡及課税しない扱いとする。
(2)共済制度に関する税制等の改善
- ① 現行の生命保険料控除制度(一般生命保険料控除)を、国民生活の安定に資するため、また、国民の自助・自立のための環境を整備する観点から、制度を拡充する。
- a)23歳未満の扶養親族を有する場合は、所得税法上の一般生命保険料控除の限度額を6万円とする。
- ② 遺族の生活資金確保のため、死亡共済金の相続税非課税限度額について、現行限度額(「法定相続人数×500万円」)に「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算する。
- ③ 消費税等において、控除対象外の仕入税額負担を軽減するための見直しを行う。
- a)課税売上割合を算出する際、共済掛金などの非課税売上に一定の率を乗じるなど、控除対象外の仕入税額負担を軽減するための措置を講じる。
- b)完全支配関係にある子会社との取引に係る消費税について一定の割合を控除するなど、消費税負担の軽減をするための措置を講じる。
- ④ 協同組合の性質、歴史的経緯等を勘案し、引き続き、国税・地方税について協同組合税制を堅持する。
- ⑤ 急速に進む社会・経済情勢の変化の中で、共済活動に課せられた社会的役割を果たすため、勤労者・生活者の自主、自発かつ自律的な活動を阻害することなく、相互扶助や協同・連帯の理念を実現しうる法制度の改善を行う。
8.安心・信頼できる社会保障の構築
(1)社会保障制度の再構築
人口構造の急速な変化や多様で複合的な困難に対応し、誰もが将来にわたり安心して暮らすことのできる全世代支援型社会保障制度の再構築に向けて、政府は国民参画の下で早急に検討を行い実現をはかる。
(2)失職等に伴う社会保障の充実
- ① 失職者等に対して税・社会保険料の減免を広く適用するため、所得基準の弾力的運用や特例措置を講じる。
- ② 雇用保険の基本手当について、所定給付日数・給付率を2000年改正前の水準にまで回復する。
(3)子育て支援
- ① 子育てにおける親の費用負担の軽減のための施策を講ずる。
- a)児童手当、児童扶養手当、出産・育児休業給付など、子育て家庭への給付を拡充する。
- b)妊娠・出産期からの相談や支援につなげられるよう、自治体の相談窓口を地域の中に拡充するとともに、改正育児・介護休業法の施行も踏まえて、両親学級などの支援について、男性も参加しやすく出産・育児について共に学べる内容に改善・充実させる。
- c)必要な財源を確保したうえで、良質な保育・幼児教育など子ども・子育て支援策を充実する。保育・教育の人材を育成・確保・適正配置し、処遇を改善する。
- ② こども基本法の理念にもとづき、保護者が安心して生み育てられる条件整備や、子どもが健やかに育つための環境整備をはかる。また、子育ては当事者・家族に委ねるのではなく社会全体で支えることについて合意形成をはかり、十分な財源を確保する。【新規項目】
(4)年金制度の信頼の確保
- ① マクロ経済スライド制度による年金額調整のあり方について、現受給者の年金を守るとともに将来の年金受給世代が貧困に陥らない年金額水準を確保する。また、基礎年金はマクロ経済スライドの対象外とする。
- ② 公的年金積立金の管理・運用にあたっては、以下の内容を重視する。
- a)公的年金積立金の運用については、専ら被保険者の利益のため運用する。
- b)政府が日銀の金融緩和と一体でGPIFに強要した株式投資比率拡大方針を撤回する。
- ③ 最低限の生活ができる年金給付制度の検討や納付負担の軽減のための施策を検討する。
- ④ 年金制度について、国民的議論ができるよう、情報提供を強化する。特に、若年層への制度の情報提供を強化する。
- ⑤ 短時間労働者の被用者年金保険加入を速やかにかつ抜本的に拡大する。企業規模要件は改正法の実施を繰り上げるとともに速やかに全面廃止する。
- ⑥ 年金・医療をはじめとする被用者保険について適用基準を拡大し、基準を満たす労働者に洩れなく適用させる。
(5)安心の医療・介護体制の整備
- ① 医療分野
- a)医療従事者の確保と育成、処遇改善の方法を適宜見直す。国の政策として必要な診療科の専門医育成をすすめること。また医師と診療科の地域偏在是正へのさらなるとりくみ、人材紹介業者に依存しない医療従事者確保を国や都道府県主体ですすめる。
- b)感染禍でも安心・安全の医療提供体制を確保するため、医療機関や介護事業所・福祉施設への財政支援など、必要に応じて平時からの感染症対策を強化する。
- c)医療機関の患者受け入れや相互連携が円滑に行われるように、自治体による入院調整機能、救急搬送調整などのサポートを強化する。また、高齢者救急の増加に伴い、救急搬送困難事例が生じないよう環境整備を強化する。
- d)医療機関や介護・福祉施設で引き続き感染対策等の対応が進められるよう、ゾーニングなどの感染対策の支援を継続する。
- e)要望に応じて新型コロナワクチンの無料接種を継続し副反応など国民の不安に対する適切な情報提供を行う。
- f)コロナ禍を経て高齢者の認知症やフレイル・オーラルフレイルの進行が明らかになっていることから、フレイル予防について広く国民に対する啓発を行う。
- g)後期高齢者医療は2024年度から段階的に保険料の引き上げが進められる。物価高騰・エネルギー関連費用が高騰するなか、2割化と経済的理由による受診ひかえが進むことが予測される。子ども医療費無料化に関する制度の創設とあわせて長期的視野にたった政策をすすめる。
- h)医療従事者の働き方改革(特に医師)をすすめるため、増員と多職種連携(タスクシフト)が重要となることから、医師をはじめ看護師やリハビリ職員などの医療従事者の確保・育成を強化する。また、病院勤務医など医療労働者が自己犠牲を払わない働き方の実現に向けて、国としてさらなる施策を講じる。
- i)在宅医療の受け皿拡充に向けて、 在宅医療担う医療従事者の確保と、総合診療医・家庭医、訪問看護師の育成を強化する。
- j)マイナンバーカードの取得は本人の選択に基づくという原則を遵守する。また、マイナ保険証への移行にあたっては、国民の不安を払拭するために国民・患者目線での丁寧な周知とともに、マイナ保険証の利用が安心して質の高い医療につながる体制を構築する。【新規項目】
- k)難病指定されている人や難病指定をされていない慢性疾患を抱えている労働者やその家族へのさらなる支援と難病指定の拡大のための対策を講じるとともに、難病に対する国民の理解浸透に向けた周知・広報を求める。【新規項目】
- l)新型コロナウイルス感染症対応に関する医療機関や介護事業所・福祉施設への財政支援など臨時的措置については、コロナ禍での効果を検証して、必要に応じて恒常的な感染症対策への転換を進めるとともに、感染状況の動向を踏まえながら財政支援を継続する。
- ② 介護分野
- a)将来にわたり誰もが住み慣れた地域で質の高い介護保険サービスを受けられるよう、介護人材の確保・定着に向けて、継続的な賃金・労働条件の改善やハラスメント対策の強化など、やりがいや誇りを持って働くことがきる職場づくりをすすめるとともに、介護職の魅力発信や周知等を強化する。また、ヤングケアラーを含めた介護にかかる現状をふまえ、若年層など当事者だけの問題とせず地域や社会全体で介護を支えるよう啓発・情報提供・相談支援などをすすめる。
なお、今回の介護報酬改定において訪問系サービスの基本報酬が切り下げられたことから、地域医療介護総合確保基金や各種交付金・助成金等を活用しながら、施策の拡充をはかる。 - b)地域支援事業・総合事業が十分に機能していない現状がある。介護予防や生活支援サービスの拡充をはかる総合事業や生活支援体制整備事業の本来の目的を踏まえ、事業のあり方を見直すべき。地域課題解決の人材が不足する中、地域の助け合い・ボランティア活動だけでは限界があり、優良な民間事業者のサービス活用等も含め、地域共生社会の実現に向けて総合事業における質の高い多様なサービスの活用促進をはかる。
また、厚労省検討会で示された「国や都道府県のプラットホーム構築」の具体化をはかる。 - c)認知症の方も含め、専門的なケアを必要とする要介護1・2の方への介護保険給付は生活援助サービスも含めこれまで通り維持すべきである。
- d)介護保険制度本来の主旨に基づき、介護給付サービスとは支援内容が異なる身近な窓口としての相談・支援機能の維持、必要な介護サービスの利用控えを防ぐ上でも、適正な居宅介護支援(ケアマネジメント)の継続、利用者負担なしを維持すべきである。
- e)すべての介護従事者の賃金・労働条件や職場環境などの継続的な改善に向けて、国としてさらなる施策を講じる。
- g)深刻な介護職員不足に対応するため、介護職員が安心して働き続けられる環境づくりに向けて、介護職員等処遇改善加算を現場の継続的な処遇改善とキャリアアップにつながる賃金制度の構築に結びつけるとともに、すべての介護人材の全産業平均との賃金格差を是正するため、さらなる処遇改善を行う。
- h)介護支援専門員の処遇の見直しを検討する。
- i)介護保険制度の見直しにあたっては、サービス内容の低下を招くことのないよう、利用者本位の見直しを行う。
- j)地域で認知症の方の見守り活動に取り組むNPOや市民団体等に対する支援を拡大する。
- k)介護人材の確保および「介護離職ゼロ」は事業所の努力だけでは限界があるため、引き続き都道府県および各保険者が取り組むよう、国は支援する。
- l)地域包括支援センターの機能を強化し、実施体制を整備するため、保険者ごとに基幹的役割を果たす地域包括支援センターの設置を促進する。また、地域包括支援センターの安定運営に向けて、保険者による財政措置、人材確保や教育研修など施策強化のための支援を行う。
- m)被介護者の権利保障とともに、家族介護支援事業を含め介護者に対する支援を体系的に整備する。利用者・家族にとって不可欠な要介護1・2に対するサービスを地域支援事業に移行させない。
- n)地域医療介護総合確保基金や各種交付金・助成金を活用し、介護人材確保や物価高騰対策を強化する。特に、基金等を活用した地域密着型サービスに対する対策の拡充を求める。
- o)在宅生活の継続を支える要となる訪問系サービスに対し、地域医療介護総合確保基金や各種交付金・助成金等を活用した経営改善の施策を早急に検討・実施すること。
- a)将来にわたり誰もが住み慣れた地域で質の高い介護保険サービスを受けられるよう、介護人材の確保・定着に向けて、継続的な賃金・労働条件の改善やハラスメント対策の強化など、やりがいや誇りを持って働くことがきる職場づくりをすすめるとともに、介護職の魅力発信や周知等を強化する。また、ヤングケアラーを含めた介護にかかる現状をふまえ、若年層など当事者だけの問題とせず地域や社会全体で介護を支えるよう啓発・情報提供・相談支援などをすすめる。
9.くらしの安全・安心の確保
(1)食品の安全性確保および表示問題
- ① 食品衛生法や食品表示制度の改正について周知をはかり、事業者・消費者双方に対して、食品の安全確保や食品表示に関する理解度を向上させる。
- ② ゲノム編集技術を利用した食品について届出制度を的確に運用し、表示や情報提供を事業者に指導する。細胞培養食品等、新規技術を利用した食品の取扱いの検討は慎重に進めると同時に、背景や目的、生活との関わりについても消費者への情報提供が必要。その上で消費者が選択できる環境を整備する。
- ③ 2024年4月に食品衛生基準行政が厚生労働省から消費者庁に移管された。行政の食品安全推進の取り組みに支障や停滞が生じないよう規格基準の策定機能や関係省庁の連携を維持・強化する。
- ④ 安心・安全で安定的な食料を確保(食料安全保障の確立)するため国内の食料自給率の向上と生産基盤である地域農業の活性化をはかる。国際的自由化が進展する中で、輸出入農畜産物の安全基準の明確化と国民に対する透明性を確保する。
(2)防災や環境に配慮した住宅整備促進等の住宅政策の改善
- ① 特例措置制度等の恒久化と要件緩和として、良質で低廉な住宅の安定供給や流通促進、国民の住宅取得支援をはかるため、制度の恒久化や軽減措置の導入等を行う。
- a)住宅ローン控除制度の恒久化ならびに床面積要件の引き下げ
住宅ローンを利用して住宅を取得または増改築等の場合、一定の要件を満たせば住宅借入金等特別控除が適用され、その取得等に係わる住宅ローン等の年末残高から計算した金額が所得税額から控除することができるが、本住宅ローン控除制度は特例措置であり、制度の恒久化をはかる。 - b) 住宅取得支援、良質な住宅供給をはかる措置の恒久化として、ア)新築住宅に係わる固定資産税の軽減、イ)居住財産の譲渡に係わる特例、ウ)不動産取得税に係わる特例、エ)認定優良住宅を新築した場合の特例等について特例措置の延長から、措置の恒久化をはかる。
- a)住宅ローン控除制度の恒久化ならびに床面積要件の引き下げ
- ② 全国で頻発・激甚化する自然災害に対して、安全で震災に強い安心住宅や省エネルギー住宅が求められる。一部で義務化の動きもあり、すでに国による補助金制度も導入されているが、さらに、a)高耐震・高耐久住宅、b)省エネ対応住宅、c)耐震・バリアフリー・省エネリフォーム、d)液状化地盤改良工事等への国の補助金制度の拡充をはかる。
また、対応する省庁が国土交通省、環境省など複数存在し補助制度を複雑化しているので、行政窓口の一元化をはかる。 - ③ 甚大な自然災害の復旧に際しては、地域の実情等を十分に勘案した施策をはかる。とりわけ過疎地域等は都市部とは異なり、土地売却が困難である事に鑑み、国・地方自治体による買い上げや公的住宅の新設を行うとともに、生活援助一時金支給等を含めた制度の確立をめざす。当面、当該地域の自治体、地域代表者をメンバーに加えた有識者検討会を政府として設立し、具体的な施策を検討する。
- ④ リフォーム業者は近年様々な分野からの進出もあり、その競争が激化している。中には高齢者等をねらった悪質な事業者も未だに存在している。「住宅リフォーム事業者団体登録制度」の周知や相談窓口の充実など消費者を保護するための対策を徹底する。
また、新築住宅に義務化されている契約不適合責任の適用を一定規模以上(請負金額300万円以上等)のリフォームにも適用する制度の創設をはかる。
(3)環境およびエネルギー政策
- ① 現在のエネルギー政策基本法では、「安定供給の確保」、「環境への適合」、「市場原理の活用」の3つを基本視点として定めている。今後は、この3つの視点にもとづく取り組みを推進していくことに加えて、「安全の確保」と「国民の参加」を基本視点に盛り込む。
- ② 原子力発電は、ひとたび事故が起これば、人々の生活や健康、国土・海洋など広範な環境に甚大な被害をもたらす可能性がある。原子力政策の重要な事項における決定においては、特に「国民の参加」による理解と合意を前提としてすすめる。
- ③ 中長期的な日本のエネルギー政策を展望し、以下の課題に取り組む。
- a)原子力発電への依存を段階的に低減し、最終的には原子力エネルギーに依存しない社会をめざす。
- b)省エネルギー(節電)による使用電力量の大幅削減に向けた施策を推進する。あわせて事業者の省エネルギーをさらに進めるための支援制度の充実をはかる。
- c)効果的な省エネルギー技術の開発と普及のための施策を行う。
- d)再生可能エネルギーの導入量増加による系統制約に対しては、合理的な利用と中長期の計画的な系統形成を進め、計画の進捗状況について公開する。また、系統整備費用の負担方式は消費者にとって透明性の高い仕組みとする。
- e)電力・ガスなどエネルギーシステム改革における消費者参画を広げ、消費者・需要家が多様な選択肢から選択できるよう推進していく。
- f)次世代送電網(スマートグリッド)のような革新的技術の構築を積極的に推進していく。
(4)友好かつ安定的な経済連携、経済連携問題への労働者・消費者・市民の意見反映
国内外で調達リスクが高まる中、将来にわたり食料をはじめとした安定供給を確保するため、平和な国際関係や信頼に基づく貿易関係の構築が極めて重要であり、世界の国々と友好かつ安定的な経済連携を行う。TPPやRCEP、2ヵ国間EPAなど、あらゆる経済連携協定において、労働者・消費者・市民を含めた幅広い関係者との対話の場を設けるとともに、広く情報公開を行う。