政策・制度

政策・制度 2017年度政策制度要請

Ⅰ.構成

  1. 持続可能な社会づくりに向けた協同組合の促進・支援
  2. 大規模災害等の被災者支援と復興・再生および今後の災害対策
  3. 格差・貧困社会の是正、セーフティネットの強化
  4. 消費者政策の充実強化
  5. 中小企業勤労者の福祉格差の是正
  6. 勤労者の生活設計・保障への支援
    (1)財形制度の改善
    (2)共済制度に関する税制等の改善
  7. 安心・信頼できる社会保障の構築
    (1)子育て・教育支援
    (2)年金制度
    (3)医療および介護
  8. くらしの安全・安心の確保
    (1)食品の安全性確保および表示問題
    (2)防災や環境に配慮した住宅整備促進等の住宅政策の改善
    (3)環境およびエネルギー政策について
    (4)消費税増税への対応
    (5)経済連携問題への労働者・消費者・市民の意見反映

Ⅱ.概要

1.持続可能な社会づくりに向けた協同組合の促進・支援

 政府による協同組合支援を強化し、協同組合憲章を定める等、協同組合全体を貫く協同組合政策の基本的な考え方と方針をよりいっそう明確にする。
 また、税制の適用において協同組合の独自性や社会的役割を考慮する。生協法改正など法制度面の改善を行うとともに、「協同労働の協同組合」法を速やかに制定する。

2.大規模災害等の被災者支援と復興・再生および今後の災害対策

 被災者への生活支援を進め、被災地における医療関係の支援を行うほか、住民主体による復興・再生の取り組みの制度化を進める。今後の災害対策については、各種審議会等での課題に消費者ニーズを反映させるとともに、民間事業者による支援物資備蓄等への財政支援を行う。

3.格差・貧困社会の是正、セーフティネットの強化

  1. 教育・人材育成での機会均等を図るため、給付型奨学金制度の創設を契機として、有利子から無利子へ、貸与から給付への流れを加速し、既存の返済者の負担軽減や救済制度の拡充、教育における公財政支出増加などを通じ、学費を含む教育費負担の軽減につなげる。
  2. 「生活困窮者自立支援制度」において、就労支援に向けた体制強化を図るほか、任意事業の必須事業化、国庫補助率の引き上げ等の検討を進め、制度の充実を図る。
  3. 人間の尊厳が保障され、利用しやすい生活保護制度へ改善する。住宅扶助基準と冬季加算の引き下げについては撤回する。

4.消費者政策の充実強化

 消費者裁判手続き特例法の国民への周知をはじめ、地域での消費者行政の充実・強化、消費者教育の推進を支援し、消費者市民社会づくりを進めるとともに、消費者被害の救済に向けて、被害回復を担う消費者団体の公益的活動に対する財政面・情報面での支援を行う。

5.中小企業勤労者の福祉格差の是正

 中小企業勤労者の福祉格差の是正に向けて、国・自治体・事業主の役割・責務等を明確化し、中小企業勤労者福祉サービスセンターの促進を図るための法制化を行う。

6.勤労者の生活設計・保障への支援

  1. 財形貯蓄制度の導入促進と融資制度の利用促進を図るために、実効性のある周知広報活動および支援を行う。また、非課税限度額の引き上げ等の税制面での改善を図る。
  2. 生命保険料控除制度や遺族の生活資金確保のための死亡共済金の相続税非課税限度額の拡充のほか、消費税の仕入税額の負担軽減措置を講じるなど、税制面での改善を図る。

7.安心・信頼できる社会保障の構築

 子どもの貧困問題への対策、子育て・教育における親の費用負担の軽減、年金制度、医療・介護分野の諸課題、社会保障教育等、世代を超えて安心・信頼できる社会保障制度を構築する。

8.くらしの安全・安心の確保

 食品の安全性確保と表示問題、防災や環境に配慮した住宅整備促進にむけた住宅政策はじめ、環境・エネルギー、税制等、くらしの安全・安心の確保へ向けた施策を推進する。

Ⅲ.各論

1.持続可能な社会づくりに向けた協同組合の促進・支援

(1)政府による協同組合支援の強化

 国連SDGs(持続可能な開発目標2030)本文で協同組合が担う役割が明記された他、日本政府のSDGs実施指針でも、連携するステークホルダーの一つとして協同組合が挙げられた。さらに2016年11月には「協同組合において共通の利益を形にするという思想と実践」がドイツからの申請に基づきユネスコ無形文化遺産に登録された。
これらは、持続可能な社会づくりに向けた協同組合の貢献に対する評価と協同組合の役割発揮への期待を反映したものであり、政府による協同組合の支援についてより一層強化する。

① 協同組合に関する政府支援の明確化
協同組合憲章を定める等、協同組合全体を貫く協同組合政策の基本的な考え方と方針をよりいっそう明確にする。

② 政府による協同組合への持続的支援
2012国際協同組合年の取り組みを踏まえて、「自主・自立」、「民主的運営」を基本に組合員の出資・運営参加により事業を実施する協同組合が社会の中で認知され、持続的に役割を発揮できるよう政府による支援を継続的に行う(政府広報、統一的な統計調査、学校教育における協同組合に関する授業の強化など)。そのため、政府において、協同組合政策に関する調整窓口を設置する。

(2)税制の適用において、協同組合の独自性や社会的役割を考慮する。

 非営利の相互扶助組織としての協同組合の社会的・公共的な役割と持続可能な経営基盤の確立の重要性に鑑み、協同組合に配慮した税制を継続する。

(3)生協法改正

 急速に進む社会の構造的な変化や今日の経済情勢、災害などから生まれるくらしの厳しさや将来への不安が増す中、消費者・市民からの生協の役割発揮への期待に応えることを可能とする法制度面の改善を求める。

(4)持続可能な地域づくりと就労創出を促進する「協同労働の協同組合」の法整備

 国連が提唱しているSDGsに貢献するためにも、「地方創生」や「地域共生社会」(一億総活躍社会)等の国の政策に、住民主体の地域づくりや就労の自発的創出を促進する「協同労働の協同組合法」を位置付け、速やかに制定する。また、社会的に排除された人々の就労を通じた社会参加を促進する担い手として、「協同労働の協同組合」や社会的企業の果たす役割を重視し、その育成・支援を充実させるとともに、コミュニティにおける就労と事業化を促進するための政策を推進する。

(5)持続可能な地域づくりに向けて、非営利・協同組織と自治体・行政との協働の関係を充実させる。

 持続可能な地域づくりのために、自治体・行政と非営利・協同組織との関係を、単なるコスト削減や下請け型の業務委託ではなく、目的や基準(公正労働基準)を明確にした上での対等なパートナーシップに基づく協働の関係へと再編成する。そのため、地域福祉の向上と住民自治の促進を図る目的で、指定管理者制度などの公共サービスを支え充実させるための制度・政策を総合的に見直し、充実させる。
 特に、指定管理者制度においては①フルコスト・リカバリーの考え方を基に一般管理費を含む間接経費全体を人たるに値する人件費(公正労働基準)を見込んだ積算とする、②一定額の利益、繰越金(あるいは積立金)を認めて「精算」項目を廃止する、③指定管理料の適正化、④印紙税や消費税の非課税扱いの徹底、⑤会計処理と監査の改善、⑥制度の趣旨に相応しい科目の創設、以上を図る。

2.大規模災害等の被災者支援と復興・再生および今後の災害対策

(1)東日本大震災等の被災者への生活支援

  1. 地域ごとに被災者の生活、住居、就労、医療・介護・福祉等に関するきめ細かな情報提供や総合相談の体制を整備する。
  2. 被災者生活再建支援の全体像の進捗確認を進め、遅滞が生じている場合には克服をはかる方策を明示し必要な措置をはかる。
  3. 被災者生活再建支援制度の拡充検討、子ども・被災者支援法に基づく基本方針の実施など、原発事故被害者も含む被災者の支援を進める。
  4. 原子力災害による除染・道路の整備・防波堤改修に伴う工事車両の増大及び中間貯蔵施設への輸送車両の通行に係る交通安全対策費用を増額する。(歩道と車道の区別、作業出入口ガードマン配置)
  5. 二重ローン等の住宅等の既存債務問題について、政府方針を受けたガイドラインによる対応も進められているが、被災者の生活再建を支援する観点から、国による一層の施策の充実を図る。
  6. 仮設住宅入居者の災害公営住宅(復興住宅)等への移転に際しては、孤立化防止の観点から既存コミュニティの維持等、入居者の意向に沿った移転を進める。
  7. 東日本大震災特定被災区域等における医療費窓口負担、介護利用料免除措置の国による財政支援を再開する。

(2)住民主体による復興・再生の取り組みの制度化

 被災地・被災者の「生活」の確保・安定に最大限の努力を費やすと共に、東日本大震災からの復興・再生を住民主体による取り組みと位置づけ、被災地・被災者自身の自主的・自発的な復興・再生の取り組みを支援する制度の創設を検討する。

  1. 復興・再生を従来型の行政主導・行政本位にせず、市民・地域の力を集めた取り組みにするための、組織的・政策的な位置づけを国の方針として明確化する。具体的には、地域の民間組織や非営利組織等も交えた復興・再生のためのネットワーク組織の結成を促進し、官民一体となった取り組みを活発化させ、これを国として支援する。
  2. 東北の被災地・被災者の仕事の確保・創出について、地域の産業創出や従事する就労分野の変更を制度的に支える研修・訓練制度と、公的に就労を保障する制度を組み合わせた、「公的訓練・就労事業制度」(仮称)を新たに創設する。

(3)今後の災害対策

  1. 政府の各種審議会等における課題へ消費者ニーズを反映する
     将来起こりうる大規模災害に備え、今後の災害対策に必要な被害想定、燃料確保や物流網の維持確保等の課題に対し、消費者ニーズを反映するため、各種審議会等に、消費者団体等の意見を反映させる。
  2. 熊本地震の教訓から、災害復旧だけでなく被災地のくらし全般の復興を視野に入れた支援体制をつくること、支援のための平常時からの財源づくりを検討する。
  3. 民間事業者による支援物資備蓄および倉庫確保等への財政支援を行う
     将来起こりうる大規模災害に備え、民間事業者が実施する被災地支援物資のための食料品等の在庫やそれらを保管する倉庫確保等に関わる費用について財政支援等を検討する。
  4. 災害時の災害対応拠点となる自治体庁舎・公共施設・医療施設等の耐震化を徹底する。
  5. 学校教育における防災教育の充実を図り、避難対策等を徹底する。
  6. 災害に便乗した悪質商法・詐欺・空き巣等の発生防止に努め、予防啓発を徹底する。

3.格差・貧困社会の是正、セーフティネットの強化

子ども、若者、女性、高齢者など、あらゆる層に拡大する格差・貧困の解消をめざす。

(1)教育の機会均等 ~ 奨学金制度等の拡充・改善 ~

 給付型奨学金制度の創設を契機として、有利子から無利子へ、貸与から給付への流れを加速し、既存の返済者の負担軽減や救済制度の拡充、学費を含む教育費負担の軽減につなげる。

  1. 教育の機会均等の確保、将来を担う人材の育成、親・保護者の経済的負担の軽減をはかるなどの観点から、政府は教育における公財政支出をOECD平均まで引き上げる。
    (注)日本の公財政教育支出の対GDP比(OECDインジケータ2016より)
       全教育段階 日本 3.2%  OECD平均 4.5% (2013年)
       高等教育  日本 0.6%  OECD平均 1.1% (2013年)
  2. 給付型奨学金制度の拡充
    1. 給付型奨学金制度を継続的かつ安定的に運用できるよう、国の責任において必要な財源を確保する。民間からの寄付はあくまでも補完的な役割と位置づけ、民間からの寄付を政府予算の肩代わりにしない。
    2. 支給対象者については、将来的には中間層にまで広げることを展望しつつ、当面は、住民税非課税世帯の進学希望者全員(約6.1万人)に支給することを目標に拡充をはかる。
    3. 支給金額については、導入後の学生生活費の状況等も踏まえて検証し、進学を十分に後押しできるよう、更なる拡充をはかる。また、授業料減免と給付型奨学金を併用する際の減額は行わず、学費軽減と学生生活の両面からの支援を拡充する。
    4. 給付対象者の選定にあたっては、経済的に困難な家庭の子どもたちの置かれた学習環境や実態についても十分に考慮して、学校現場の意見も踏まえてガイドラインの見直し・改訂をを行う。
    5. 「学業成績が著しく不良となったと認められるとき」等の支給打ち切りや返還については、そうなるに至った事情を総合的に判断して、可能な限り学業を継続できるよう慎重な運用を行う。あわせて、アルバイトや家庭の経済状況など個々の学生の抱える事情を把握して丁寧な相談対応を行う。
    6. 給付開始後のニーズの充足状況の調査や運用に伴う問題点の実態把握を行い、実施状況や検証結果については国会に定期的に報告する。施行5年後の見直し時期以前においても、必要な改善については早期に対応する。
  3. 貸与奨学金は全面的に無利子とするため、独立行政法人日本学生支援機構法を改正し、一般財源化する。少なくとも、無利子が有利子を上回るよう、無利子奨学金を大幅に拡充する。残存適格者は確実に解消する。
  4. 延滞金は廃止する。廃止までの間、延滞金賦課率(現行5%)の引き下げを行うとともに、2014年3月以前の賦課率(10%)も引き下げる。また、元本返済が後回しとなる現行の充当順位は「延滞金→利息→元本」から「元本→利息→延滞金」に変更する。支払い能力がないにもかかわらず繰り上げ一括返済を求める運用は直ちに是正する。
  5. 2017年4月より導入された新たな所得連動返還型奨学金制度については、年収ゼロや非課税世帯であっても月額2,000円を返還させることの見直しなど、返済困難者の実情を踏まえて改善をはかる。あわせて、有利子奨学金や既返済者への適用拡大、返済開始から一定期間経過した後は残額を免除する制度の導入など、残された検討課題への対応を速やかに行う。
  6. 保証制度は人的保証を廃止し、機関保証のみとした上で、保証料率を引き下げる。
  7. 政府および日本学生支援機構は、奨学金を借りる際の丁寧な制度説明、および返済が困難になった場合の相談方法等の周知徹底に努める。また、スカラシップ・アドバイザー事業が十分な効果を発揮できるよう積極的な支援を行うとともに、相談に応じられる体制を構築する。そのため、日本学生支援機構の業務量の増加に見合った十分な人員や体制の整備をはかる。また、申請書の簡素化をすすめ、申請者および学校の事務負担の軽減を行う。
  8. 文部科学省の奨学金に関わる検討の場や学生支援機構の運営(運営評議会など)への奨学金利用者・保護者や勤労者代表の参画・意見反映を進める。
  9. 返還期限猶予制度等の救済措置の周知を徹底する。学生支援機構の裁量による恣意的な利用制限が行われないよう、法制度や運用の見直しを行う。
  10. 教育の無償化を展望しつつ、高騰した高等教育の学費の引き下げや授業料減免の拡充をはかるなど、家計や学生生活の負担を軽減するための政策を実行する。

(2)「生活困窮者自立支援制度」の充実等 ~ 就労支援に向けた体制強化

  1. 生活困窮者自立支援制度の着実な推進
    1. 就労支援を促進するため、支援員の確保や体制の強化をはかるとともに、福祉部局と雇用部局との連携や、就労の受け皿となる協同組合、NPO、企業への支援を進める。
    2. 自治体の広域連携を促進し、任意事業の実施を高める。
    3. 支援対象者は、経済的困窮者に限定せず、アウトリーチも含め可能な限り社会的孤立への対応をはかる。
    4. 生活保護が必要な方は生活保護制度につなぐよう指導を徹底するとともに、生活保護行政との密接な連携のもと、切れ目ない支援を行う。
    5. 貧困ビジネスの参入につながらないよう、就労訓練事業の認定機関の体制・監督機能を強化するとともに、相談支援機関による定期的な訓練状況の確認を徹底する。
    6. 相談・就労支援に従事する人材の養成を計画的に進めるとともに、継続的な雇用と処遇の改善をはかる。
    7. 既存事業との統合にあたって、ノウハウの継承が適切に行われているか、新たな制度の狭間が生じていないか、等の視点から検証を行い、必要な対策を講じる。
    8. 地方創生や雇用創出事業、地域包括ケア等とも連携し、地域づくりと一体的に進める。
  2. 2018年度の予算編成にあたっては、生活保護費等の削減によることなく、生活困窮者支援制度をさらに強化していくための充分な予算を確保する。支援の効果については、経済的自立(就労)のみならず、日常生活や社会生活における自立も含めて支援の段階に応じて適切に評価するとともに、支援を行わず放置した場合の社会的コストについて考慮する。
  3. 施行3年後の見直しにあたっては、以下の政策課題について検討し、制度改定を行う。
    1. 「就労準備支援」「一時生活支援」「家計相談支援」「学習支援」などの任意事業を必須事業とし、国庫補助の割合を引き上げる。
    2. 求職者支援制度等の関連施策との整合性・連続性をはかる観点から、就労支援期間の生活支援給付や就労訓練の際の交通費等の実費支給を行う。
    3. 就労訓練事業や家計再建支援事業の受け皿となる協同組合、協同労働、NPO、社会的企業などが育つ仕組みや支援(補助、優先発注等)のスキームを構築する。
    4. 支援対象者は経済的困窮者に限定せず、社会的孤立も含めて幅広く対応することを明確化する。
  4. 生活困窮者支援制度の検討・実施・運営を通じて、生活困窮者・貧困を生み出す社会的背景や政策課題をも明らかにし、生活困窮者を生み出さないための政策・制度の改善にフィードバックしていく。
  5. フードバンクを福祉分野と災害時の食糧支援システムとして積極的に位置づけ、省庁横断的な施策を推進する。自治体や福祉事務所、ハローワーク、母子支援団体や難民支援団体、DV被害当事者支援団体、社会福祉協議会、病院、宗教施設など、多様化する生活困窮者支援窓口でのフードバンク食品の提供や、パントリー設備の整備、食品ロス削減を通じた環境負荷の低減など、福祉・環境政策とも連携した施策を推進する。こうした位置づけのもと、フードバンクが継続的・安定的に発展できるよう、運営団体への助成を含めた国や自治体の支援策を拡充するとともに、食品提供者に対する税制優遇などについても検討する。
  6. 「生活困窮者自立支援制度」における社会的事業者の活用と雇用・就労創出策の充実
    1. 「生活困窮者自立支援制度」等で実施される「就労準備支援事業」「就労訓練事業(中間的就労)」等において、「社会的企業」や「協同労働の協同組合」を積極的に位置づけ活用し、地域における雇用・就労創出や社会的居場所の推進と連動させる政策を推進する。特に「就労訓練事業」においては、地方自治体による優先発注など公共調達の充実を図るために特段の支援策を講じる。
    2. 就労困難な若者や女性、高齢者、障害者など社会的困難にある人々を対象に、地域における就労創出による社会参加と居場所づくりを目的に、社会的訓練などの公的職業訓練と公的に就労を保障する制度を組み合わせた「公的訓練・就労事業制度」を新たに創設する。
    3. 「求職者支援訓練」においても、「生活困窮者自立支援制度」との積極的な連携を図ると共に、制度の抜本的見直し(①求職を一律の目的としない、仕事おこしや分野別の縦割りを超えたカリキュラムの設計と弾力的運用、②就労に困難を抱える若者や高齢者、障害者などに受講の枠を広げるためにも雇用保険財源から一般財源への移行等)を行い、公的職業訓練の一層の充実と(公共的社会サービスを担う地域の非営利組織、協同組合、中小企業などのコミュニティ事業者が実施主体となれるような)制度の弾力的運用、訓練メニューの創造的開発などを図る。
  7. 労働者保護ルールの堅持
    労働分野の規制緩和は、労働者保護ルール後退を招き、低賃金・不安定雇用・長時間労働等の問題を深刻化させ、格差・貧困の拡大に繋がるので、行わない。
    働き方改革の実行にあたっては、均等待遇原則(同一労働同一賃金)の法制化、非正規雇用労働者の処遇改善や長時間労働の是正、勤務間インターバルやハラスメント防止対策など、実効性のある法制度整備を行う。

(3)人間の尊厳が保障され、利用しやすい生活保護制度への改善

  1. フードバンクや子ども食堂による食料提供について、一部の自治体でこれが収入と認定され、生活扶助が減額されている問題が指摘されていることから、収入と認定している事例の有無について、全国調査を実施するとともに、これを収入認定の対象から明確に除外するよう、国の責任において改善策を策定・通知し、周知徹底する。
  2. 生活保護基準の引き下げは、利用者以外の低所得者の生活にも影響を及ぼし、負のスパイラルや貧困の連鎖を助長することが懸念されるため、安易に引下げは行わず、生存権を確保する観点からの見直しを行う。
    1. 前回以降の生活扶助基準および住宅扶助基準、冬季加算の引き下げについて、生活保護世帯に及ぼした影響や、生活保護基準と連動している他の制度(就学援助等の低所得者対策、地方税、最低賃金など)への影響の有無、内容を検証し、生活保護利用者の社会参加など生活の質も考慮して水準の引き上げをはかる。
    2. 子どもの貧困や、貧困の連鎖・固定化を防ぐ観点から、ひとり親世帯や多子世帯への扶助の拡充をはかる。
    3. 物価との関係については、前回の見直しの際に基準部会に諮ることなく「生活扶助相当CPI」という通常の物価指数とは全く異なる統計数値を用いて算出した手法の妥当性について、統計の専門家も含めた検証を行う。
    4. 生活保護基準のあり方の検討にあたっては、専門家による検証に加え、当事者が参加し意見反映する仕組みをつくり、国民的合意の形成に努める。
  3. 改正生活保護法の運用にあたっては, 生活保護の申請抑制や扶養義務の強化を招くことがないよう、現場に徹底する。生活保護制度を広く市民に知らせ、申請書やパンフレットを福祉事務所や行政の各相談窓口に設置するなど、誰もが利用しやすい制度にする。
  4. 申請等に関する苦情や相談、不服申し立て(審査請求)を受付け、調査権と行政への勧告権を持つ「第三者機関」を設置する。
  5. 生活保護制度は「最後の」セ-フティネットであり、国の責任において確実な財源保障を行う。このため、生活保護費の全額国庫負担も視野に見直しをはかるとともに、当面、生活保護申請が集中している自治体への財政負担を軽減する仕組みを検討する。
  6. 新たな生活困窮者支援など業務拡大・高度化等を踏まえ、地方交付税の福祉事務所費の大幅な改善を図り、ケースワーカーを増員するとともに、職員の専門性を高める。
  7. 資産を使い果たさなければ保護しないために自立をかえって困難にしているという観点から、最低生活費3ヶ月分程度までの現金・預貯金は認めるなど資産要件を緩和する。
  8. いわゆる水際作戦を防ぎ、生活保護の漏給防止を図るため、「123号通知」(1981(昭和56)年11月17日厚生省社会局保護課長・監査指導課長通知第123号「生活保護の適正実施の推進について」)は廃止する。
  9. 生活保護家庭の子どもが「世帯分離」をせずとも大学に進学できるよう、制度を改善する。

(4)子どもの貧困・虐待対策

  1. 児童手当や児童扶養手当などの公的手当について、低所得世帯の収入を不安定化させる現行の数カ月おきの「まとめ支給」を改善し、家計を安定させるために毎月もしくは隔月の支給とする。
  2. 児童虐待相談処理件数の急増に対応し、児童相談所の設置について児童福祉法に定める都道府県と政令指定市への義務づけに加え、中核市および東京23区についても設置を促進する。また、児童福祉司、相談員、児童心理司等の人材育成・確保を早急に進めることを通じて、予防的な取り組みを強化し、児童虐待を防止する。
  3. 児童虐待防止法の周知をはかる。特に、国民の通告義務(児童福祉法第 25 条)について、啓発・広報の徹底をはかる。
  4. 子どもの貧困対策大綱の見直しを待たずに、数値目標を含む具体的な貧困の削減目標を定め、当事者参加のもとに実効的な施策の立案と実行に着手する。また、各自治体における子どもの貧困対策計画策定にむけ、実態把握のための調査を実施し、全ての自治体での策定を促進する。
  5. 子どもの貧困対策法に規定された3年ごとの子どもの貧困率の公表(前回2012年数値)を早急に行う。また、貧困の改善に向けて目標数値を設定する。

(5)自死・多重債務対策等

  1. 自死率がいまだ高水準にあることに鑑み、改正自殺対策基本法に基づく施策(特に地域)の着実な実施と自殺対策官民連携協働会議の継続的な開催など必要な施策を推進する。
  2. 多重債務者対策本部が貸金業者による脱法行為を厳しく監視できるよう、都道府県・多重債務対策協議会における実態の検証・分析の強化と多重債務者対策本部との関係で有機的な連携をはかる。ヤミ金撲滅に向けて引き続き一層の取り組み強化をはかる。
  3. 生活困窮者や多重債務者等の生活支援を目的とする生活再建支援事業(相談貸付事業等)を行う民間非営利組織が活用できる公的信用保証制度等のしくみを検討する。
  4. 多重債務問題の誘発が懸念されるカジノ解禁問題については、IR実施法の制定は行わない。また、IR推進法の撤回・廃止も含め、対応する。
  5. 改正貸金業法の定める総量規制の対象外である銀行カードローンに起因する過剰融資については、政府の多重債務問題に関する有識者懇談会でも指摘されており、多重債務の防止に向けて、啓発活動をはじめ法改正も含めた必要な対応をはかる。

(6)セーフティネットの充実等

  1. 公的機関が民間企業などへ委託・発注する全ての事業において、適正な労働条件とサービスの質を確保するため、低価格入札に拘束された発注、不当な人件費や人員の削減、不安定雇用、下請け業者へのしわ寄せを排除する公契約基本法や条例を制定する。また、最低賃金の大幅引き上げを図る。
  2. 「居住の権利」を基本的人権と位置づけ、分立する住宅保障の仕組みを統合し、住宅政策(国土交通省)と生活困窮者支援政策(厚生労働省)との一体的な運用を可能とする仕組みに再編成する。
  3. 劣悪な居住環境や不要なサービスを強要し、高額な利用料を生活保護費からピンハネするなど様々な問題を引き起こしている「無料低額宿泊所」に対する規制を強化する。
  4. 追い出し屋被害を根絶するため、「追い出し屋規制法」(賃借人居住安定化法案)を国会に再提出し、速やかに成立させる。また、滞納家賃のデータベース化に対しては、収入が不安定な人たちが賃貸住宅市場から排除されないよう歯止めをかける。
  5. 高齢低所得単身女性の課題に対し、体系的な施策を検討・実施する。
  6. 低所得者・経済的弱者のための「福祉灯油」制度の実施・拡充へ向け、実施自治体への財政支援の拡充を含む対策を講じる。
  7. ホームレス自立支援法(ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法)(2017年8月6日期限)を10年間延長するとともに、同法の趣旨に従い生活困窮者自立支援制度においてホームレス支援が十分になされるための施策を実施する。法律の延長に関しては前回(2002年8月7日施行、2012年8月に5年間延長)同様、全会一致の対応とする。
  8. 改正住宅セーフティネット法の成立にともない創設される、空き家を活用した住宅セーフティネット制度について、厚生労働省の福祉政策や生活困窮者自立支援制度とも連携し、住宅困窮各層の住生活の安定・向上や家賃低廉化に繋がるよう実効あるものとして運用する。
  9. 買い物や通院など日常生活における移動困難者に対し、交通政策基本法の趣旨を踏まえ、地域公共交通を充実させるなど、適切な移動手段を確保する。

4.消費者政策の充実強化

(1)消費者裁判手続き特例法の国民への周知

 2016年10月から施行された消費者裁判手続き特例法だが、制度の周知は十分とは言えない。附則第7条では、法の趣旨および内容について国民への周知を図るよう努めるものとされており、引き続き国民への制度の周知をはかる。
 行政による経済的不利益賦課制度、悪徳事業者による財産の隠匿・散逸防止策について検討を進める。

(2)地方消費者行政の充実・強化

 消費者庁は、地方消費者行政活性化交付金を活用し、「消費者基本計画(2015~2019年度)」に基づいて、地方消費者行政の充実・強化をはかる。また、消費者庁は、消費生活相談員の雇い止め問題への対策の実施にも、引き続き取り組む。

(3)消費者団体の公益的活動に対する支援

 消費者庁は、消費者団体の公益的活動に対する支援を行う。
 特に、集団的消費者被害回復に係る訴訟制度を担う特定適格消費者団体への財政面・情報面の支援を行い、新たな訴訟制度の実効性を確保する。
 また、消費者庁は、「地方消費者行政強化作戦」に基づき、適格消費者団体の不在地域で、団体の設立を促進する。

(4)地域での消費者教育の推進に対する支援

 消費者教育推進会議のとりまとめ(2015年2月)を踏まえ、「地方消費者行政活性化交付金」も活用して、国は地域での取り組みを支援し、消費者市民社会の形成を進める。

(5)その他

  1. 物価の動向を引き続き監視するとともに、電気料金・都市ガス料金の自由化により、すでに自由料金であるLPガス・灯油・ガソリン価格を含めて家庭用エネルギー料金がすべて自由化される状況を踏まえ、消費者の権利を確保するための新たな政策を検討する。
  2. LPガス、石油製品(ガソリン・灯油)については、消費者のくらしに欠かせないものであることを踏まえ、公共料金に準じ、価格の決定過程の透明性、消費者参画の機会および価格の適正性を保つ観点からの施策を税負担のあり方等も含め検討、実施する。

5.中小企業勤労者の福祉格差の是正

  1. 中小企業勤労者の福祉格差の是正に向けて、国・自治体・事業主の役割・責務等の明確化、ワーク・ライフ・バランスの推進、財政面の充実、関連施策との関係整備等をはかる観点から、法制化を行う。
  2. 中小企業勤労者福祉サービスセンターの自立と再生に向けて、広域化を推進するとともに、勤労者の暮らしと福祉に関する総合福祉センターをも展望し、魅力あるサービス内容への抜本改革を進める。
    ① 全ての会員がいつでもサービスを気軽に利用できる仕組みを確立する。
    ② 既存の企業内福利厚生と重複せずに、従業員ニーズに合わせてサービス・会費が選択できる複数会員制度の導入を進める。
    ③ 地域の福祉団体やNPO等とのネットワークにより、個別企業では提供困難な子育て・介護支援、生活福祉相談、生涯生活設計支援、共済・生活保障、自己啓発、健康増進、生きがいづくりなど、ワーク・ライフ・バランスの支援や勤労者の多様なニーズに応えるサービスを提供する。
    ④ 大企業や公務部門からの福利厚生事業の受託化を積極的に進め、地域の全勤労者を対象とした事業展開をはかる。特に、非典型雇用(有期・パート・派遣等)労働者や退職者を事業の適用対象とし、必要な財政支援を行う。
    ⑤ 中小企業勤労者福祉サービスセンター未設置地域における設置促進の取り組みへの支援を行う。
  3. 中小企業勤労者福祉サービスセンターの再編(広域化と改革)を進めるにあたって、都道府県が積極的な役割を果たすよう、国の支援・指導を強化するとともに、裏付けとなる財源確保をはかる。また、地域における勤労者のライフサポート事業の促進やサービスセンターの統合・事務の集中化を支援するための基金の造成など、国庫補助廃止に変わる新たなスキームでの国の支援策を早急に検討・実施する。また、全国レベルでのサービスセンターへの支援体制の構築や共同化推進事業等に対する予算措置を行う。(中小企業勤労者福祉事業対策費、全福センターへの補助)
  4. 中小企業退職金共済制度(中退共)への加入促進をはかるとともに、以下の制度改善を行う。
    ① 一般の中退共では、「掛金納付期間が1年未満は支給なし(2年未満は掛金納付額を下回る)」となっているが、企業の倒産・廃業の場合には掛金相当額が受給できるよう措置を講ずる。また、特定業種(建設業、清酒製造業、林業)退職金共済制度においては掛金納付期間が2年未満は支給されないことから、一般の中退共と同様に「1年未満」となるよう措置を講ずる。

6.勤労者の生活設計・保障への支援

(1)財形制度の改善

【普及促進に関する項目】
  1. 財形貯蓄制度の導入促進と融資制度の利用促進を図るため、実効性のある周知広報活動および支援を行う。特に制度導入率の低い中小企業への周知・普及に向けた取組みを強化し、非正規雇用者、若年層雇用者への周知等が行き渡るよう対策を講じる。あわせて財形制度を導入し利用率が高いなど優良な中小企業に対し対外的にアピールできるような対策を講ずる。また、定年退職後再雇用などで雇用延長となった勤労者も財形貯蓄が継続できることを知らない事業主や勤労者が多いことから、ホームページやチラシなどで周知するなどの取組みを行う。
【税制改正に関する項目】
  1. 非正規雇用者に対して、一般財形、財形年金、財形住宅の制度が利用しやすいように対策を講ずる。
  2. 財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄の非課税限度額を1,000万円に引き上げる。
  3. 60歳以降の雇用継続等高齢者の雇用実態に合わせ、非課税財形(住宅・年金)契約時の年齢を撤廃または引き上げる。 (年金・住宅共通) ・新規契約   55歳未満
  4. バリアフリー改修促進税制、省エネ改修促進税制に合わせ、財形住宅貯蓄の増改築等における適格払出しのバリアフリー改修、省エネ改修に係る費用要件75万円超を50万円超にする。
  5. 勤務先の都合により離職した失業者に対して、非課税適用継続期間の延長と非課税財形の払出し・解約する際の適格払出しの要件を緩和する。
  6. 介護に係る非課税財形の払出し時の利子等を非課税とし遡及課税しない扱いとする。

(2)共済制度に関する税制等の改善

  1. 現行の生命保険料控除制度(「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」)を、国民が安心して利用できるように、安定的に運営する。また、国民の自助努力支援のため、今後の社会保障制度改訂の動向などを踏まえて、制度拡充についても検討する。
  2. 遺族の生活資金確保のため、死亡共済金の相続税非課税限度額について、「現行限度額(「法定相続人数×500万円)」に、「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算する。
  3. 消費税等において、控除対象外の仕入税額負担を軽減するための見直しを行う。
    1. 課税売上割合に算入する共済掛金などの非課税売上に一定の率を乗じたものとすることで、控除対象外の仕入税額負担を軽減するための措置を講じる。
    2. また、完全支配関係にある子会社との取引に係る消費税について一定の割合を控除するなど、消費税負担の軽減をするための措置を講じる。
  4. 協同組合の性質、歴史的経緯等を勘案し、引き続き、国税・地方税について協同組合税制を堅持する。
  5. 急速に進む社会・経済情勢の変化の中で、共済活動に課せられた社会的役割を果たすため、勤労者・生活者の自主、自発かつ自律的な活動を阻害することなく、相互扶助や協同・連帯の理念を実現しうるよう生協法など法制度面の改善を行う。

7.安心・信頼できる社会保障の構築

(1)子育て・教育支援

  1. 子どもの貧困問題への対策と、子育て・教育における親の費用負担の軽減のための施策を講ずる。
    1. 児童手当、児童扶養手当、出産・育児休業給付など、子育て家庭への給付を拡充する。
    2. 保育・就学前教育を全ての子どもに保障する。
    3. 妊娠・出産期からの相談や支援につなげられる窓口を設置する。
  2. 仕事と子育てが両立できるワーク・ライフ・バランスの取り組みを推進する。
  3. 待機児童ゼロの実現をめざす施策を講ずる。待機児童の解消に向けて、保育士の人材確保のため処遇改善を進めるとともに、事故防止等の観点から教育訓練を促進する。

(2)年金制度

  1. マクロ経済スライドによる調整にあたっては名目下限方式を堅持する。また、基礎年金はマクロ経済スライドの対象外とする。
  2. 年金税制について
    1. 年金課税については、社会化された扶養であるという年金所得の社会的性格、および応能負担原則を踏まえた一貫性ある税制とする。
    2. 配偶者控除の見直しを検討する場合は、年金生活世帯の増税・社会保険料負担増をもたらさない方策を講ずる。
  3. 公的年金積立金の管理・運用について
    1. 公的年金積立金の運用については、専ら被保険者の利益のため運用する。
    2. 運用方針の検討・決定については被保険者代表が参加する合議機関を設け、その同意を得て行う。また、合議機関の委員はインサイダーとなる業界構成員を除外するとともに、退任後も一定期間回転ドア型の業界再就職を制限する。
    3. 政府が日銀の金融緩和と一体でGPIFに強要した株式投資比率拡大方針を撤回する。
    4. 株式運用投資では国連が呼びかけた「社会責任投資」を推進する。
    5. 最低限の生活ができる年金給付制度の検討や納付負担の軽減のための施策を検討する。
  4. 年金制度について、国民的議論ができるよう、情報提供を強化する。とくに、若年層への制度の情報提供を強化する。

(3)医療および介護

【医療分野】
  1. 在宅医療の受け皿の拡充
    診療報酬の在宅医療への重点配分や総合診療医や訪問看護師の育成などの推進による、在宅医療の受け皿を拡充する。
【介護分野】
  1. 介護保険における軽度者支援のあり方について
    軽度者(要介護1・2)の方には認知症の方が多くいるため、軽度者(要介護1・2)に対する介護保険サービスの見直しは、財政的観点だけでなく、利用者の自立支援・在宅生活を支える観点から、サービスの低下を招かないよう慎重に検討を進める。
  2. 新しい地域支援事業の継続性のある事業実施
    「新しい地域支援事業」の実施にあたっては、利用者・地域住民がサービスを受ける権利が保障され、適正な事業単価が設定されるなど、継続性のある事業を実施する。
  3. 介護予防の充実
    2017年4月から全国1579の介護保険者で始まる新地域支援事業のうち、新総合事業の事業費上限に関して、制限を緩和し、自治体独自の財源補填を可能とする。
  4. 介護事業労働者の処遇改善
    「介護離職ゼロ」を実現する前提として「介護職員離職ゼロ」になるよう、さらなる処遇改善を実施する。
  5. 介護保険制度の見直しについて
    介護保険制度の見直しにあたっては、サービス内容の低下を招くことのないよう、利用者本位の見直しを行う。

8.くらしの安全・安心の確保

(1)食品の安全性確保および表示問題

  1. 食品表示法について国民への周知を図る。
  2. 加工食品の原料原産地表示制度については、機械的で拙速な一律義務化ではなく、消費者にとって誤認がなく分かりやすい表示、事業者が実行可能で行政機関が執行可能である制度となるよう、慎重に検討をすすめること。
  3. ヒトおよび食用動物における抗菌性物質の慎重使用と使用の削減に向けた中長期計画(薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン)を着実に実行する。
  4. 食品衛生管理の国際標準であるHACCP(ハサップ)の導入を食品関連事業者に義務付けるロードマップの作成及び関係者への理解を促進させる。

(2)防災や環境に配慮した住宅整備促進等の住宅政策の改善

  1. 特例措置制度等の恒久化と要件緩和
     良質で低廉な住宅の安定供給や流通促進、国民の住宅取得支援をはかるため、下記制度の恒久化や軽減措置の導入等を行う。

    1. 住宅ローン控除制度の恒久化ならびに床面積要件の引き下げ
      住宅ローンを利用して住宅を取得または増改築等の場合、一定の要件を満たせば住宅借入金等特別控除が適用され、その取得等に係わる住宅ローン等の年末残高から計算した金額が所得税額から控除することができるが、本住宅ローン控除制度は特例措置であり、制度の恒久化をはかる。
      さらに、床面積が50㎡以上でなければ控除を受けることができないため、要件の引き下げをはかる。
    2. 住宅取得支援、良質な住宅供給をはかる措置の恒久化
      ア)新築住宅に係わる固定資産税の軽減、イ)居住財産の譲渡に係わる特例、ウ)不動産取得税に係わる特例、エ)認定優良住宅を新築した場合の特例等について特例措置の延長から、措置の恒久化をはかる。
  2. 補助金制度の拡充・行政窓口の一元化
     東日本大震災を機に安全で震災に強い安心住宅や省エネルギー住宅がクローズアップされ、高いレベルでの省エネ基準は義務化の動きもある。すでに国による補助金制度はあるが、さらに、a)高耐震・高耐久住宅、b)省エネ対応住宅、c)耐震・バリアフリー・省エネリフォーム、d)液状化地盤改良工事等への国の補助金制度の拡充をはかる。
     また、対応する省庁が国土交通省、環境省など複数存在し補助制度を複雑化しているので、行政窓口の一元化をはかる。
  3. 自然災害の復旧に際しての施策の充実
     甚大な自然災害の復旧に際しては、地域の実情等を十分に勘案した施策をはかる。とりわけ過疎地域等は都市部とは異なり、土地売却が困難である事に鑑み、国・地方自治体による買い上げや公的住宅の新設を行うとともに、生活援助一時金支給等を含めた制度の確立をめざす。当面、当該地域の自治体、地域代表者をメンバーに加えた有識者検討会を政府として設立し、具体的な施策を検討する。
  4. 悪質リフォーム対策
     リフォーム工事業は近年様々な分野からの進出もあり、その競争が激化している。中には高齢者等をねらった悪質な事業者も未だに存在している。消費者を保護するための対策に早急に取り組む。
     また、新築住宅に義務化されている瑕疵担保責任の適用を一定規模以上(請負金額300万円以上等)のリフォームにも適用する制度の創設をはかる。

(3)環境およびエネルギー政策について

  1. エネルギー政策基本法の改正
     現在のエネルギー政策基本法では、「安定供給の確保」、「環境への適合」、「市場原理の活用」の3つを基本視点として定めている。今後は、この3つの視点に基づく取り組みを推進していくことに加えて、「安全の確保」と「国民の参加」を基本視点に盛り込む。
  2. 中長期的な日本のエネルギー政策を展望し、以下の課題に取り組む
    1. 原子力発電への依存を段階的に低減し、最終的には原子力エネルギーに依存しない社会をめざす。
    2. 省エネルギー(節電)による使用電力量の大幅削減に向けた施策を推進する。
      あわせて事業者の省エネルギーを更に進めるための支援制度の充実を図る。
    3. 効果的な省エネルギー技術の開発と普及のための施策を行う。
    4. 地域にある多様な資源を生かした再生可能エネルギー普及の取り組みを拡大する。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)は維持・発展させる。
    5. 電力・ガスなどエネルギーシステム改革における消費者参画を広げ、消費者・需要家が多様な選択肢から選択できるよう推進していく。
    6. 次世代送電網(スマートグリッド)のような革新的技術の構築を積極的に推進していく。
  3. 3Rの推進に関する施策を強化する
     小売事業者が行うリサイクル活動について、より積極的に位置づけ、その促進のために関連法令(廃棄物処理法等)との整合性を図る。
  4. 温室効果ガスの削減
     政府は温室効果ガス排出量の目標設定にあたり、第四次環境基本計画(2012年4月27日閣議決定)にて長期的目標として設定している「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減」への道筋を明らかにしつつ、「2030年度に2013 年度比26.0%減」とする中期目標の達成に向け、各種施策を実施する。

(4)消費税増税への対応

  1. 2019年10月に予定されている消費税増税(8%から10%)の実施については、その時期の経済情勢や景気の状況を踏まえながら慎重に判断する。前提として経済・雇用情勢の改善をはじめ、雇用・格差・貧困対策の充実・強化など、生活の底上げを可能とする諸環境の改善を図る。消費税増税を実施する場合には、国民が納得できる「逆進性対策」を講ずる。 なお、持続可能性のある社会保障の実現と財政再建に向けて、更なる税制改革の検討を進める。
  2. 医療・介護分野において、社会保険診療等の消費税は非課税とされてきたが、社会保険診療等を行うための医薬品等の仕入れには消費税(控除対象外消費税)がかかっている。2019年10月に予定されている消費税増税に伴い、控除対象外消費税の負担を軽減するための措置を講ずる。

(5)経済連携問題への労働者・消費者・市民の意見反映

 日本-EU間FTA/EPAなど経済連携問題は、労働者・消費者・市民の労働や生活にも密接に関わる問題であり、意見反映のしくみを設ける。

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