政策・制度

政策・制度 2016年度政策制度要請

総論

1.連帯経済を促進する協同組合の促進・支援

 政府による協同組合支援を強化し、協同組合憲章を定める等、協同組合全体を貫く協同組合政策の基本的な考え方と方針をよりいっそう明確にする。
 また、税制の適用において協同組合の独自性や社会的役割を考慮する。生協法改正など法制度面の改善を行うとともに、「協同労働の協同組合」法を速やかに制定する。

2.大規模災害等の被災者支援と復興・再生および今後の災害対策

 被災者への生活支援を進め、被災地における医療関係の支援を行うほか、住民主体による復興・再生の取り組みの制度化を進める。今後の災害対策については、各種審議会等での課題に消費者ニーズを反映させるとともに、民間事業者による支援物資備蓄等への財政支援を行う。

3.格差・貧困社会の是正、セーフティネットの強化

  1. 教育・人材育成での機会均等を図るため、給付型奨学金の創設をはじめ奨学金制度等の拡充・改善を進める。
  2. 「生活困窮者自立支援制度」において、就労支援に向けた体制強化を図るほか、任意事業の必須事業化、国庫補助率の引き上げ等の検討を進め、制度の充実を図る。
  3. 人間の尊厳が保障され、利用しやすい生活保護制度へ改善する。住宅扶助基準と冬季加算の引き下げについては撤回する。

4.消費者政策の充実強化

 消費者裁判手続き特例法の国民への周知をはじめ、地方消費者行政の充実・強化、消費者団体の公益的活動に対する支援、地域での消費者教育の推進に対する支援を進める。

5.中小企業勤労者の福祉格差の是正

 中小企業勤労者の福祉格差の是正に向けて、国・自治体・事業主の役割・責務等を明確化し、中小企業勤労者福祉サービスセンターの促進を図るための法制化を行う。

6.勤労者の生活設計・保障への支援

  1. 財形貯蓄制度の導入促進と融資制度の利用促進を図るために、実効性のある周知広報活動および支援を行う。また、非課税限度額の引き上げ等の税制面での改善を図る。
  2. 生命保険料控除制度や遺族の生活資金確保のための死亡共済金の相続税非課税限度額の拡充のほか、消費税の仕入税額の負担軽減措置を講じるなど、税制面での改善を図る。

7.安心・信頼できる社会保障の構築

 子どもの貧困問題への対策、子育て・教育における親の費用負担の軽減、年金制度、医療・介護分野の諸課題、社会保障教育等、世代を超えて安心・信頼できる社会保障制度を構築する。

8.くらしの安全・安心の確保

 食品の安全性確保と表示問題、防災や環境に配慮した住宅整備促進にむけた住宅政策はじめ、環境・エネルギー、税制等、くらしの安全・安心の確保へ向けた施策を推進する。

要求項目 <各論>

1.連帯経済を促進する協同組合の促進・支援

(1)国連が宣言した2012年「国際協同組合年」を経て、協同組合の社会的役割・価値、政策的位置を高めていくための施策について検討を進め、政府による協同組合支援を強化する。

(2)政府による協同組合支援の強化

  1. 協同組合に関する政府支援の明確化
     協同組合憲章を定める等、協同組合全体を貫く協同組合政策の基本的な考え方と方針をよりいっそう明確にする。
  2. 政府による協同組合への持続的支援
     2012国際協同組合年の取り組みを踏まえて、「自主・自立」、「民主的運営」を基本に組合員の出資・運営参加により事業を実施する協同組合が社会の中で認知され、持続的に役割を発揮できるよう政府による支援を継続的に行う(政府広報、統一的な統計調査、学校教育における協同組合に関する授業の強化など)。そのため、政府において、協同組合政策に関する調整窓口を設置する。

(3)税制の適用において、協同組合の独自性や社会的役割を考慮する。

  1. 非営利の相互扶助組織としての協同組合の社会的・公共的な役割と持続可能な経営基盤の確立の重要性に鑑み、協同組合に配慮した措置を講ずる。
  2. 法人税課税の見直しにおいて、普通法人の法人税率の引き下げを行う場合、協同組合の法人税率についても連動した引き下げを行うなど、協同組合の性質、歴史的経緯等を勘案した措置を講じる。

(4)生協法改正

 急速に進む社会の構造的な変化や今日の経済情勢、災害などから生まれるくらしの厳しさや将来への不安が増す中、消費者・市民からの生協の役割発揮への期待に応えることを可能とする法制度面の改善を求める。

(5)地域における就労創出と住民自治を促進する「協同労働の協同組合」の法整備

 国が推進している「地方創生」の「総合戦略」や「一億総活躍社会」の「ニッポン一億総活躍プラン」等の計画に、多様な人びとの活躍の場づくりや地域における就労の自発的創出を促進する「協同労働の協同組合法」を位置付け、速やかに制定する。また、社会的に排除された人々の就労を通じた社会参加を促進する担い手として、「協同労働の協同組合」や社会的企業の果たす役割を重視し、その育成・支援を充実させるとともに、コミュニティにおける就労と事業化を促進するための政策を推進する。

(6)連帯経済を支える非営利・協同組織と自治体・行政との協働の関係を充実させる。

 連帯経済を促進する上で、自治体・行政と非営利・協同組織との関係を、単なるコスト削減や下請け型の業務委託ではなく、目的や基準(公正労働基準)を明確にした上での対等なパートナーシップに基づく協働の関係へと再編成する。そのため、地域福祉の向上と住民自治の促進を図る目的で、指定管理者制度などの公共サービスを支え充実させるための制度・政策を総合的に見直し、充実させる。
 特に、指定管理者制度においては①フルコスト・リカバリーの考え方を基に一般管理費を含む間接経費全体を人たるに値する人件費(公正労働基準)を見込んだ積算とする、②一定額の利益、繰越金(あるいは積立金)を認めて「精算」項目を廃止する、③指定管理料の適正化、④印紙税や消費税の非課税扱いの徹底、⑤会計処理と監査の改善、⑥制度の趣旨に相応しい科目の創設、以上を図る。

2.大規模災害等の被災者支援と復興・再生および今後の災害対策

(1)熊本地震に関する対応

  1. 被災地・被災者ごとのニーズを集約し施策に反映させるとともに、きめ細かな情報収集・提供や総合相談の体制を整備する。自治体と被災者生活支援に関するNPOや民間団体との連携が図れるよう協力体制の整備を進める。
  2. 住居に困窮している方の住まいの確保や、エコノミークラス症候群の防止策をはじめ、必要な支援を行うとともに、公的住宅等の提供を進める。
  3. 被災者生活再建支援制度の緊急支援金の申請方法等について被災者への周知を行う。
  4. 障がい者、高齢者等の災害弱者への避難先・物資・情報の提供を、十分な配慮をもって進めるとともに、心理ケア等、被災者に寄り添った対応を進める。

(2)東日本大震災等の被災者への生活支援

  1. 地域ごとに被災者の生活、住居、就労、医療・介護・福祉等に関するきめ細かな情報提供や総合相談の体制を整備する。
  2. 被災者生活再建支援の全体像の進捗確認を進め、遅滞が生じている場合には克服をはかる方策を明示し必要な措置をはかる。
  3. 被災者生活再建支援制度の拡充検討、子ども・被災者支援法に基づく基本方針の実施など、原発事故被害者も含む被災者の支援を進める。
  4. 原子力災害による除染・道路の整備・防波堤改修に伴う工事車両の増大及び中間貯蔵施設への輸送車両の通行に係る交通安全対策費用を増額する。(歩道と車道の区別、作業出入口ガードマン配置)
  5. 第六次福島県医療計画で策定された医師・看護師・介護福祉士等の人材確保目標の達成に向け、「医療介護総合確保基金」を有効活用し、人材確保に重点を置いた予算編成を行うとともに、中小の医療機関にも実益が伴うような政策を策定する。
  6. 原子力災害から子どもを守るため、学校給食の安全・安心の確保のため、給食食材の放射性物質検査を徹底するための予算措置を継続する。
  7. 東日本大震災によって経済的に困窮している家庭の子どもたちの就学・修学を保障するため、引き続き、2016年度以降も全額国費で支援する「被災児童生徒就学支援等事業」を継続する。
  8. 二重ローン等の住宅等の既存債務問題について、政府方針を受けたガイドラインによる対応も進められているが、被災者の生活再建を支援する観点から、国による一層の施策の充実を図る。
  9. 仮設住宅入居者の災害公営住宅(復興住宅)等への移転に際しては、孤立化防止の観点から既存コミュニティの維持等、入居者の意向に沿った移転を進める。
  10. 東日本大震災特定被災区域等における医療費窓口負担、介護利用料免除措置を延長する。

(3)住民主体による復興・再生の取り組みの制度化

 被災地・被災者の「生活」の確保・安定に最大限の努力を費やすと共に、東日本大震災からの復興・再生を住民主体による取り組みと位置づけ、被災地・被災者自身の自主的・自発的な復興・再生の取り組みを支援する制度の創設を検討する。

  1. 復興・再生を従来型の行政主導・行政本位にせず、市民・地域の力を集めた取り組みにするための、組織的・政策的な位置づけを国の方針として明確化する。具体的には、地域の民間組織や非営利組織等も交えた復興・再生のためのネットワーク組織の結成を促進し、官民一体となった取り組みを活発化させ、これを国として支援する。
  2. 東北の被災地・被災者の仕事の確保・創出について、地域の産業創出や従事する就労分野の変更を制度的に支える研修・訓練制度と、公的に就労を保障する制度を組み合わせた、「公的訓練・就労事業制度」(仮称)を新たに創設する。

(4)今後の災害対策

  1. 政府の各種審議会等における課題へ消費者ニーズを反映する
    将来起こりうる大規模災害に備え、今後の災害対策に必要な被害想定、燃料確保や物流網の維持確保等の課題に対し、消費者ニーズを反映するため、各種審議会等に、消費者団体等の意見を反映させる。
  2. 民間事業者による支援物資備蓄および倉庫確保等への財政支援を行う
    将来起こりうる大規模災害に備え、民間事業者が実施する被災地支援物資のための食料品等の在庫やそれらを保管する倉庫確保等に関わる費用について財政支援等を検討する。
  3. 災害時の災害対応拠点となる自治体庁舎・公共施設・医療施設等の耐震化を徹底する。
  4. 学校教育における防災教育の充実を図り、避難対策等を徹底する。
  5. 災害に便乗した悪質商法・詐欺・空き巣等の発生防止に努め、予防啓発を徹底する。

3.格差・貧困社会の是正、セーフティネットの強化

子ども、若者、女性、高齢者など、あらゆる層に拡大する格差・貧困の解消をめざす。

(1)教育・人材育成での機会均等 ~ 奨学金制度等の拡充・改善 ~

  1. 国の給付型奨学金制度を創設(大学・専門学校等)・拡充(高校)する。
  2. 貸与奨学金は全面的に無利子とするとともに延滞金は廃止する。廃止までの間の返済では、元本返済が後回しとなる現行の充当順位は「延滞金→利息→元本」から「元本→利息→延滞金」に変更する。また、2014年4月実施の延滞金賦課率5%を遡及適用する。
  3. 所得連動型返済制度を創設する。制度設計にあたっては、所得が一定額未満の者には返済を求めない閾値を設定することや、返済開始から一定期間経過した後は残額を免除するなど、利用者負担の少ない適切な制度とする。
  4. 個人保証については廃止する。また、機関保証を利用する場合の保証料を引き下げる。
  5. 奨学金を借りる際の制度の丁寧な説明や、返済が困難になった場合の相談方法等について、学校現場での進路指導や大学学生課等を通じて周知するとともに、相談に応じられる体制を構築する。
  6. 高騰した高等教育の学費の引き下げや授業料減免の拡充など、家計や学生生活の負担を軽減するための政策を実行する。
  7. 子どもの貧困対策大綱の見直し(5年後)を待たずに、具体的な貧困の削減目標を定め、当事者参加のもとに実効的な施策の立案と実行に着手する。また、各自治体における子どもの貧困対策計画策定を促進する
  8. 経済的理由から法曹になることを断念することがないよう、法曹養成制度全体の見直しを行うとともに、司法修習生に対する給費制の復活を含む経済的支援を具体化させる。

(2)「生活困窮者自立支援制度」の充実等 ~ 就労支援に向けた体制強化

  1. 生活困窮者自立支援制度の施行を受けて
    1. 就労支援を促進するため、支援員の確保や体制の強化をはかるとともに、福祉部局と雇用部局との連携や、就労の受け皿となる協同組合、NPO、企業への支援を進める。
    2. 自治体の広域連携を促進し、任意事業の実施を高める。
    3. 支援対象者は、経済的困窮者に限定せず、アウトリーチも含め可能な限り社会的孤立への対応をはかる。
    4. 生活保護が必要な方は生活保護制度につなぐべきであり、福祉事務所においても相談者を遠ざける恣意的な運用とならないよう指導を徹底する。
    5. 貧困ビジネスの参入につながらないよう、就労訓練事業の認定機関の体制・監督機能を強化するとともに、相談支援機関による定期的な訓練状況の確認を徹底する。
    6. 相談・就労支援に従事する人材の養成を計画的に進めるとともに、継続的な雇用と処遇の改善をはかる。
    7. 既存事業との統合にあたって、ノウハウの継承が適切に行われているか、新たな制度の狭間が生じていないか、等の視点から検証を行い、必要な対策を講じる。
    8. 地方創生や雇用創出事業、地域包括ケア等とも連携し、地域づくりと一体的に進める。
  2. 2017年度の予算編成にあたっては、生活保護費等の削減によることなく、生活困窮者支援制度が本来の趣旨にそって確実に発展できるだけの充分な予算を確保する。支援の効果については、経済的自立(就労)のみならず、日常生活や社会生活における自立も含めて支援の段階に応じて適切に評価するとともに、支援を行わず放置した場合の社会的コストについて考慮する。
  3. 次期制度改定に向けて、以下の政策課題について早急に検討を進める。
    1. 「就労準備支援」「一時生活支援」「家計相談支援」「学習支援」などの任意事業を必須事業とし、国庫補助の割合を引き上げる。
    2. 求職者支援制度等の関連施策との整合性・連続性をはかる観点から、就労支援期間の生活支援給付を行う。
    3. 就労訓練事業や家計再建支援事業の受け皿となる協同組合、協同労働、NPO、社会的企業などが育つ仕組みや支援(補助、優先発注等)のスキームを構築する。
  4. 生活困窮者支援制度の検討・実施・運営を通じて、生活困窮者・貧困を生み出す社会的背景や政策課題をも明らかにし、生活困窮者を生み出さないための政策・制度の改善にフィードバックしていく。
  5. フードバンクを福祉分野と災害時の食糧支援システムとして積極的に位置づけ、省庁横断的な施策を推進する。自治体や福祉事務所、ハローワーク、母子支援団体や難民支援団体、DV被害当事者支援団体、社会福祉協議会、病院、宗教施設など、多様化する生活困窮者支援窓口でのフードバンク食品の提供や、パントリー設備の整備、食品ロス削減を通じた環境負荷の低減など、福祉・環境政策とも連携した施策を推進する。
  6. 「生活困窮者自立支援制度」における社会的事業者の活用と雇用・就労創出策の充実
    1. 「生活困窮者自立支援制度」等で実施される「就労準備支援事業」「就労訓練事業(中間的就労)」等において、「社会的企業」や「協同労働の協同組合」を積極的に位置づけ活用し、地域における雇用・就労創出や社会的居場所の推進と連動させる政策を推進する。特に「就労訓練事業」においては、地方自治体による優先発注など公共調達の充実を図るために特段の支援策を講じる。
    2. 就労困難な若者や女性、高齢者、障害者など社会的困難にある人々を対象に、地域における就労創出による社会参加と居場所づくりを目的に、社会的訓練などの公的職業訓練と公的に就労を保障する制度を組み合わせた「公的訓練・就労事業制度」を新たに創設する。
    3. 「求職者支援訓練」においても、「生活困窮者自立支援制度」との積極的な連携を図ると共に、制度の抜本的見直し(①求職を一律の目的としない、仕事おこしや分野別の縦割りを超えたカリキュラムの設計と弾力的運用、②就労に困難を抱える若者や高齢者、障害者などに受講の枠を広げるためにも雇用保険財源から一般財源への移行等)を行い、公的職業訓練の一層の充実と(公共的社会サービスを担う地域の非営利組織、協同組合、中小企業などのコミュニティ事業者が実施主体となれるような)制度の弾力的運用、訓練メニューの創造的開発などを図る。
  7. 労働者保護ルールの堅持
     格差・貧困の拡大につながる低賃金・不安定雇用・長時間労働等の問題を深刻化させ、労働者保護ルールの後退を招く、労働分野の規制緩和は行わない。

(3)人間の尊厳が保障され、利用しやすい生活保護制度への改善

  1. 生活保護基準の引き下げは低所得者に関わる多くの制度に影響を及ぼし負のスパイラルや貧困の連鎖を助長することが懸念されるため、基準引き下げを見直す。
    1. 特に住宅扶助基準と冬季加算の引き下げについては、生活の基盤としての住環境の確保や命綱としての機能を大きく低下させるものであり、撤回を求める。
    2. 生活扶助基準の引き下げを見直し、生存権を確保する観点から基準のあり方をあらためて検討する。
    3. 今後、生活保護基準のあり方の検討にあたっては、専門家による検証に加え、当事者が参加し意見反映する仕組みをつくり、国民的合意の形成に努める。
  2. 改正生活保護法の運用にあたっては, 生活保護の申請抑制や扶養義務の強化を招くことがないよう、現場に徹底する。生活保護制度を広く市民に知らせ、申請書やパンフレットを福祉事務所や行政の各相談窓口に設置するなど、誰もが利用しやすい制度にする。
  3. 申請等に関する苦情や相談、不服申し立て(審査請求)を受付け、調査権と行政への勧告権を持つ「第三者機関」を設置する。
  4. 生活保護制度は「最後の」セ-フティネットであり、国の責任において確実な財源保障を行う。このため、生活保護費の全額国庫負担も視野に見直しをはかるとともに、当面、生活保護申請が集中している自治体への財政負担を軽減する仕組みを検討する。
  5. 新たな生活困窮者支援など業務拡大・高度化等を踏まえ、地方交付税の福祉事務所費の大幅な改善を図り、ケースワーカーを増員するとともに、職員の専門性を高める。
  6. 資産を使い果たさなければ保護しないために自立をかえって困難にしているという観点から、最低生活費3ヶ月分程度までの現金・預貯金は認めるなど資産要件を緩和する。
  7. いわゆる水際作戦を防ぎ、生活保護の漏給防止を図るため、「123号通知」(1981(昭和56)年11月17日厚生省社会局保護課長・監査指導課長通知第123号「生活保護の適正実施の推進について」)は廃止する

(4)子どもの貧困・虐待対策

  1. 児童手当や児童扶養手当などの公的手当について、低所得世帯の収入を不安定化させる現行の数カ月おきの「まとめ支給」を改善し、家計を安定させるために毎月もしくは隔月の支給とする。
  2. 児童虐待相談処理件数の急増に対応し、児童相談所の設置について児童福祉法に定める都道府県と政令指定市への義務づけに加え、中核市および東京23区についても設置を義務づける方向で法改正を行う。また、児童福祉司、相談員、児童心理司等の人材育成・確保を早急に進めることを通じて、予防的な取り組みを強化し、児童虐待を防止する。③ 児童虐待防止法の周知をはかる。特に、国民の通告義務(児童福祉法第 25 条)について、啓発・広報の徹底をはかる。
  3. 児童虐待防止法の周知をはかる。特に、国民の通告義務(児童福祉法第 25 条)について、啓発・広報の徹底をはかる。
  4. 子どもの貧困対策大綱の見直しを待たずに、数値目標を含む具体的な貧困の削減目標を定め、当事者参加のもとに実効的な施策の立案と実行に着手する。また、各自治体における子どもの貧困対策計画策定にむけ、実態把握のための調査を実施する。

(5)自死・多重債務対策等

  1. 自死率がいまだ高水準にあることに鑑み、改正自殺対策基本法に基づく施策(特に地域)の着実な実施と自殺対策官民連携協働会議の継続的な開催など必要な施策を推進する。
  2. 多重債務者対策本部が貸金業者による脱法行為を厳しく監視できるよう、都道府県・多重債務対策協議会における実態の検証・分析の強化と多重債務者対策本部との関係で有機的な連携をはかる。ヤミ金撲滅に向けて引き続き一層の取り組み強化をはかる。
  3. 生活困窮者や多重債務者の支援を目的に生活再建支援事業(相談貸付事業等)を行う民間非営利組織が活用できる公的信用保証制度等のしくみを検討する。
  4. カジノ解禁を柱とする、いわゆるIR推進法案(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案)については、犯罪防止・治安維持、青少年の健全育成、依存症防止等の観点からの検討・研究・制度上の措置が必要とされていると指摘されており、これらの諸課題への対策が全く施されていない中での制定は行わない。

(6)セーフティネットの充実等

  1. 公的機関が民間企業などへ委託・発注する全ての事業において、適正な労働条件とサービスの質を確保するため、低価格入札に拘束された発注、不当な人件費や人員の削減、不安定雇用、下請け業者へのしわ寄せを排除する公契約基本法や条例を制定する。
  2. 「居住の権利」を基本的人権と位置づけ、分立する住宅保障の仕組みを統合し、住宅政策(国土交通省)と生活困窮者支援政策(厚生労働省)との一体的な運用を可能とする仕組みに再編成する。
  3. 劣悪な居住環境や不要なサービスを強要し、高額な利用料を生活保護費からピンハネするなど様々な問題を引き起こしている「無料低額宿泊所」に対する規制を強化する。
  4. 追い出し屋被害を根絶するため、「追い出し屋規制法」(賃借人居住安定化法案)を国会に再提出し、速やかに成立させる。また、滞納家賃のデータベース化に対しては、収入が不安定な人たちが賃貸住宅市場から排除されないよう歯止めをかける。
  5. 高齢低所得単身女性の課題に対し、体系的な施策を検討・実施する。
  6. 低所得者・経済的弱者のための「福祉灯油」制度の実施・拡充へ向け、実施自治体への財政支援の拡充を含む対策を講じる。
  7. 「低所得高齢者臨時給付金」は、制度趣旨・法的根拠があいまいであることから実施しない。
  8. 交通政策基本法の趣旨を踏まえ、高齢者や障害者など交通弱者の生活に必要な移動手段確保を社会保障の一環に位置付け、地域公共交通を充実させる。

4.消費者政策の充実強化

(1)消費者裁判手続き特例法の国民への周知

 消費者庁は、地方消費者行政活性化交付金を活用し、「消費者基本計画(2015~2019年度)」に基づいて、地方消費者行政の充実・強化をはかる。また、消費者庁は、消費生活相談員の雇い止め問題への対策の実施にも、引き続き取り組む。

(2)地方消費者行政の充実・強化

 消費者庁は、地方消費者行政活性化交付金を活用し、「消費者基本計画(2015~2019年度)」に基づいて、地方消費者行政の充実・強化をはかる。また、消費者庁は、消費生活相談員の雇い止め問題への対策の実施にも、引き続き取り組む。

(3)消費者団体の公益的活動に対する支援

 消費者庁は、消費者団体の公益的活動に対する支援を行う。特に、集団的消費者被害回復に係る訴訟制度を担う特定適格消費者団体への財政面・情報面の支援を行い、新たな訴訟制度の実効性を確保する。
 また、消費者庁は、「地方消費者行政強化作戦」に基づき、適格消費者団体の不在地域で、団体の設立を促進する。

(4)地域での消費者教育の推進に対する支援

 消費者教育推進会議のとりまとめ(2015年2月)を踏まえ、「地方消費者行政活性化交付金」も活用して、国は地域での取り組みを支援し、消費者市民社会の形成を進める。

(5)その他

  1. 物価の動向を引き続き監視するとともに、電気料金・都市ガス料金の自由化により、すでに自由料金であるLPガス・灯油・ガソリン価格を含めて家庭用エネルギー料金がすべて自由化される状況を踏まえ、消費者の権利を確保するための新たな政策を検討する。
  2. 石油製品(ガソリン・灯油)・LPガスについては、公共料金に準じ、価格の決定過程の透明性、消費者参画の機会および価格の適正性を保つ観点からの施策を検討、実施する。

5.中小企業勤労者の福祉格差の是正

  1. 中小企業勤労者の福祉格差の是正に向けて、国・自治体・事業主の役割・責務等の明確化、ワーク・ライフ・バランスの推進、財政面の充実、関連施策との関係整備等をはかる観点から、法制化を行う。
  2. 中小企業勤労者福祉サービスセンターの自立と再生に向けて、広域化を推進するとともに、勤労者の暮らしと福祉に関する総合福祉センターをも展望し、魅力あるサービス内容への抜本改革を進める。
    ① 全ての会員がいつでもサービスを気軽に利用できる仕組みを確立する。
    ② 既存の企業内福利厚生と重複せずに、従業員ニーズに合わせてサービス・会費が選択できる複数会員制度の導入を進める。
    ③ 地域の福祉団体やNPO等とのネットワークにより、個別企業では提供困難な子育て・介護支援、生活福祉相談、生涯生活設計支援、共済・生活保障、自己啓発、健康増進、生きがいづくりなど、ワーク・ライフ・バランスの支援や勤労者の多様なニーズに応えるサービスを提供する。
    ④ 大企業や公務部門からの福利厚生事業の受託化を積極的に進め、地域の全勤労者を対象とした事業展開をはかる。特に、非典型雇用(有期・パート・派遣等)労働者や退職者を事業の適用対象とし、必要な財政支援を行う。
    ⑤ 中小企業勤労者福祉サービスセンター未設置地域における設置促進の取り組みへの支援を行う。
  3. 中小企業勤労者福祉サービスセンターの再編(広域化と改革)を進めるにあたって、都道府県が積極的な役割を果たすよう、国の支援・指導を強化するとともに、裏付けとなる財源確保をはかる。また、地域における勤労者のライフサポート事業の促進やサービスセンターの統合・事務の集中化を支援するための基金の造成など、国庫補助廃止に変わる新たなスキームでの国の支援策を早急に検討・実施する。また、全国レベルでのサービスセンターへの支援体制の構築や共同化推進事業等に対する予算措置を行う。(中小企業勤労者福祉事業対策費、全福センターへの補助)
  4. 中小企業退職金共済制度(中退共)への加入促進をはかるとともに、以下の制度改善を行う。
    ① 一般の中退共では、「掛金納付期間が1年未満は支給なし(2年未満は掛金納付額を下回る)」となっているが、企業の倒産・廃業の場合には掛金相当額が受給できるよう措置を講ずる。また、特定業種(建設業、清酒製造業、林業)退職金共済制度においては掛金納付期間が2年未満は支給されないことから、一般の中退共と同様に「1年未満」となるよう措置を講ずる。

6.勤労者の生活設計・保障への支援

(1)財形制度の改善

【普及促進に関する項目】
  1. 財形貯蓄制度の導入促進と融資制度の利用促進を図るため、この間の特例措置などについては評価するが、引続き実効性のある周知広報活動および支援を行うこと。特に制度やそのメリットを知らない事業主や勤労者が多いことから、分かりやすいホームページやポスターを作成するなど、周知・普及に向けた取組みを強化すること。
【税制改正に関する項目】
  1. 非正規雇用者に対して、財形制度が利用しやすいように対策を講ずる。
  2. 財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄の非課税限度額を1,000万円に引き上げる。
  3. 急速な高齢化の進行、60歳以降の雇用継続等、高齢者の雇用実態に合わせ、非課税財形(住宅・年金)契約時の年齢または期間制限(新規契約時・受取時)を緩和する。
    年金・住宅共通
    ・新規契約 55歳未満
    年金
    ・積立終了後の最大据置期間 5年
    ・受取開始年齢  60歳以降
    ・受取期間 20年以内
  4. 介護休業・休職期間は、積立中断期間には算入しない。
  5. バリアフリー改修促進税制、省エネ改修促進税制に合わせ、財形住宅貯蓄の増改築等における適格払出しのバリアフリー改修、省エネ改修に係る費用要件75万円超を30万円超にする。
  6. 勤務先の都合により離職した失業者に対して、非課税適用継続期間の延長と非課税財形の払出し・解約する際の適格払出しの要件を緩和する。
  7. 災害・疾病その他これに類するやむを得ない理由で税務署長の証明のある払出しの際の遡及課税としない措置を、財形年金貯蓄に加え財形住宅貯蓄も対象とし、かつ、払出し時の利子等も非課税とする。
  8. 介護に係る非課税財形の払出し時の利子等を非課税とし遡及課税しない扱いとする。

(2)共済制度に関する税制等の改善

  1. 現行の生命保険料控除制度(「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」)を、国民が安心して利用できるように、安定的に運営する。また、国民の自助努力支援のため、今後の社会保障制度改訂の動向などを踏まえて、制度拡充についても検討する。
  2. 遺族の生活資金確保のため、死亡共済金の相続税非課税限度額について、「現行限度額(「法定相続人数×500万円)」に、「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算する。
  3. 消費税等において、控除対象外の仕入税額負担を軽減するための見直しを行う。
    1. 課税売上割合に算入する共済掛金などの非課税売上に一定の率を乗じたものとすることで、控除対象外の仕入税額負担を軽減するための措置を講じる。
    2. また、完全支配関係にある子会社との取引に係る消費税について一定の割合を控除するなど、消費税負担の軽減をするための措置を講じる。
  4. 法人税課税の見直しにおいて、普通法人の法人税率の引き下げを行う場合、協同組合の法人税率についても連動した引き下げを行うなど、協同組合の性質、歴史的経緯等を勘案した措置を講じる。

7.安心・信頼できる社会保障の構築

(1)子育て・教育支援

  1. 安心・信頼できる社会保障の構築
  2. 仕事と子育てが両立できるワーク・ライフ・バランスの取り組みを推進する。
  3. 待機児童ゼロの実現をめざす施策を講ずる。

(2)年金制度

  1. マクロ経済スライドによる調整にあたっては名目下限方式を堅持する。また、基礎年金はマクロ経済スライドの対象外とする。
  2. 年金機能強化法の付則に基づき、短時間労働者の被用者保険の適用拡大について2019年を待たず2016年施行予定の5要件を前倒しで見直し、速やかにかつ抜本的に拡大する。必要に応じて「僅少労働年金」を参考にした制度を導入する。
  3. 年金受給者の選択権を前提に、基礎年金拠出期間の延長及び受給開始年齢の選択幅拡大を検討する。また、在職高齢年金については就労による労働参加率向上を促すようあり方を検討する。
  4. 年金税制について
    1. 年金課税に係る控除制度改訂に先だって、「公的年金等控除の最低保障額140万円」「老年者控除50万円」を速やかに復元する。
    2. 配偶者控除の検討にあたっては、年金生活世帯の増税・社会保険料負担増をもたらさない方策を講ずる。
  5. 公的年金積立金の管理・運用について
    1. 公的年金積立金については、専ら被保険者の利益のため運用する。
    2. 政府が日銀の金融緩和と一体でGPIFに強要した株式投資比率拡大方針を撤回する。
    3. 株式運用投資では国連が呼びかけた「社会責任投資」を推進する。
  6. 最低限の生活ができる年金給付制度の検討や納付負担の軽減のための施策を検討する。
  7. 元気な高齢者がインセンティブを持って働ける年金制度を検討する。
  8. 年金制度について、国民的議論ができるよう、情報提供を強化する。とくに、若年層への制度の情報提供を強化する。

(3)医療および介護

【医療分野】
  1. 地域医療構想における病床機能の再編について
    地域医療構想における病床機能の再編においては、都道府県知事の行き過ぎた強制力の発揮による病床削減をしないよう、地域の実情を充分に配慮した慎重な検討・実施を求める。
  2. 高齢者医療制度
    高齢者医療制度改革会議の最終とりまとめに基づき、後期高齢者医療制度に代わる新たな制度を作る。「70歳以上の高額療養費上限見直し」「75歳以上の医療費定率負担2割化」「所得に加え資産を算定基礎とした患者負担」を実施しない。
  3. 公的皆保険の堅持
    公的国民皆保険を堅持する。皆保険の崩壊につながる「混合診療」を拡大しない。皆保険を破壊し、医療費の増大を招く「医療の産業化」を排除する。
【介護分野】
  1. 介護保険における軽度者支援のあり方について
    介護保険制度の持続可能性の確保に関連して、軽度者(要介護1・2)への支援のあり方が議論されているが、軽度者の中には医療専門職のサービス提供が必要な人も存在することから、利用者の自立支援・在宅生活を支える観点からも検討するべきである。
  2. 新しい地域支援事業の継続性のある事業実施
    「新しい地域支援事業」の実施にあたっては、利用者・地域住民がサービスを受ける権利が保障され、適正な事業単価が設定されるなど、継続性のある事業実施を求める。
  3. 介護保険者の新総合事業・包括的支援事業への円滑な移行と充実
    全国1579の介護保険者が新総合事業・包括的支援事業に速やかに移行できるよう、好事例の発信など必要な措置を講ずる。また、自治体の独自性が十分発揮できるよう、新総合事業に係る費用の上限を緩和し、自治体独自の財源補填を可能とするよう求める。
  4. 高齢者の社会参加を図る介護保険制度の充実
    介護保険サービスを利用する若年性認知症の方によるボランティア活動に対する謝礼が、①当該謝礼が労働基準法第11条に規定する賃金に該当しないこと、②社会参加型のメニューを提供する介護サービス事業所において、介護サービスを利用する若年性認知症の方がボランティア活動を遂行するための見守りやフォローなどを行うこと、を条件に認められているが(※)、高齢者による一層の社会参加を図るためにも、上記対象者を要支援・要介護高齢者まで拡充を図る。
    ※「若年性認知症施策の推進について」(平成23年4月15日事務連絡、厚生労働省老健局高齢者支援課認知症・虐待防止推進室)
  5. 認知症高齢者に起因する損害に関する社会的損賠制度の検討
    認知症高齢者に起因する損害について、発生を防止する社会的な施策を整えるとともに、家族に過剰な賠償責任を負わせない方策を検討する。
  6. 介護事業労働者の処遇改善とその検証
    1. 従事者の処遇を改善するために介護報酬(処遇改善加算・サービス提供体制強化加算)を改善し、加算が確実に従事者に分配される方策を講ずる。このため、事業者ごとの人件費比率の公開を求めるとともに労働法令違反を一掃する。
    2. 「介護離職ゼロ」を実現する前提として「介護職員離職ゼロ」になる処遇改善を実施する。
  7. 【その他地域福祉分野】
    1. 多世代・多機能型福祉拠点の充実を図る地域福祉政策の充実
      東日本大震災の被災地(岩手県、宮城県、福島県)で2013年度に政策実施された「共生型福祉施設(地域共生拠点)」(註1)の設置を、「誰もが支え合う地域の構築に向けた福祉サービスの実現-新たな時代に対応した福祉の提供ビジョン-」(註2)に基づき、「多世代交流・多機能型福祉拠点」として全国に広げるための施策を講ずる。
      註1 年齢や障害の有無にかかわらず横断的な利用が可能で、身近な場所で地域住民の多様な課題・ニーズに対応するためにさまざまな機能を持ち、地域住民が参加し、地域に根ざした支え合いを行う拠点
      註2 平成27年9月17日厚生労働省「新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討プロジェクトチーム」報告書

8.くらしの安全・安心の確保

(1)食品の安全性確保および表示問題

  1. 栄養政策の充実並びに栄養成分表示の普及啓発
    1. 栄養摂取に関するデータの収集と分析を行う。
    2. 2015年4月に義務化された栄養成分表示について、消費者、事業者への普及・啓発を図る。
  2. ヒトおよび食用動物における抗菌性物質の慎重使用と使用の削減に向けた中長期計画を検討する。

(2)ヒトおよび食用動物における抗菌性物質の慎重使用と使用の削減に向けた中長期計画を検討する。

 良質で低廉な住宅の安定供給や流通促進、国民の住宅取得支援をはかるため、下記制度の恒久化や軽減措置の導入等を要請する。

  1. 住宅ローン控除制度等の恒久化と要件緩和
    1. 住宅ローン控除制度等の特例措置の恒久化
      住宅ローンを利用して住宅を取得、または改増築等の場合、住宅借入金等特別控除が一定の要件を満たせば適用され、その取得等に係わる住宅ローン等の年末残高から計算した金額が所得税額から控除することができる。住宅ローン減税をはじめとする住宅取得支援や良質な住宅供給をはかる特例措置について、制度の恒久化をはかる。
    2. 築年数要件の廃止ならびに床面積要件の引き下げ
      住宅ローン控除、登録免許税の特例、住宅取得資金等剰余制度等の築年数要件(20年または25年)を廃止し、1982年1月1日以降に新築されたものまたは耐震基準適合証明がなされたものを特例の適用対象とする。さらに、床面積要件(50㎡以上)も引き下げる。
  2. 補助金制度の拡充・行政窓口の一元化
    東日本大震災を機に安全で震災に強い安心住宅や省エネルギー住宅がクローズアップされ、高いレベルでの省エネ基準は義務化の動きもある。既に国による補助金制度はあるが、さらに①高耐震・高耐久住宅、②省エネ対応住宅、③耐震・バリアフリー・省エネリフォーム、④液状化地盤改良工事等への国の補助金制度の拡充をはかる。
    また、対応する省庁が国土交通省、環境省など複数存在し補助制度を複雑化しているので、行政窓口の一元化をはかる。
  3. 悪質リフォーム対策
    リフォーム工事業は近年様々な分野からの進出もあり、その競争が激化している。中には高齢者等をねらった悪質な事業者も未だに存在している。消費者を保護するための対策に早急に取り組む。また、新築住宅に義務化されている瑕疵担保責任の適用を一定規模以上(請負金額300万円以上等)のリフォームにも適用する制度の創設をはかる。

(3)環境およびエネルギー政策について

  1. エネルギー政策基本法の改正
    現在のエネルギー政策基本法では、「安定供給の確保」、「環境への適合」、「市場原理の活用」の3つを基本視点として定めている。今後は、この3つの視点に基づく取り組みを推進していくことに加えて、「安全の確保」と「国民の参加」を基本視点に盛り込む。
  2. 中長期的な日本のエネルギー政策を展望し、以下の課題に取り組む
    1. 原子力発電への依存を段階的に低減し、最終的には原子力エネルギーに依存しない社会をめざす。
    2. 省エネルギー(節電)による使用電力量の大幅削減に向けた施策を推進する。あわせて事業者の省エネルギーを更に進めるための支援制度の充実を図る。
    3. 効果的な省エネルギー技術の開発と普及のための施策を行う。
    4. 地域にある多様な資源を生かした再生可能エネルギー普及の取り組みを拡大する。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)は維持・発展させる。
    5. 電力・ガスなどエネルギーシステム改革における消費者参画を広げ、消費者・需要家が多様な選択肢から選択できるよう推進していく。
    6. 次世代送電網(スマートグリッド)のような革新的技術の構築を積極的に推進していく。
  3. 3Rの推進に関する施策を強化する
    小売事業者が行うリサイクル活動について、より積極的に位置づけ、その促進のために関連法令(廃棄物処理法等)との整合性を図る。
  4. 温室効果ガスの削減
    政府は温室効果ガス排出量の目標設定にあたり、第四次環境基本計画(2012年4月27日閣議決定)にて長期的目標として設定している「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減」への道筋を明らかにしつつ、各種施策を実施する。

(4)消費税増税への対応

  1. 2017年4月に予定されている消費税増税(8%から10%)の実施については、その時期の経済情勢や景気の状況を踏まえながら慎重に判断する。前提として経済・雇用情勢の改善をはじめ、雇用・格差・貧困対策の充実・強化など、生活の底上げを可能とする諸環境の改善を図る。消費税増税を実施する場合には、国民が納得できる「逆進性対策」を講ずる。
    なお、持続可能性のある社会保障の実現と財政再建に向けて、更なる税制改革の検討を進める。
  2. 医療・介護分野において、社会保険診療等の消費税は非課税とされてきたが、社会保険診療等を行うための医薬品等の仕入れには消費税(控除対象外消費税)がかかっている。2017年4月に予定されている消費税増税に伴い、控除対象外消費税の負担を軽減するための措置を講ずる。

(5)広域経済連携問題への労働者・消費者・市民の意見反映

 日本-EU間FTA/EPAなど広域経済連携協定は、労働者・消費者・市民の労働や生活にも密接に関わる問題であり、意見反映のしくみを設ける。

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