活動方針

2020~2021年度活動方針

はじめに(運動の基調)

 中央労福協は2019年の結成70周年を迎えるにあたり、「労福協の理念」と10年先を展望した「2030年ビジョン」を策定しました。
 新たな理念は、10年前の理念を継承しつつ労働者福祉運動の歴史も踏まえたものとし、「すべての働く人の幸せと豊かさをめざして、連帯・協同で安心・共生の福祉社会をつくります」を改めて確認しました。
 また、「2030年ビジョン」は、2020年ビジョンを継承しつつ、時代の変化も踏まえてより深化させました。2030年に向けて「貧困や社会的排除がなく、人と人とのつながりが大切にされ、平和で、安心して働きくらせる持続可能な社会」をめざし、労福協が進むべき方向性を4つのビジョンとして示しています。
 2020~2021年度の活動では、この「理念」と「2030年ビジョン」にもとづき、新たな社会を切り拓いていく次の10年の活動に向けて確実な一歩を踏み出します。


 わたしたちを取り巻く状況は「ビジョン」に示されている通りです。雇用の劣化、格差や貧困の広がり、貧困の連鎖、少子化、環境問題など様々な観点から社会の持続性の危機が深まっています。また、社会的な孤立や分断が進み、自己責任論が蔓延し、「助けて」といえない社会の空気が強まっています。こうした状況のなか、貧困に終止符をうち「誰ひとり取り残さない」包摂的で持続可能な社会をめざすSDGsの目標達成に向け、「連帯・協同」、「助け合い・支え合い」をどう社会に根付かせていくのか、労福協をはじめ労働組合、協同組合の真価が問われています。
 今日の日本は、仕事・住宅を失った時のセーフティネットが弱く、地域コミュニティ機能も低下しています。こうした社会の脆弱さが、相次ぐ自然災害からの復興や生活再建を困難にしています。2020年は阪神・淡路大震災から25年、2021年には東日本大震災から10年を迎えます。改めて復興支援への思いを共有するとともに、災害に強い社会のあり方をみんなで考え、セーフティネットを強化していく機会とすべきです。あわせて、私たち自らも、災害時のみならず日常的な助け合い・支え合いの重要性を、日々の活動を通じて地道に啓発、意識喚起していくことが重要です。


 私たちは「2030年ビジョン」に沿って、①安心して働きくらせる社会をめざして、②労働者福祉事業の促進と共助の輪の拡大、③支え合い、助け合う地域共生社会づくり、④人材の育成と財政基盤の確立――の4つを活動の柱とし、加盟団体や関係する諸団体との密接な連携のもとに2年間の活動を進めます。

Ⅰ.安心して働きくらせる社会をめざして

〔2030年ビジョン①〕

多様なセーフティネットで、働くことやくらしの安心を支えます。

1.社会保障制度の充実と所得再分配機能の強化をめざして

(1)社会保障制度の充実
 超少子・高齢、人口減少、不安定雇用労働者の増加、家族形態の変化に対応するため、社会保障制度の機能強化に向け早急な制度改革が求められています。
 改革を進めるにあたっては、国民の安心・信頼が確保される制度とするため、幅広い国民の声が反映され、結論を得るよう政策・制度要求を行っていきます。
(2)所得再分配機能の強化
 格差を是正し貧困のない社会をつくるためには、持続可能な社会保障制度財源の安定的確保が必要です。税による所得再分配機能の強化に向け、不公平税制の是正、法人税の引き上げ、所得税の累進課税の強化、資産課税の強化などについて、政策・制度要求を行います。また、消費税率引き上げによる国民生活への影響を検証し、必要に応じて低所得者対策を強化するよう政府に求めます。

2.貧困や社会的排除のない社会に向けて

(1)ディーセントワークの促進と公正なワークルールの確立
  • ① すべての働く人が安心して働き続けるためには、ディーセントワークの確立が不可欠です。そのため、最低賃金の引き上げ、長時間労働の規制強化、均等待遇など真の働き方改革を実現するよう政府に求めていきます。また、障がい者雇用を促進するため、働きやすい環境整備と法定雇用率の達成を求めていきます。 
     労働法違反への罰則強化と、あらゆる規模の企業に対して労働法制の周知と遵守の徹底をはかるよう、政策・制度要求を行っていきます。
  • ② 多様な雇用形態(請負、フリーランス等)で働く人たちのディーセントワークを確保するためのワークルールの確立を政府に求めていきます。
     また、すべての外国人労働者の人権が保障され、日本人と同等の賃金・労働条件が確保されるよう、政策・制度要求を行っています。
  • ③ あらゆるハラスメントを許さない職場・地域・社会づくりに取り組みます。
  • ④ 労働法の周知をはかるため、ワークルール検定協会との連携を進めます。
     また、複数の地方労福協が実施している高校・中学校への労働・消費者問題に関する出前講座など、教育活動の推進に取り組みます。
(2)人間の尊厳が保障される生活保護制度への改善
  • ① 2018年度から3年連続の生活扶助費引下げに対して、健康で文化的な生活水準を確保する観点から生活保護基準の検証方法の見直しを早急に行い、それまでの間は基準の引下げを凍結するよう求めます。また、生活保護基準の引下げが国民生活に与える影響を最小限にするよう、引き続き政府、自治体に要請を行います。
  • ② 生活保護制度の見直しにあたっては、利用抑制や扶養義務の強化、利用者への医療費負担強化や過度な生活・健康管理などを招かないよう対応します。
  • ③ 社会保障の脆弱さが生活保護制度に過度に負荷をかけている制度のあり方全般を見直すとともに、「生活保護法」から「生活保障法」への改正をめざし、人間の尊厳が確保され利用しやすい制度への改善に取り組みます。
  • ④ 日本では、 生活保護が必要な世帯のうち現に生活保護を利用している割合(捕捉率)は2割程度に過ぎません。支援が必要な時に適切に生活保護を利用できるよう、水際作戦の根絶や制度の周知広報の徹底を求める政策要求活動や、生活保護への誤解や偏見をなくす啓発活動に取り組みます。また、生活困窮者自立支援制度との連携を強化し、切れ目のない支援を行うよう働きかけます。
  • ⑤ その他、貧困の根絶と格差の是正に向けて、「生活底上げ会議」等を通じて、広範な運動とネットワークづくりや啓発活動、政策提言などに取り組みます。
(3)貧困の連鎖・子どもの貧困の解消
  • ① 2019年6月に成立した改正「子どもの貧困対策法」、2019年内に見直しが行われる予定の「子供の貧困対策大綱」について具体的な実施施策の検証を進めていきます。
  • ② 子どもの貧困は親・保護者の貧困に起因しており、特にひとり親世帯の相対的貧困率は5割を超えています。ひとり親世帯に対する支援を強化するよう求めます。
(4)多重債務対策の強化
  • ① 個人自己破産申立件数は依然として増加しており、ヤミ金被害についても増加傾向が見受けられます。また、インターネット上のショッピングやゲーム、ギャンブルなどへの依存症から多重債務に陥るケースも後を絶ちません。さらには、キャッシュレス化が進む中で、クレジット決済の過剰与信規制の緩和に向けた動きも検討されています。引き続き関係団体と連携し多重債務問題解決に向けた取り組みを進めていきます
  • ② 改正貸金業法の定める総量規制の対象外である銀行カードローンに起因する過剰融資については、各金融機関で貸付自粛に向けた自助努力が進んでいるものの、引き続き動向を注視し、労金や関係団体などとも連携した啓発活動を行います。必要に応じて、貸金業者が保証するカードローンを規制対象とするなどの法改正も含め関係団体と連携し対応をはかります
  • ③ 多重債務問題やギャンブル依存症の誘発が懸念されるカジノ問題については、誘致を表明する自治体に対し、指摘されている様々な懸念や課題について冷静に分析し判断するよう求めていきます。必要に応じて関係団体や地方労福協等と連携し、カジノを誘致させない運動に取り組みます。
(5)自殺のない社会づくり
  • ① 改正自殺対策基本法にもとづく施策について、特に地域における着実な実施と自殺対策官民連携協働会議の継続的な開催などを求めます。
  • ② 国内全体の自殺者数は大きく減少しているにも関わらず、10代の自殺者数は増加傾向にあり、死因の第1位が自殺という世界に類を見ない状況となっています。若年層の自殺防止に向け、関連団体と連携し、より詳しい実態把握、原因の解明、改善策などを求めます。
  • ③ 若年層の自殺防止へ向けた緊急的かつ効果的な対策として、国の委託事業等で実施されているSNS・メール等を活用した相談体制を広げるため、相談活動を実施している団体等への支援を強化するよう求めます。

3.学びと住まいのセーフティネット

(1)奨学金制度改善・教育費負担軽減の取り組み
 第2期「奨学金制度改善・教育費負担軽減」運動(2017年4月~)を継続し、1) 有利子から無利子へ、貸与から給付へ、2)無理のない返済制度への改善と負担軽減、3) 学費を含む教育費負担の軽減――を目標に、より広範な社会運動による政策実現をめざします。
 運動を進めるにあたっては、支援を受けられる人と受けられない人とで分断が生じないよう、中間層や奨学金返済者を含めて、みんなの負担軽減につながる課題に重点的に取り組みます。

  • ① 大学等修学支援法の施行に伴い、各大学が行っている既存の授業料減免措置が縮小・後退しないよう国の対応を求めます。また、新制度の運用上の実態、財源の使用状況等を点検し、問題点の改善を求めるとともに、将来的には対象者を拡大し高等教育の無償化をめざします。
  • ② 全体的な学費負担の軽減に向けて、国立大学法人運営費交付金や私学助成の拡充など、大学等の授業料等の引き下げにつながる施策の実現をめざして取り組みます。また、地方私立大学の公立化など大学再編の動向についても情報交換し、今後の対応等について議論を行います。
  • ③ 貸与奨学金の無利子化を加速し、将来的には返済中も含めて全面的な無利子化(利子補給)をめざして取り組みます。
  • ④ 国会の附帯決議を踏まえ、奨学金返済者の負担軽減のための税制支援を行うよう働きかけ、実現をめざします。
  • ⑤ 貸与型奨学金制度の改善に向けて、返済猶予期限切れへの対応、延滞金賦課率の引き下げ、保証制度のあり方の見直し、所得連動返還型奨学金制度の改善と適用対象の拡大などに取り組みます。
  • ⑥ 博士課程進学者が減少し日本の研究力低下の一因となっていることから、大学院生に対する給付型奨学金制度の創設や授業料減免の拡充に取り組みます。
  • ⑦ これまでの運動で培った様々な団体との関係を活かしつつ、地域において奨学金制度の改善や教育費負担の軽減のためのネットワークづくりを進めます。
  • ⑧ 取り組みを推進するにあたっては、引き続き奨学金問題対策委員会において、運動の企画や労福協関係団体の取り組みの調整を行います。
  • ⑨ 労働者自主福祉の取り組みとして、各地域において、行政・法律家等の専門家と連携し適切な役割分担のもとに奨学金に関する相談に対応できる体制を整備し、定着をはかります。さらに、労金と連携し、奨学金の返済に困難を抱えている方のニーズに応じた奨学金借換を推進します。
  • ⑩ 学生・教員等への啓発活動や企業内の福利厚生の一環としての奨学金返済者への支援策など、奨学金問題対策委員会での検討や事例共有を行うとともに、関係団体と連携して具体化したものから取り組みます。
(2)住宅セーフティネットの拡充
  • ① 「住まいは人権」との観点から、福祉・住宅政策の連携や住宅セーフティネットの再構築をめざします。このため、2017年10月からスタートした新たな住宅セーフティネット制度をさらに強化し、制度の周知徹底と登録住宅の拡大、家賃の低廉化につなげるための予算拡充や制度改善に取り組みます。また、住宅確保要配慮者に対する住宅の提供と家賃補助・住宅債務保証の拡充、賃貸住宅居住者への税制支援等を求めて制度改善に取り組みます。
  • ② 地域における居住支援協議会の設置、居住支援法人の指定や活動を促進するため、全国居住支援法人協議会と連携して取り組みます。
  • ③ 生活困窮者を食い物にする「貧困ビジネス」(追い出し屋、脱法ハウス、無料低額宿泊所による生活保護費のピンハネ等)の根絶、規制強化をめざします。
  • ④ 住宅セーフティネットの拡充に向けて、協同組合や労働者福祉事業団体としての関わりや可能な取り組みについての勉強会の開催など、関係団体との意見交換や問題意識の共有を進めます。

4.消費者運動との連携

(1)消費者被害の防止・救済の取り組み
  • ① オンラインプラットフォーム(注1)を介した取引が急速に拡大し、消費者が取引に参加することが容易である一方、個人情報の流出など様々な消費者被害が増加しています。消費者が安心して取引を利用することができるよう法規制等の施策を求めます。
  • ② 消費者被害の防止・救済に向けて、「NPO法人消費者スマイル基金」の活動が地域でも広がるよう、引き続き加盟団体への理解と協力を求めていきます。
  • ③ 企業や行政の不正をなくすため、公益通報者を企業・行政側から徹底して守る公益通報者保護法の速やかな抜本改正を求めます。
注1 インターネット上の取引の基盤環境またはそれを提供する事業者のこと。オンラインプラットフォームで提供されるサービスには、検索エンジン、ショッピングモール、オークション、フリーマーケット、アプリ市場、決済システム、SNS等がある。
(2)消費者行政の支援の強化
  • ① 地方消費者行政強化交付金の増額など地方消費者行政への支援策の強化を政府に求めます。あわせて、地方労福協の自治体要請等を通じて、自治体消費者行政の自主財源確保の拡充を求めます。
  • ② 消費者が全国どこに住んでいても質の高い相談が受けられる体制を確立するため、消費生活相談員の雇い止め問題の解消と確実な処遇改善を求めます。
(3)消費者教育、エシカル消費の促進
  • ① 消費生活協力員や消費者教育の担い手などの人材育成、学校教育における消費者教育の充実を求めていきます。
  • ② 一部の消費者による過剰な要求、暴言・暴力等の問題について、公共の利益および消費者・労働者双方の権利を守る観点から、消費者と事業者の良好かつ健全なコミュニケーションを促進するよう、関係団体等と連携して普及・啓発を進めていきます。
  • ③ 改正民法により成年年齢が2022年4月より20歳から18歳に引き下げられることに伴い、若者や子どもたちが消費者被害に遭わないために、事業団体や消費者団体と連携し教育活動の充実をはかっていきます。
  • ④ 持続可能な社会づくりに向けて、地域の活性化や雇用等を含む人や社会・環境に配慮した消費行動を促進していきます。

5.持続可能で、安心してくらせる社会に向けて

(1)大規模災害からの復興・再生と防災・減災の取り組み
  • ① 東日本大震災以降、この間各地で発生した大規模災害により、復興住宅や仮設住宅での生活を余儀なくされている人たちも未だ多くいます。また、想定外の被害や人手不足による復旧作業の遅れ、原発事故に起因する福島県固有の課題、高齢者の孤立死や心のケアの問題など、多くの課題が残されていることから、引き続き関係省庁に対して政策制度要求を行います。
  • ② 地球温暖化の影響等による台風の大型化や集中豪雨、突風等による被害が各地で頻発していることなど、また南海トラフ地震や首都直下型地震の発生も懸念されていることを踏まえ、大規模災害リスクへの対処に関する省庁および自治体要請を強めます。
  • ③ いざという時の備えや災害に強い住宅づくりなど生活防衛の観点と、災害リスクを最小限に止めるために、関係団体と連携し、啓発活動、自然災害共済への加入促進を進めていきます。また、2020年1月には、阪神・淡路大震災から25年、2021年3月には東日本大震災から10年を迎えることから、国民的保障制度として制定した「被災者生活再建支援制度」の拡充に向けて関係団体と連携し取り組みます。
(2)環境問題等への取り組み
  • ① 地球温暖化による気候変動やプラスチックごみによる海洋汚染、開発を理由とした森林伐採など、地球環境の持続可能性が危ぶまれています。
     持続可能な循環型社会の構築をめざし、2019年10月に連合・中央労福協・労金協会・こくみん共済coopが設置した「環境・社会フォーラム」を通じて啓発に取り組みます。
  • ② 自らのライフスタイルを見直し食品ロスを削減するため、地方労福協が取り組むフードバンク活動や「食べ残しを減らす運動」(「30・10(さんまるいちまる)運動」、「20・10・0(にいまる・いちまる・ぜろ)運動」(注 )など)を広げます。
(3)食品の安全、食料・農業問題
 生協や消費者団体と連携し、食品の安全の確保や表示に関する政策・制度改善に取り組むとともに、食品の安全や食料・農業問題に関する学習、食育を通じた食生活の改善、地産地消の推進など、息の長い取り組みを進めます。
(4)水道の安全・安心の確保
 2019年10月に改正水道法が施行されたことに伴い、地方公共団体が担ってきた水道事業の運営を民間に売却する(コンセッション方式)ことが可能になります。水道事業を民営化するにあたっては慎重に対応するよう自治体に求めます。
(5)平和問題
 紛争のない平和な社会でなければ、安心して働きくらすことができません。こうした観点から、核兵器の廃絶・軍縮・世界の緊張緩和をめざし、関係団体の行動とも連携していきます。

Ⅱ.労働者福祉事業の促進と共助の輪の拡大

~ 労働運動と労働者福祉事業の「ともに運動する」関係の強化

〔2030年ビジョン②〕

労働組合と協同組合が連携・協同し、共助の輪を広げ、すべての人のくらしを生涯にわたってサポートします。

1.協同組合の促進に向けた総合的な政策と法制度の改善

  • (1)協同組合は、SDGs達成の担い手として国連をはじめ世界的には期待が高まっている一方、日本では農協改革など政府の介入やアメリカの規制緩和要求などの国際的圧力による影響が懸念されています。協同組合がその特性を活かし発展できる政策を政府に求めます。
  • (2)協同組合政策の基本的な考え方と方針をよりいっそう明確にするため、法制度の改善を政府に求めます。
  • (3)協同労働に法的根拠を与える「労働者協同組合法」が早期に成立するよう取り組み、協同労働による仕事おこし・地域づくりの促進をはかります。

2.協同組合の社会的役割の発揮に向けて

 加盟事業団体間の連携を強化します。また、日本協同組合連携機構(JCA)に参加し、各協同組合が行う事業や活動に横串を指す分野横断的な連携を強め、協同組合間協同や認知度向上を促進していきます。
 さらに、都道府県レベルでも地域の実情に応じた連携強化をはかります。

注2 宴会などの際、開始後の20~30分と終了前10分間は自席で食事を楽しむよう呼びかけ、食べ残しをゼロにする運動。

3.労働者福祉事業と労働組合の連携強化 ~「ともに運動する」関係づくり

  • (1)労働組合と事業団体が「ともに運動する主体」として関係を強化するため、引き続き労働者自主福祉事業や協同事業の今日的意義や社会的価値への理解を広げるための取り組みを進めます。
  • (2)加盟団体相互の連携と協力関係の強化に向けては、「事業団体会議」、「労働組合会議」、「労働組合・事業団体合同会議」を開催し、相互利用・好事例共有をはかります。また、労働団体に対し、「労金運動中央推進会議」や「こくみん共済coop中央推進会議」との三者要請を引き続き展開し、関係強化に努めます。
  • (3)中央・地方労福協は、自らの活動が事業団体の利用促進や支援につながっているかどうか自己点検を行い、相互の信頼をより確かなものにするよう努めます。こうした信頼関係のもと、地方労福協が安定した活動が継続できるよう、加盟団体に引き続き理解を求めていきます。

4.共助の輪の拡大 ~ 誰ひとり取り残さない社会に向けて

  • (1)中小・零細企業、非正規や多様な雇用形態で働く人たち、さらには外国人労働者など共助の輪に参加できていない人たちへの福祉事業の利用を広げるための受け皿や制度開発などについて、関係団体と連携し検討を進めます。
  • (2)地域における協同組織(組合)や福祉事業団体を利用することで得られる「循環型の助けい合いの仕組み(支援やカンパによる基金化など)」づくりについて、関係団体と連携し検討します。

Ⅲ.支え合い、助け合う地域共生社会づくり

〔2030年ビジョン③〕

地域の様々なネットワークで、支え合い、助け合う地域共生社会をつくります。

1.ライフサポート活動の推進強化

  • (1)労福協加盟団体、行政、専門家などとネットワークを広げ、地域住民の様々なくらしのニーズに対応し、困り事の解決をサポートします。また、居場所や生きがいづくり、未組織労働者や高齢者などに共助の輪を拡大していくなど、勤労者の拠りどころとしての機能を高めていくことをめざし取り組みを進めていきます。
  • (2)連合、中央労福協、労金協会、こくみん共済coopの4団体で構成する「勤労者の暮しにかかるサポート事業推進責任者会議」において、2019年9月に確認した今日までの議論の経過報告をもとに、人材確保・育成、財政基盤の確立、今後の方向性などについて、議論を進めていきます。
  • (3)ライフサポート事業の安定的な運営、基盤強化、先進事例の共有化などを目的に、全国のライフサポートセンター責任者を対象に、情報交換会を開催します。
  • (4)複合的な相談やメンタルヘルス、消費者被害など相談内容が多岐にわたっています。相談員のスキルアップをはかるため研修・経験交流会を開催します。将来的には4団体による合同研修会の開催をめざします。

2.地域共生社会づくりに向けて

(1)「地域共生社会」の推進
  • ① 雇用の劣化や超少子・高齢・人口減少社会の進展に伴い、これまでの「支える」「支えられる」という二分法から脱却し、「支える側」を支え直し、「支えられる側」の参加機会を広げ社会につなげていくことが必要になっています。こうした観点から、行政に共助や共生を支えるための公的な責任(共生保障)を求めつつ、協同組合やNPO、地方労福協が連携・協働して、より能動的に「地域共生社会」づくりに関与していていくことをめざします。
  • ② 自治体と非営利・協同組織との関係を、単なるコスト削減や下請け型の業務委託ではなく、目的や基準(公正労働基準)を明確にした上での対等なパートナーシップにもとづく協働の関係づくりをめざします。
  • ③ 「地域共生社会」に向けた包括的な支援体制を全国に整備するため、厚生労働省の「地域共生社会推進検討会」の検討状況もみながら、よりよい内容になるよう取り組みます。
  • ④ 介護・障がい・子ども・生活困窮などの国の補助金を分野・属性横断的に一体的・柔軟な活用ができるよう、国や自治体の動きを情報収集しながら対応していきます。
(2)生活困窮者自立支援制度の拡充と生活・就労支援の強化
  • ① 改正生活困窮者自立支援法を踏まえて、残された課題に取り組みます。
    • 1) 3年間(2019~21年度)で就労準備支援事業と家計改善支援事業を集中的に整備し、すべての自治体において完全実施をめざす政府目標が達成できるよう、地方労福協による自治体での点検・要請活動などを通じて後押しします。また、一時生活支援事業、子どもの学習支援・生活支援事業も含め、任意事業の実施率を高めるよう自治体に働きかけます。
    • 2) 委託事業の多くが単年度契約であり、実績のある良質な事業者が入札による価格競争で事業を継続できなかったり、制度を担う相談員・支援員の多くが将来不安を抱えています。このため、委託契約にあたって支援の質や実績を総合的に評価することや、相談員・支援員の雇用の安定と処遇の改善を行政に働きかけます。
    • 3) 地域で支える体制をつくるため、優先発注等の仕組みを活用するなど、受け皿となる認定就労訓練事業所を促進するための環境整備を行政に要請します。労福協においても、先進事例を共有しつつ、就労準備支援事業や就労体験・訓練・働く場の確保や居場所づくりなどに、労働組合、協同組合、NPO等と連携して取り組みます。
    • 4) 就労支援期間中の生活支援給付、交通費等の実費支給、住居確保給付金の拡充など、支援を実効化するための制度改善に取り組みます。
  • ② 生活困窮者自立支援や就労支援を行っている労福協、事業団体、関係団体と「生活・就労支援連絡会議」を開催し、各地の実践の経験交流や情報交換、政策・制度改善の検討等を行います。
  • ③ 生活困窮者自立支援全国研究交流大会(主催:一般社団法人 生活困窮者自立支援全国ネットワーク)に参加し、自治体・支援者・研究者などとの交流や、制度改善に向けた連携をはかります。また、労福協で生活困窮者自立支援に携わる相談員・支援員の同大会への参加を促進し、交流の場をつくります。
(3)社会的孤立への対応や就職氷河期世代への支援

 経済的な貧困とともに社会的孤立も広がり、家庭や学校、職場、地域に自分の「居場所」がない人たちが増えています。孤立死、「引きこもり」の長期化・高年齢化、8050問題など、多くの対応すべき課題もあります。また、就職氷河期世代への支援も喫緊の課題ですが、政府の対策は一時的かつ就労に偏った弥縫策となっており、より長期的な総合的な観点に立った寄り添い型の支援が必要です。
 こうした課題について学習会の開催などにより問題意識を深めつつ、政策の実態把握と改善要望を行うとともに、労働者自主福祉としてできることの検討も含め、支援がより充実したものとなるよう関係団体と連携して取り組みます。

(4)フードバンク活動や子ども食堂の普及・促進
  • ① 食品ロス削減推進法の成立(2019年5月)に伴い、同法にもとづくフードバンク団体への支援措置の具体化・予算化を国や自治体に働きかけます。また、フードバンク団体と連携し、食品寄付に関する責任を免責する制度の創設など、フードバンクへの食品提供を促進するための法整備に取り組みます。
  • ② 食品ロス削減に加えて、生活困窮者自立支援制度や様々な福祉施策との連携や、災害時における食料支援システムとしての活用等の観点からもフードバンクを積極的に位置づけ、省庁横断的な施策の推進をはかるよう、政策・制度改善に取り組みます。また、フードバンク団体のネットワーク等とも連携しつつ、啓発活動や普及・促進に取り組みます。
  • ③ フードバンク活動に関する労福協関係団体の情報交換会を開催するなど、各地の取り組みの経験交流や情報・課題を共有し、相互の連携を深めます。
  • ④ 子ども食堂に関する労福協関係団体の取り組み事例等を情報収集しながら、活動の普及・促進に取り組みます。
(5)介護サービスの体制整備と、介護離職の防止
  • ① 要介護者および認知症高齢者の増加に伴って介護サービスの需要も増えていますが、介護従事者の離職、人手不足は深刻な問題になっています。介護従事者の確保に向けて、処遇改善、研修・教育訓練の充実、ハラスメントを防止する職場環境の改善が喫緊の課題です。改善に向け政策・制度要求を行っていきます。
  • ② 親の介護を理由に退職する労働者が増加しています。介護休業制度の取得促進、介護保険制度の活用、企業や地域における相談窓口の設置など、介護離職を防止する対策の強化など、政策・制度要求を行っていきます。
  • ③ 介護相談事業や、訪問介護事業、認知症見守り活動、認知症患者のための音楽療法など、介護に関わる事業や活動に取り組む地方労福協、事業団体の情報を収集し発信していきます。
(6)子ども・子育て支援
  • ① 相次ぐ児童の虐待死を受け、児童虐待防止法、児童福祉法が改正され、2020年4月より順次施行されます。児童虐待は喫緊の課題であることから、地方自治体は実態把握を行うとともに、中核市や特別区で児童相談所の設置が進むよう専門人材の確保や運営費負担などの支援、児童相談所間における情報共有の徹底などの施策を政府に求めます。
  • ② 待機児童問題の解消に向け、保育施設の拡大やそれを支える保育人材の確保、地域における保護者支援窓口の普及など、持続可能な保育制度の確立を政府に求めます。また、企業主導型などの民間保育事業に対して、保育の質を低下させないよう、保育士の十分な配置、良好な施設環境、賃金・労働条件の向上など適切な運営がなされているか監督するよう求めます。
  • ③ 地方労福協が自治体から受託し子ども・子育て支援事業を行うファミリー・サポート・センターの充実など、地域における取り組みを強化します。
(7)退職者・高齢者の社会参加の推進

 高齢者の単身世帯や生活困窮者が急増するなかで、地域での寄り添いや見守りがこれまで以上に必要となっています。そのため、これまで「支えられる側」であったシニア世代が、多様で多彩な能力や技能を地域社会で「支える側」として役割が発揮できるよう環境整備に向けて退職者団体と連携します。
 また、高齢者の健康・生きがいづくりやボランティア等、様々な地域コミュニティへの参加の拡大に向け、関係団体とともに地域のライフサポート活動と連携した取り組みを進めます。

3.すべての働く人たちへの福利厚生の充実

  • (1)大企業と中小・零細企業の福利厚生制度の格差を是正するため、全福センターと連携し、中小企業勤労者福祉事業促進法制定に向けた政策要請を行います。
  • (2)中小零細・未組織勤労者・非正規雇用で働く人たちの福利厚生の充実をはかるために、「ず~っとあんしん共済」をはじめ、こくみん共済coopや労金の各種制度・商品の周知、さらには金融知識やファイナンシャルプラン教育などを通じて、共助の輪の拡大につながるよう、加盟団体間の相互連携を進めます。

Ⅳ.人材の育成と財政基盤の確立

〔2030年ビジョン④〕

労働者福祉運動を継承・持続するために、人材を育成し、財政基盤を確立します。

1.運動を継承する人材の育成

  • (1)各ブロックにおける「労働者福祉運動の理念・歴史・リーダー養成講座」、さらには地域(県・地区)での研修・セミナーについて、4団体(地方労福協、地方連合会、労金、こくみん共済coop)が連携し積極的に開催します。
  • (2)中央および地方の加盟団体が主催する研修・セミナーに、積極的に講師団講師を派遣します。
  • (3)中央においては、関係団体との人事交流や法政大学連帯社会インスティテュート(連合大学院)などの教育機関と連携し、人材育成をはかります。また、教育文化協会が実施している大学寄付講座への「労働者自主福祉運動」のカリキュラム化の拡大をはたらきかけます。
  • (4)「労働者福祉運動の“これまで”と“これから”」の改訂版や動画を作成し、その活用を進めます。

2.労働者福祉運動への女性の参画促進

 労働者福祉運動の継承・発展のためには、女性の参画は不可欠です。中央労福協が主催する会議や研修会等への参画を促進するとともに、加盟団体・関係団体の女性役職員や次期リーダーを対象に年1回、学習・経験交流の場(女性のひろば)を設けます。また、中央・地方労福協における女性役員を2030年までに3割とするための方策について検討を進めていきます。

3.財政基盤の確立

 運動と財政は一体的なものであり、運動を持続可能なものとするため、財政基盤の確立に取り組みます。

  • (1)地域における社会連帯的な基金の先進事例も共有化しながら、みんなでお金をだしあって、地域での社会的な活動や共助の拡大に役立てる仕組みについて中央・地方で議論を深め、広げていきます。
  • (2)連合の「ゆにふぁん~支え合い・助け合い運動」に協力し、地方労福協や関係する市民団体の地域活動を「ゆにふぁんマップ」に登録して「見える化」し、必要に応じてクラウドファンディングの活用も検討します。
  • (3)休眠預金制度による助成事業の開始に伴い、広く市民による公益活動を促進するという当初の目的が達成されるよう働きかけていくとともに、地方労福協および関係する協同組合、市民団体等の公益活動にも活用できるよう、情報交換をしながら取り組みます。

Ⅴ.組織活動・運営、研修・教宣

1.各種会議の運営 

(1)機関会議
  • ① 幹事会は年に4回程度開催します。
  • ② 三役会は1~2ヶ月に1回程度開催します。
(2)加盟団体会議等
  • ① 事業団体会議、労働組合会議、地方労福協会議を開催します。相互の情報交換と意思疎通をはかるほか、それぞれの課題に応じたテーマでの討議、研修等も盛り込み、機能的で充実した運営をめざします。
  • ② 事業団体・地方労福協合同会議および労働組合・事業団体合同会議を必要に応じて開催します。またテーマ別の懇談会などを企画します。
  • ③ ブロック事務局長会議を適宜開催します。年1回はブロック会長・事務局長会議とします。(2020年度:東部ブロック、2021年度:南部ブロック)

2.政策・制度に関する「要求と提言」活動

(1)事業団体および地方労福協の要望を集約し、政策委員会で取りまとめを行い、政党および関係省庁に対し要請を行います。
(2)地方労福協が各自治体への要請等を行う際の参考資料として「要求と提言(自治体要請参考版)」を発行します。
(3)地方労福協が行う要請等の精度を高めるため、中央労福協と地方労福協の要請内容および回答内容を集約し、情報共有します。

3.全国福祉強化キャンペーン

 毎年10月・11月を取り組み強化期間とし、共助拡大・利用促進など労働者自主福祉運動を柱に、その時々の社会的課題を設定し、共通テーマで全国的に集中して取り組みます。

4.研修活動

(1)全国研究集会
 加盟団体役職員を対象に、時事の社会課題や中央労福協活動方針の主要課題等をテーマ設定し、改善に向けた課題共有をはかることを目的に年1回開催します。

  • ・2020年度は、6月11~12日に京都市(中部ブロック)で開催します。
  • ・2021年度は、北部ブロックにおいて開催予定となります。
(2)ライフサポートセンター実務者・相談員研修・交流会
 相談員のスキルアップならびに好事例共有等の経験交流を目的に年1回開催します。(場合によっては2回開催)
(3)公益法人制度に関する研修・情報交換会
 法人格を持つ地方労福協が、法令を遵守し適正にその法人運営を行うとともに、責任者や担当者の異動等に際しても知識や経験を法人内で円滑に蓄積・継承していくことができるよう、法人の運営・税務・会計に関する主な内容についての学習、業務上の課題・経験等について情報交換、共有化の機会を設定します。
(4)地方労福協事務担当者研修会
 地方労福協の事務担当者を対象に、中央労福協の活動の理解や必要な知識の習得、地方労福協の取り組みの共有、事務担当者相互の交流をはかることを目的に、年1回研修会を開催します。

5.国際交流活動

(1)海外への派遣について
 加盟団体や関係団体が調査・研究している海外事業や国際活動等の情報収集を行いながら、労福協活動に繋がる取り組みについて調査を進めます。
(2)国際機関(関係団体)との連携
 国際労働財団(JILAF)主催の招へい事業への協力(地方受け入れ等)、草の根支援事業(SGRA)への講師派遣等の協力を行います。

6.広報活動

(1)ニュースレター
 ニュースレターを毎月1回発行し、中央労福協の活動に関する情報を提供するほか、インタビュー記事、取材記事、連載記事などを盛り込み、内容の充実をはかります。
(2)公式ウェブサイト
 2018年に刷新した中央労福協公式ウェブサイトを活用し、中央労福協の活動に関する情報やニュースを迅速に発信していくとともに、連載やコラムなど読み物の充実をはかります。

7.情報化の推進

(1)セキュリティ対策
 ウェブサイト等において必要なアップデートを定期的に行い、セキュリティ対策を強化します。
(2)SNSの活用
 日常的にSNSを利用する世代に労福協の取り組みの情報が届くよう、SNSを有効に利活用します。
(3)過去文書のデジタルデータ化
 中央労福協がこれまでに作成・発行した各種の原版(文書、刊行物、議案書その他の紙媒体資料)のうち、1980年頃までのものについては結成60周年記念事業の一環として経年劣化のないデジタルデータへと順次変換しました。引き続き結成80周年に向けて残りの部分のデジタルデータ化を進め、その歴史的資料の保存に取り組みます。

8.調査研究活動

  • (1)連合総研が実施(予定)する共同研究「労働者自主福祉運動の人材育成等に関する調査研究」(2019年10月~2021年9月)に参加・協力します。
  • (2)その他の調査研究については、中央労福協の進める運動・政策課題の中で、勤労者のニーズの把握や労働者福祉事業の取り組みにもつながるテーマについて、関係団体と相談しながら必要に応じて検討・実施します。
  • (3)地方労福協が実施した調査等の情報や成果の共有の促進をはかります。

9.加盟団体等の業務に関わるサポート

(1)労働組合の税務・会計サポート
  • ①「労働組合等の会計税務に係る実務マニュアル」の普及
    労働組合の会計・税務処理や決算処理、確定申告など、様々な場面で活用できるよう、2018年版「労働組合等の会計税務に係る実務マニュアル」を加盟団体、単組等へ普及をはかります。
  • ② 毎年改正される税制の動向を踏まえ、労働組合の会計税務に関連する改正情報をウェブサイトで掲載します。
(2)「現行社会保険制度の要点」の発行
 「現行社会保険制度の概要」(掲示用)を、加盟団体および要望のある単組、団体等へ向け、10月に発行します。中央労福協のウェブサイト版では法改正情報をすみやかに掲載します。

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