活動方針

2016~2017年度活動方針

基 調 (はじめに)

1. 「経済成長」第一主義から再分配機能を高める政策への転換を

 グローバル市場主義が全世界を席捲する中、貧困と格差は拡大し、国内でも様々な矛盾を深め、日本社会の「持続可能性」を危ういものとしています。
2012年末に発足した第二次安倍政権は、新自由主義路線の下、「経済成長」を至上とする「アベノミクス」政策を進め、それまでの民主党政権による「社会的包摂戦略」「高校授業料無償化」、「子ども手当」など再分配政策とは大きく異なっています。
 この3年間、株高、円安は進行しましたが、しかし、勤労者の生活は好転したという実感はありません。そればかりか、労働法制の改悪、規制緩和などにより、労働力の低コスト化、非正規雇用の固定化を推し進めようとしています。こうした動きは、不安定雇用・低賃金労働者を増大させ、貧困と格差をさらに拡大するものとなっています。雇用の不安定化は、「ブラックバイト」「ワーキングプア」と言われるように、特定の層にとどまらず、すべての世代に将来不安を与えるものとなっています。「経済成長」至上政策では、「自己責任論」のみが強調され、人と人との関係が薄れ、生活上の諸課題の解決は個別化、孤立化に陥ることになります。
 こうした事態に対して、私たちは労福協運動の一つの柱である、公助の役割発揮として、政府に対して社会統合をめざす再分配政策への転換とその具体化を求めていく運動が必要となっています。
 あわせて、労福協運動のもう一つの柱である共助機能の発揮が求められています。共助組織である労働組合、労働者自主福祉団体・協同組合は人々の生活拠点である地域、職域で、助け合いの機能を発揮し、「連帯・協同でつくる安心・共生の福祉社会」に向け、その具現化に取り組んでいくことが求められています。

2. 拡大する高齢者の貧困

 超高齢化が進行する中、生活保護受給者は毎年増加し、2015年3月には過去最高の217万人を超え(受給世帯数162万世帯)ています。特に、その受給者の半分(49%)は65歳以上の高齢者となっており、無業の無年金者や低額の年金者の比重が高まっています。また、2015年度から始まった基礎年金のマクロ経済スライド方式により年金水準は今後30年間、さらに低下することが見込まれ、単身高齢者世帯が増加する中で「年金だけでは生活できない」高齢者の貧困がさらに拡大することが予想されます。
 また、一定の資産を有している高齢者さえも、「下流老人」「老後破産」という言葉が広がっているように、老後の病気、介護などを考えるとき、老後の生活に対する不安感が助長されています。

3. 雇用形態による貧困の拡大

 稼働年齢層においては、パート、有期契約、派遣などの非正規労働者が依然として増大(2014年1962万人)し、その所得の低さ、雇用の不安定さから、結婚、出産が困難となっており、生涯未婚者も増大しています。特に、若年層における雇用状況は劣化しており、15~24歳の学生を除いた就業者の非正規率は45.6%と同世代の2人に1人は非正規就労者となっています。
 また、高校生では、毎年5万人を超える中退者がおり、加えて、高校卒業者の求人数もリーマンショック以前に比べ、大幅に減少し、高卒者の求人が厳しいことを示しています。(1992年 求人数167.6万人⇒ 2013年 17.3万人)
 このことから、高卒者は「とりあえず」進学の道を選ぶことになり、学費の高騰、保護者の所得が低下する中で「奨学金」を借りざるを得ない状況も生まれています。
 しかし、大学生の就労状況も、毎年卒業者の20%前後、約10万人の若者が「不安定な雇用(非正規、一時的仕事、無業など)」となっており、多額の「奨学金」の返済を背負った者は貧困につながっていくことも危惧されます。
 子どもの貧困率が16.3%と高い水準にある中で、ひとり親世帯での貧困化(貧困率2014年54.6%)が大きな問題となっています。ひとり親世帯、特に母子家庭では非正規職が多く、教育面において、親の所得が子の学力、進学機会の格差につながり、子どもへの貧困の連鎖として深刻化しています。

4. 貧困化が社会保障制度を崩壊させる

 少子化が進行する中で、若者の疲弊は社会を支える活力を失うものとなります。世代間の連帯制度である公的年金、医療保険制度など社会保障制度は、高齢化により支えられる人が増大する反面、少子化に加え、若者の雇用の劣化などの社会的原因でさらに、社会保障制度を支える側の層が支えられなくなり、社会の持続可能性を失わせる危機を生んでいます。
 2005年当時、15歳から64歳の稼働年齢層が65歳以上の高齢者を支える比率は3.28人が1人の高齢者を支えていましたが、2030年には1.83人で1人の高齢者を支えるという予想となっています。こうした、社会保障制度をより充実させるには、政府による再分配政策を強めるとともに、現役の稼働層である「支える」層に活力あるものにすることが何よりも必要であり、そのためにも、希望ある若者のための支援が必要となっています。

5. 貧困・社会的孤立を克服し、持続可能な社会をめざす取り組み

 日本創成会議の「消滅自治体」の予想に見られるように、人口減少が社会の持続性を失わせるとの危機感から、政府は、「まち、ひと、しごと創生総合戦略」を打ち出し、「少子化」、「大都市集中」「人口減少」に対応せざるを得ない状況に至っています。
 しかし、これらの考えには、人口減少、少子化が若者の雇用の劣化、貧困、社会的孤立など社会的原因でさらに加速されているという問題意識が欠落しています。
 安定した雇用(ディーセントワーク)を前提に、安心して結婚、出産、子育てできる環境、条件整備こそが社会の持続可能性を担保できるものです。そのためには、具体的に、雇用の劣化、貧困、社会的孤立など社会的原因を克服する政策の実行がなくてはなりません。

6.「連帯・協同でつくる安心・共生の福祉社会」の実現に向けて

 本活動方針では、以上の情勢認識のもと、持続可能な社会の構築に向けて、貧困の連鎖、雇用の劣化、社会的孤立の防止を重点に、一方で「公助」機能の強化を求める運動と他方で労働組合と労働者自主福祉団体、協同組合との連携の下「共助」機能の発揮を強める運動を進めていきます。
具体的には、これまでの3つの柱を中心に取り組みます。

①「社会的連帯を深める運動と政策の実現」
社会運動を背景に、生活困窮者自立支援制度の実効ある構築、奨学金問題、生活保護制度問題を中心とした公助の充実・改善を求める運動。
②「暮らしの総合支援(ライフサポート事業)の深化」
地域を基盤に居場所、拠り所機能を強化し、人と人との結びつきを追求し、地域づくりを進める運動。
③「労働者自主福祉事業団体の機能を発揮するための基盤強化」
労働者自主福祉団体の理念・歴史を共有化するとともに、共助の価値を発揮し利用促進、共助の拡大をはかる運動。

各 論

Ⅰ.社会的連帯を深める運動と政策の実現

1.貧困や多重債務のない持続可能な社会に向けて

(1)奨学金問題改善への取り組み
  1. この2年間、地方労福協会議、労働組合会議で奨学金問題の学習会を開催し、問題を共有化したことを踏まえ、中間層の解体に繋がる奨学金問題を重点課題として取り組みます。
  2. 奨学金の制度改善に向けて、社会運動として盛り上げ、政党や様々な団体等と連携し実現に向け取り組みます。
    • ① 2015年度の取り組み(署名・啓発活動や議員要請行動など)の結果を踏まえ、対策委員会等で獲得目標を再整理(中長期的な視野で実現をめざす課題、緊急に実現すべき政策改善などの区分け)しながら、次のステップの取り組みを企画し、より広範な社会運動をめざします。
    • ② 2015年度に実施した「奨学金に関するアンケート調査」の集計・分析に基づき、実態や課題について広く周知していくとともに、制度の改善に向けて具体的な政策提言に反映していきます。
    • ③ 運動の広がりに応じて、各地域において奨学金に関する相談に応じられるような体制を、行政、法律家等の専門家とも連携しつつ、適切な役割分担のもとに整備していきます。中央においても、相談員養成研修会の継続実施や法律家のバックアップ体制の調整など、支援を行っていきます。
    • ④ 学生・教員等への啓発活動や自主福祉活動(金融・奨学事業など)として可能な活動については、奨学金問題対策委員会での検討に基づき、事例の収集や紹介をはじめ、関係団体と連携して、具体化したものから取り組みます。
(2)生活困窮者支援制度の構築と社会的包摂の推進
  1. 生活困窮者自立支援制度が2015年4月より実施され、「総合相談支援」はすべての自治体で行われていますが、各地の体制に大きな格差があり、第二のセーフティネットとして実効ある制度にしていくため、関係団体と連携して取り組みます。
  2. 国の補助率の低い任意事業(「就労準備支援」「一時生活支援事業」「家計相談事業」「子ともの学習支援事業」の実施率が極めて低いことから、今後、それらの体制強化を求めていきます。
  3. 特に、就労支援の体制が弱いことから、生活困窮者の社会参加を促すため、その充実をめざし、例えば、「就労の場の創出」、「企業や社会的事業体における中間就労の場の確保」などの就労支援を重視した施策の可能性を労働組合、協同組合、NPO等と連携した取り組みで追求していきます。
  4. 生活困窮者自立支援制度の施行3年後の見直し(2018年)に向けて、① 支援メニューの拡大(任意事業の必須事業化)② 対象者の拡大(社会的孤立への対応)③ 財政基盤の確立(国の補助の引き上げ)をめざして制度改定を働きかけていきます。また中長期な戦略として以下の点を重視しつつ政策要求していきます。
    ア. 支援の出口(中間就労や居場所)を地域で開拓し、地域づくりにつなげる。
    イ. 貧困・困窮者を生み出さないための政策・制度の改善にフィードバックする。
    ウ. 支援事業を担う協同組合や社会的企業が育つ仕組みやスキームを構築する。
  5. 生活困窮者自立支援法の成立を機に支援団体、自治体、研究者などによる緩やかなネットワーク組織として設立した「一般社団法人 生活困窮者自立支援全国ネットワーク」に参加し、情報交換とともに、制度改善に向けた連携をはかっていきます。
(3)ナショナルミニマムの保障と社会的セーフティネットの充実
  1. 生活扶助基準が2013年以降3年連続して引下げられたのに続き、住宅扶助(2015年7月~)・冬季加算(2015年10月)の引き下げも強行されています。生活保護は憲法25条が保障する「いのちの最終ライン」という認識の下、これ以上の引き下げを許さない運動を関係団体と連携し展開します。また、これまでの引き下げの不当性を引き続き訴えるとともに、住民税非課税限度額、就学援助などの影響を最低限にしていく取り組みを進めます。
  2. 支援が必要な人たちが生活保護やセーフティネットの制度から排除されないよう、生活困窮者自立支援制度をより機能させていくことで、生活保護行政担当者をも巻き込んで理解を広げていきます。
  3. 「住まいは人権」との観点から地域における居住支援協議会の促進、公的住宅保証制度の創設、シェルターの整備等に取り組みます。
  4. 生活困窮者を食い物にする「貧困ビジネス」(追い出し屋、脱法ハウス、無料,低額宿泊所による生活保護費のピンハネ等)の根絶、規制強化をめざします。
  5. 貧困・格差解消に向けた諸施策の安定的な財源確保に向け、所得・資産課税の累進性の強化等を通じた所得再配分機能の強化をめざします。また消費税については、逆進性等に十分配慮するよう求めていきます。
  6. 上記の課題のほか、公契約基本法、公契約条例の制定なども含め貧困・格差の克服に向けた課題を実現するため、「生活底上げ会議」を軸に、労働組合、福祉事業団体、市民団体、法律家、研究者などとも連携して、より広範な運動とネットワークづくり、政策提言・政策決定への反映をめざします。さらに、貧困問題に関するキャンペーン活動、奨学金問題、生活困窮者自立支援・相談活動などについても、共同で取り組める行動を追求します。
(4)貧困の連鎖・子どもの貧困の解消をめざして
  1. 2014年8月に策定された政府の「子どもの貧困対策に関する大綱」の具体的実施施策の検証を進めていきます。特に、「大綱」では貧困削減の数値目標が設定されず、給付型奨学金の創設も見送られたことから、関係団体とともに、それら諸課題の解決をめざして政策制度要求として進めていきます。
  2. 都道府県に対して努力目標となっている貧困対策に向けての計画策定の検証を進めるとともに、その推進に向け各地で働きかけていきます。
(5)多重債務対策
  1. 一部の国会議員を中心に改正貸金業法の見直し(改悪)の動向が継続しています。また、ヤミ金被害についても増加傾向が見受けられるとの懸念も出ており、運動の成果を後退させないためにも、引き続き関係各方面と連携し警戒する必要があります。
  2. カジノ解禁を柱とするIR法案については、与党内にもギャンブル依存症対策の緊急性が認識されはじめたことを受け、中央労福協として引き続き幹事会確認をベースに、「法案成立ありき」を許さず、ギャンブル依存症対策の動向を含め、関係団体と連携して取り組んでいきます。
(6)司法修習生に対する給費実現の取り組み
  1. 政府「法曹養成制度改革推進会議」の取りまとめ(2015年6月30日)に盛り込まれた「司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討する」との方針を踏まえ、法務省が速やかに具体的な制度化をはかるよう、「司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会」、日弁連、ビギナーズ・ネットと連携して取り組みます。
  2. 今後は奨学金問題の取り組みに関連する課題と位置づけ、より広範な運動の一環として取り組んでいきます。
(7)自殺対策
  1. 自殺対策基本法の施行から2016年で10年の節目を迎えます。自殺対策は一定前進し、2009年からは5年連続で減少し、昨年は約2万5千人と、自殺が急増した1998年以前の水準に戻っています。しかし、現在も毎日70人もが自殺で亡くなっており、日本の自殺率は依然として先進主要7カ国で最も高く、若年世代の自殺率の高止まりもめだっています。
  2. このため、ライフリンク、自殺対策全国民間ネットワーク、市区町村会、議員の会が行った「自殺総合対策のさらなる推進のための提言」を踏まえ、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」を実現するため、自殺対策基本法の改正等の法整備や、「地域レベルの実践的な取り組み」による「生きる支援」に向けた政策要求のほか、引き続き各関係団体との連携で取り組みを進めます。

2.消費者運動との連携の促進

(1)悪質商法被害の根絶に向けて
  1. 消費者庁は「2014年版消費者白書」より、消費者被害の推計値を毎年公表することとなりました(中央労福協の政策要求が実現)。2014年の消費者被害額は約6兆7千億円で、GDPの1%にもおよび、悪質商法被害の根絶は国民共通の課題となっています。
  2. 集団的消費者被害回復訴訟制度の創設(2013年12 月 4 日法制定)を受けて、施行までの 3 年間での新訴訟制度の周知や、特定適格消費者団体への支援措置など、制度を実効あるものにするために残された課題に対応していきます。
  3. 不当表示に対する課徴金制度が導入(2014年11月19日)されたのを受け、その実効性を検証しつつ改善をはかります。
  4. 現在、政府で検討が進められている割賦販売法、特定商取引法、消費者契約法の見直し等については、課題の進捗状況を注視しつつ、必要に応じて消費者団体等と連携して取り組みます。
(2)地方消費者行政・相談体制の充実強化(消費生活相談員の処遇改善)
  1. 消費生活相談員が国家資格化(2014年6月6日、消費者安全法改正)、消費者庁や総務庁からの雇い止め解消を求める通知(2014年)等を活用し、引き続き消費生活相談員の地位の向上、処遇改善を求めていきます。
  2. 地方消費者行政に対する財政支援を含む国の支援策を引き続き求めていきます。
(3)地域連携、消費者教育
1.消費者教育推進法や消費者安全法改正(2014年6月)による地域連携・消費者教育の仕組みを実際に機能させていくため、消費生活協力員(見守り)や消費者市民サポーター(市民教育)などの人材育成、福祉や困窮者支援などによる地域づくり施策とも連携した総合的な推進体制を求めていきます。

3.連帯経済の促進に向けた政策の実現

  1. IYC記念協(国際協同組合年記念全国協議会)と連携し協同組合憲章の制定を政府に求めていきます。また、「協同労働の協同組合法」の早期制定に向け関係団体と連携し取り組みを進めます。
  2. 労働者福祉、協同組合に関する政策・制度要求および政策決定プロセスの参画など、関係運動団体と連携し、その実現に向けて関係省庁に対する取り組みを強めます。

4.東日本大震災からの復興・再生に向けて

  1. 被災県からは、資材高騰による復興復旧作業の遅れ、人手不足などによる雇用のミスマッチ、福島県固有の課題、仮設住宅から災害公営住宅への移転による地域コミュニティ維持等を巡る課題、高齢者の孤独死や心のケアの問題など再生復興に向けては、今なお多くの課題が指摘されています。
  2. いつまでも被災地を忘れることなく震災の記憶を風化させず、加盟団体からの要望の取りまとめなどを通じ、引き続き復興・再生への取り組みを進めていきます。併せて、東日本大震災の被災経験・復興の取り組みから得られた教訓を今後の災害対策へ活かしていくためにも、労働者自主福祉運動として出来ることについて、検討を開始します。

5.防災・減災の取り組み

  1. 日本列島が地震活動期に突入し、また、地球温暖化の影響等による台風の大型化やゲリラ豪雨や突風による被害が頻発していることを踏まえ、各地方において地方自治体や事業団体・協同組合と連携し、大規模災害のリスクに対処できるよう啓発活動等の取り組みを進めます。

6.地球環境保護、食の安全

  1. 連合、中央労福協、労金協会、全労済で構成する「ライフスタイルを見直す環境会議」で、「食品ロスの削減」や「再生可能な循環型自然エネルギーの促進」等に取り組みます。
  2. エコキャップ運動(ペットボトルキャップを回収し世界の子どもにワクチンを送る)については、回収したキャップ代金がワクチンに確実に活用できる保証がなくなったことから、全国的組織的に取り組むことは中止します。今後、CO2の排出削減に向けてのキャップの処理方法について、「ライフスタイルを見直す環境会議」で、議論・検討を進めます。
  3. 引き続き放射性物質の影響の懸念への対応をはじめ食品の安全の確認を徹底し、食育、地産地消、食の安全等に対し、分かりやすく正確な情報提供を通じた消費者の安心・安全の確保に向け、息の長い取り組みを進めます。

Ⅱ.暮らしの総合支援(ライフサポート)

1.暮らしの総合支援事業の体制づくりと着実な推進

  1. 2005年の「4団体合意」の検証を踏まえ、「地域におけるつながりの重要性と拠り所機能や生活支援サポート事業が求められている」という新たな「合意」・共通認識に基づき、生協、NPOなどとの幅広いネットワークを拡大し、ライフサポートのさらなる深化をはかります。このため、各地域で、加盟組織との議論を深め、機能強化に向けた取り組みを進めます。
  2. ライフサポート機能の強化に向けて、労働福祉事業団体の事業と連携したセミナー、研修会などを開催し、未組織労働者や高齢者などに対して、共助・連帯の輪を拡大します。
  3. 残された課題である「財政」や「人材育成」については、連合との協議を行い、その具体化をめざしていきます。

2. 生活・就労支援

  1. 生活困窮者自立支援制度を受託している労福協(新潟、千葉、山口、徳島、愛媛、沖縄)、事業団体と就労支援(若者サポ-ト、無料職業紹介など)を行っている労福協間の「生活・就労支援連絡会議」を開催し、情報交換を行います。
    また、各労福協は、地域の加盟団体等と協議し、生活困窮者自立支援制度にどのように関われるかの検討、協議を進めます。

3.フードバンク活動の普及・促進

  1. 地域において、労福協やNPO、生協、ワーカーズコープなどと連携したフードバンク活動が広がっています(埼玉、千葉、新潟、長野、静岡、徳島、沖縄など)。こうした地域の事例の情報交換を活用し、生活困窮者自立支援制度における緊急生活支援として積極的に位置づけ、普及・促進をはかります。
  2. 食品ロスの削減、災害時における食料支援システムとしてのフードバンクの活用をはかるため、「NPO セカンドハーベストジャパン」をはじめとするフードバンク団体のネットワークと連携しつつ、引き続きフードバンクの啓発活動や政策・制度の改善等に取り組みます。
  3. 労福協関係団体の取り組みが広がっている中で、各地の取り組みの集約や経験交流をはかります。特に、フードバンク活動を持続していくため、行政の支援等を含め財政基盤のあり方についても検討や情報交換を進めます。

4.中小企業勤労者福祉の充実

  1. 中小企業勤労者福祉事業促進法(中小企業勤労者福祉サービスセンターに法的根拠を与える法律)制定に向けて、全福センターと連携した取り組みを進めていきます。
  2. 全労済が新たに制度提供する「ず~っとあんしん共済」(中小企業勤労者福祉サービスセンター会員を対象とした遺族保障・医療保障の共済制度)への加入・普及促進をはかり、それを通じたサービスセンターの魅力向上と会員拡大につなげます。あわせて、労金・全労済の各種預金・融資、共済の利用促進をはかります。
  3. ライフサポート活動の中での中小・未組織勤労者の位置づけを強化し、中小企業勤労者福祉サービスセンターとの連携をはかります。
  4. 未設置の県・地域での設置促進に取り組むとともに、未設置エリアにおいてライフサポートセンターが受け皿となる可能性について検討を進めます。
  5. 各地の実情に応じたスケールメリットの発揮(広域化・共同化)や、大企業や公務部門のアウトソーシングへの対応、派遣労働者や高齢者等への対象の拡大などについて検討します。地域での行政からの支援打ち切り、事業の統廃合等に対しては、可能な限り関係団体で連携をはかりつつ対応します。
  6. 上記についての対応をはかるため、「中小企業勤労者福祉関係団体連絡会議」を適宜開催します。

5.退職者・高齢者との連携・支援の活動

  1. 高齢者の生活困窮者が急増するなかで、地域での寄り添い・支え合いが求められています。 とりわけ、ライフサポートセンターや地域の退職者組織が自治体、協同組合、NPO等と連携し、拠りどころ機能(コミュニティ)の発揮が必要となっています。
  2. 退職者連合が、2015年の第19回定期総会で決定した新たな規約と活動方針(労働者自主福祉運動との連携強化、ライフサポートセンターへの協力・支援)を受け、その具体化に向け、退職者連合との意見交換を一層進め、具体的な取り組みの方向性を含めて連携を追求します。

6.介護・子育て支援

  1. 子どもの貧困問題への対策、子育て・教育における親の費用負担の軽減のための施策、仕事と子育てが両立できるワーク・ライフ・バランスの推進、待機児童ゼロの実現など子育て・教育支援としての諸課題の解決に向けて関係団体と連携し、政策制度の要求を強めます。
  2. 2015年度から介護保険制度が大きく変更になり、介護予防・日常生活支援総合事業サービスが市町村の事務として実施されることになりました。「新しい総合事業」への地方自治体(広域連合含む)の円滑な移行と事業の充実が求められることから、高齢者の孤立化を防止し、社会参加をはかる観点から制度の充実を求めていきます。
    また、地域で、こうした事業の充実をはかるため、行政とともに「NPO市民福祉団体全国協議会(市民協)」など地域のNPOなど社会資源と連携し、安心して暮らせる地域づくりをめざしていきます。
  3. 今後、地方労福協と加盟事業団体、NPO等における先進的な取り組み事例等を参考にしつつ、必要に応じ情報共有化をはかるほか、具体的な展開の方策等について検討を進めてきます。

Ⅲ.協同事業、労働者福祉運動の基盤強化

1.ポスト2012国際協同組合年の取り組み

  1. 「IYC記念協(国際協同組合年記念全国協議会)」に参加し、JAなど各協同組合との顔あわせを深め、協同組合間の対話を継続していきます。IYC記念協は2016年3月までの時限の組織としていますが、協同組合間の連携を議論する場とし、今後の組織の継続・発展を求めていきます。
  2. 協同組合法制度については、「記念協」のワーキンググループで、協同組合法の比較整理(研究者への委託)や協同組合に関する共通政策についての討議を行っている段階ですが、今後、協同組合間の議論を深め、協同組合憲章、法制定の足がかりを築いていきます。

2.協同事業団体の利用促進・支援の取り組み

  1. 産別訪問は一定の成果を得ましたが、労組の役員交代もあることから、引き続き3団体による訪問活動を実施します。また、地方段階においても組合要請活動を実施します。
  2. 中央段階において、産別の学習会の一講座に「労働者自主福祉運動」を加えるよう要請をしていきます。
  3. 中央での労金、全労済の推進会議でのオブ参加などを通じて連携を強め、利用促進を進めていきます。また、地方段階での各級推進会議などとの連携を進めるとともに、労金・全労済合同の会議のあり方を関係団体で検討していきます。
  4. 地域段階での労働組合での労働者福祉運動の方針化と学習会開催の要請活動を拡大していきます。

3.労働団体と事業団体の連携行動による共助拡大の取り組み

(1)「ライフサポート友の会(仮称)」の具体化
1.「ライフサポート友の会」(仮称)に向けて、労働者福祉事業団体の利用者間との「出会いの場」の可能性について、労福協が事務局を担っている地域について、関係団体との協議を行い、検証作業を進めます。
(2)労働団体と事業団体との連携、協同組合間協同
1.2014年度より新たな取り組みとして、「労働組合・事業団体合同会議」を開催し、相互の連携・意見交換の場として機能し、労働者自主福祉事業への認識も深まりつつあります。引き続き、労働運動の財産・インフラである労働者自主福祉事業と全国産別との連携と意見交換として開催していきます。

4.労働者福祉運動を担う人材の育成・教育活動

  1. ブロック段階で「労働者福祉運動の理念・歴史・リーダー養成講座」が始まったことから、今後は地域(県単位)での開催をめざします。
  2. 全労金・労済労連と連携し、より多くの労働組合員の参加を求め、各地でのシンポジウム、学習会の開催を追求します。開催にあたっては、4団体(地方労福協、地方連合、労金、全労済県本部)が主体となり開催することをめざします。(理念歴史講座を有効活用)
  3. 学習資材「連帯・協同で作る共生・安心の社会」の改訂版に向けて、関係団体の参加の下、作業に着手します。

5.新公益法人制度への対応

  1. 地方労福協および関連団体で一般社団・財団に移行した法人は85、公益認定された法人が20、解散した法人(合併に伴う解散など)は25となりました。今後、ガバナンスの強化と情報開示が求められ、理事および事務局の負担が増大します。
    また、新法人移行後、2/3を超える法人の責任者、担当者の異動がありました。今後新たな責任者、担当者が制度を理解し、適切な法人運営しなければなりません。
    移行した社団・財団および新設の社団・財団に対し、適切な法人運営の情報を提供していくとともに情報交換の場を設定します。

Ⅳ.経常活動、研修・広報活動

1.生活底上げ・福祉強化キャンペーン

  1. 2015年度は、a)奨学金問題、b)生活困窮者自立支援、c)労働者福祉事業の利用促進と共助拡大――の3つを柱に、現在取り組みを進めています。
  2. 2016~17年においても、2015年の取り組みを検証し、引き続き10~11月を中心に「生活底上げ・福祉強化キャンペーン」を設定し、労福協全体で取り組むべき社会運動課題や自主福祉活動の強化に向けて全国的な取り組みを展開します。

2.各種会議の機能的運営

(1)機関会議
  • ① 幹事会は年に4回程度開催します。
  • ② 三役会は1~2ヶ月に1回程度開催します。
(2)加盟団体会議等
  • ① 事業団体会議、地方労福協会議、労働組合会議を年2~3回開催します。相互の情報交換と意思疎通をはかるほか、それぞれの課題に応じたテーマでの討議、研修等も盛り込み、機能的で充実した運営をめざします。
  • ② ブロック事務局長会議を開催します。年に1度はブロック会長・事務局長会議とします。
  • ③ 事業団体・地方労福協合同会議および労働組合・事業団体合同会議を年1回開催し、必要に応じてテーマ別懇談会を開催します。

3.研修活動の充実

(1)全国研究集会
引き続き年1回全国研究集会を開催します。(2016年度は6月9~10日開催)
(2)地方労福協事務担当者研修会
地方労福協の事務担当者を対象に、中央労福協の活動に理解を深め、相互の交流と意思疎通をはかることを目的に、年1回開催します。

4.海外視察について

 昨年度、一旦停止した海外視察については、加盟団体などの関係団体との協議を進め、共同開催が可能かどうかの検討を進めます。

5.広報活動と情報化

(1)ニュースレター
ニュースレターの月1回定期発行を継続します。また、地方労福協、事業団体、連合等の記事を掲載し、内容の充実をはかります。
(2)中央・地方のホームページの充実
1.ホームページには迅速な情報発信に加え、全国のライフサポートセンター・相談窓口の紹介など重点的活動の情報を掲載します。また、ライフサポートセンター・相談窓口のホームページ掲載に取り組みます。
2.引き続き、地方労福協活動のホームページ作成・充実の支援を行います。
(3)「現行社会保険制度の要点」の発行
引き続き「現行社会保険制度の概要」(掲示用)を、会員および要望のある単組、団体に向け、10月に発行します。中央・地方労福協のホームページおよびスマートフォンからも最新情報が閲覧できるようにします。

6.調査研究活動

  1. 2016~17年度においては、①運動・政策課題と一体的に取り組める実態調査活動、②事業団体等の協同で実施するニーズ調査など、関係団体と相談しながら、必要に応じて検討・実施します。
  2. 地方労福協が実施した調査等の情報や成果の共有の促進をはかります。

7.労働組合の税務・会計サポート

 毎年改正される税制、および導入が始まるマイナンバーの関わりの解説を加えて2015年末、「労働組合等の会計税務に係る実務マニュアル」を発行し、産別・単組の税務対策支援を行います。

8.諸規定の点検・整備と組織運営等の見直し

 規約、諸規定については、専門委員会を設置して全般的な点検を行い、不備や見直しを要する点について改善・整備を行います。あわせて、法人格の取得の是非や、活動サイクル、組織運営のあり方、会員拡大等についても検討します。

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