政策・制度

政策・制度 2012年度政策制度要請

要求内容

1.連帯経済を促進する協同組合の支援(2012 年「国際協同組合年」にあたり)

  1. 国連が2012 年を「国際協同組合年」とすることを宣言し、各国政府に協同組合の育成・促進を求めていることを踏まえ、協同組合を「新しい公共」の担い手として積極的に位置づけ、政府による協同組合支援を含め、その社会的役割・価値を高めていくための政策について検討に着手する。
    1. 2012 年「国際協同組合年」について、政府としての一元的な推進のための体制を整備し、協同組合などの協同組織で結成されている「2012 年国際協同組合年全国実行委員会」が提唱する「協同組合憲章」制定など積極的な協同組合促進の取り組みを推進する。
    2. 2012 年「国際協同組合年」を機に、政府において協同組合の広報や支援など、調整する窓口を設置する。
    3. 2012 年「国際協同組合年」を単発で終わらせるのではなく、協同組合が社会の中で認知され、持続的に役割を発揮できるよう政府による支援を行なう。たとえば、協同組合の統一的な統計調査、学校教育において協同組合に関する授業を採用するなどの施策を検討する。
  2. 税制や会計制度の適用において、協同組合の独自性や社会的役割を考慮する。
    1. 協同組合の非営利の相互扶助組織としての社会的・公共的な役割と持続可能な経営基盤の確立の重要性に鑑み、協同組合税制を堅持する。
    2. 法人課税の見直しにおいて、普通法人の法人税の税率引き下げを行う場合は、協同組合の税率も同率の引き下げを行う。
    3. 国際会計基準の適用により企業会計基準が変化する中で、協同組合組織への適用にあたって組織の独自性を考慮する。
  3. 生協法改正
    急速に進む社会の構造的な変化や今日の経済情勢、災害などから生まれるくらしの厳しさや不安が増す中、消費者・市民からの生協の役割発揮への期待に応えることを可能とする法制度面の改善を求める。
  4. 「協同組合の設立や発展につながる政策」(2012 年国連国際協同組合年の目的)の一環として、「協同労働の協同組合法」を速やかに制定する。また、社会的に排除された人々の就労を通じた社会参加を促進する担い手として、「協同労働の協同組合」や社会的企業の果たす役割を重視し、その育成・支援を充実させるとともに、コミュニティにおける就労と事業化を促進するための政策を推進する。
  5. 「新しい公共」を推進するにあたって、積極的に協同組合組織の果たす役割を評価し、「新しい公共支援事業」などの担い手として政策的に位置づける。また、行政と非営利・協同セクターとの関係を、単なるコスト削減や下請け型の業務委託ではなく、目的や基準を明確にした上での対等なパートナーシップに基づく関係へと再編成する。そのため、地域福祉の向上と市民自治の促進を図る目的で、指定管理者制度等の公共サービスを支え充実させるための制度・政策を総合的に見直し、充実させる。

2.東日本大震災の被災者支援と復興・再生および災害対策

(1) 被災者への生活支援

  1. 地域ごとに被災者の生活、住居、就労、医療・福祉等に関するきめ細かな情報提供や総合相談の体制を整備する。遠隔地の避難者に対しても、寄り添い型支援の拡充をはかる。
  2. 住居や生活基盤を喪失し所持金も底を尽きつつある被災者には、生活保護制度の迅速な活用と弾力的な運用により、当面の生活費を保障するとともに、生活保護の収入要件から義援金・仮払補償金等を除外するよう徹底する。全国各地の避難先で保護を要することから、震災に起因する生活保護費については、その全額を国庫負担とする。
  3. 現行の県レベルの協定等によるプレハブ応急仮設住宅の供給体制の問題点を踏まえ、地産地消に配慮し、地元の雇用改善に結びつく応急仮設住宅の供給体制となるよう、災害救助法の運用を見直す等の措置を行う。
  4. 広域避難等の被災者対応にあたっては、従前の人間関係やコミュニティが最大限保持されるよう引き続き留意する。
  5. 経済的な理由で就学の機会が奪われることがないよう、学費・入学金・給食費等の減免や、無償給付型や地域特別枠を含む公的奨学金制度の拡充をはかる。
  6. 仮設住宅等での水光熱費を負担できない居住者について、国による費用減免措置を検討する。

(2) 「新しい公共」による復興・地域再生と就労支援

 東日本大震災からの復興・再生を、新しい公共の創造、豊かな公共を促進する取り組みとして位置づけ、政策化し、制度の創設を検討する。

  1. 復興・再生を従来型の行政主導・行政本位にせず、市民・地域の力を集めた取り組みにするための、組織的・政策的な位置づけを国の方針として明確化する。具体的には、地域の民間組織や非営利組織等も交えた復興・再生のためのネットワーク組織の結成を促進し、官民一体となった取り組みを活発化させ、これを国として支援する。
  2. 被災地・被災者の「生活」の確保・安定に最大限の努力を費やすとともに、被災地・被災者自身の自主的・自発的な復興・再生の取り組みを支援する制度を設ける。
    また、今回の大震災を契機とし、「新しい公共」を地域・市民が推進する方針を全国的に明確化する。
  3. 被災地・被災者の仕事の確保・創出について、「生涯現役・全員参加・世代間継承型雇用創出事業」などの雇用創出基金事業の拡充を図ると共に、地域の産業創出や従事する就労分野の変更を制度的に支える研修・訓練制度と、公的に就労を保障する制度を組み合わせた、「公的就労・訓練事業制度」を新たに創設する。

(3) 被災者に対する支援のあり方の見直し

 被災者生活再建支援法の 2007 年改正時の国会附帯決議において、施行後4年を目途として総合的な検討を加えることとしている。政府において、東日本大震災の経験を振り返り、今後想定される大規模地震における対応も含め、被災者生活再建支援法の必要な見直し検討のほか、原発事故被害者も含む被災者の生活再建や生活インフラ再建に必要な総合的支援のあり方についても検討を進める。

(4) 今後の災害対策

  1. フードバンクの活用
    災害時における食料支援システムとしてフードバンクを総合的・恒常的に位置づけ、平常時は福祉支援と災害訓練に、災害時はそのままフードバンクのインフラ(基幹物流、地域物流網)が活用できるようシステムの構築をはかる。
  2. 災害時の燃料供給に関する検証
    東日本大震災の経験を振り返り、石油備蓄やその放出、生協を含む現地事業者への供給の実態と問題点について検証を行い、今後の教訓とする。
  3. 緊急輸送道路ネットワークの整備
    中央防災会議等での検討結果が待たれるところであるが、緊急輸送道路の確保は必須であり、橋梁耐震化、障害物除去等の資器材・労力の確保等について、国や関係機関の連携および地方自治体への支援をはかる。

3.格差・貧困社会の是正、セーフティネットの強化

(1)「孤立」から「支え合い」の社会へ ~「社会的包摂戦略」の策定

  1. 社会的に孤立した人々を包摂し、社会の支え合いネットワークから誰1 人排除されることのない社会の実現をめざし、財政的裏付けを持った実効性ある「社会的包摂戦略」を2012 年度中に策定する。
  2. 今後も毎年、相対的貧困率や生活保護捕捉率を政府の責任において調査し公表するとともに、貧困や孤立の実態についてきめ細かな調査を行う。また、貧困・格差の放置は社会的損失(コスト増)につながることを計数的にも明らかにし公表する。
  3. 国民の6人に1 人が貧困(2009 年時点の相対的貧困率16%)、自殺者が14 年連続で3万人超という現実を直視し、貧困や自殺の削減について具体的な数値目標をかかげ政策を総動員する。

(2)パーソナル・サポート・サービスの制度化と生活・就労一体型支援の促進

  1. 現在モデルプロジェクトとして行われている「パーソナル・サポート・サービス」(寄り添い型の生活・就労支援)を「社会的包摂システム」の基軸と位置づけ、その制度化と全国展開に向けて、工程表を速やかに作成し着実に推進する。
  2. モデルプロジェクトの実践を通じてパーソナル・サポーターの養成を着実に進めるとともに、必要とされる資質・能力にふさわしい資格・処遇のあり方を検討・整備する。
  3. 支援の効果の評価にあたっては、経済的自立(就労)のみならず、日常生活や社会生活における自立も含め、支援の段階に応じて適切に評価される尺度を設定する。
  4. 生活・就労一体型支援を全国的に展開するための支援戦略を今秋を目途に策定する。あわせて、そのための体制整備や人材確保をはかるための中期プランの策定や、「生活支援法」(仮称)など必要な法整備を行う。こうした戦略的な位置づけのもとに、2013 年以降も「パーソナル・サポート・サービス事業」や「社会的包摂ワンストップ相談支援事業」を国の財政措置による事業として継続し、大幅な予算の拡充をはかる。
  5. 生活状態が逼迫している相談者に対する食料・住居等に関する緊急支援にワンストップで対応し早期に問題改善できるよう、縦割りになっている各種支援制度の集約再編などの改善を進める。
  6. 餓死・孤立死が相次いでいることから、地域において早期に発見し適切な相談機関につなげることができるよう、行政、支援団体、専門家、ライフライン関係者など幅広い連携・協力体制を構築する
    1. 水道局と生活支援課に滞納者の情報連携を行い、生活・就労支援につなげるよう厚生労働省の通知を徹底する。
    2. 民間事業者(電気・ガス)に対しては、個人情報保護法の解釈上の懸念の払拭する通知の趣旨を徹底するとともに、現在の行政窓口紹介に加えて、よりそいホットライン、パーソナル・サポート・サービス等の連絡先告知を行うよう協力要請する。
    3. 民間支援団体とも連携しアウトリーチできるよう地域のネットワークの構築をはかる。
  7. 本年8月6日に期限切れとなる「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」を5年間延長する。延長期間中にその後のさらなる包括型の支援体制を強化するための議論(審議会等)の場を設け、かつホームレスを含む生活困窮者に対する総合的かつ包括的な新しい法体制を準備する。

(3)「第2のセーフティネット」の改善と恒久制度化

  1. 「第2 のセ-フティネット」の改善と恒久化を実施し、生活保護に適正な位置づけを与えることにより、社会保障全体の生活保障機能を強化する。
    1. 生活保護受給者の急増に対し、保護基準の切り下げ等給付水準の切り下げにより対処することなく、「第2 のセ-フティネット」の保障水準の引き上げ、受給要件の緩和、手続きの簡素化等、より普遍性の高い仕組みの構築により対処する。
    2. 貸付実施により負債を負って生活保護受給者となるケ-スが多いため、「第2 のセ-フティネット」は「給付」を原則とし、「貸付」は補足的位置づけとする。このため、「総合支援資金」は他制度に機能を移管して、原則廃止とする。
    3. 「第2のセーフティネット」の安定財源を確保するため、「税・社会保障の一体改革」において必要な対応を実施する。
    4. 利用者ニーズに即したサービス体系及び実施機関の再編成と簡素化を行い、市町村を調整主体とし、求職者支援と住宅保障及び対人支援を一体的に運用するワンストップ・サ-ビスを可能にする仕組みを構築し、利用者の制度へのアクセスを改善する。
    5. 求職者支援、住宅保障及び対人支援を受けることが権利であることを法定し、実効性ある不服申立制度を整備する。
  2. 「居住の権利」を基本的人権と位置づけ、分立する住宅保障の仕組みを統合し、一体的な運用を可能とする仕組みに再編成するとともに、サービス内容を改善し、恒久的な制度として実施する。
    1. 実施機関は、市町村もしくは福祉事務所に一元化する。
    2. 現在、「総合支援資金」による貸付とされている「住宅入居費」を給付とし、決定までの「つなぎ資金」とともに住宅手当給付の窓口で一体的に扱うものとする。
    3. 公営住宅の確保や民間賃貸住宅の借り上げなどによって、住宅現物給付の仕組みを創設する。
    4. 現行住宅手当の支給水準を生活保護基準を上回る水準に設定する。
    5. 現行住宅手当の支給要件について、離職要件を撤廃し、「住宅喪失のおそれのある方」とする。
    6. 地域における居住支援協議会の促進をはかるとともに、公的家賃保証制度を創設し、民間借家市場への公的支援を強化する。
    7. ハローワークに配置されている「住居・生活支援アドバイザー」の一層の機能向上をはかるために、人材確保・育成と定着へ向けた方策を策定する。
  3. 求職者支援制度については、訓練メニューの質量の充実をはかるとともに、利用者にとって利用しやすい制度・運用になっているか検証し必要な改善を行う。

(4)人間としての尊厳が保障され、利用しやすい生活保護制度への改善

  1. 現在行われている生活保護制度の見直しに当たって
    1. 生活保護の医療費(一部)自己負担は行うべきではない。
    2. 貸求職者支援制度との関係においては、体調の悪化や訓練内容のミスマッチなどやむを得ない理由で訓練を欠席した者まで生活保護を打ち切られることがあってはならない。
  2. 雇用政策と社会保障との連携・拡充、第2セーフティネットの恒久化を含めた総合的な視点から日本の生活保障のあり方を見直す中で、生活“保護”の名称変更を含め生存権保障を実体化する方向で生活保護法の改正を検討する。
  3. 生活保護制度は「最後の」セ-フティネットであり、国の責任において確実な財源保障を行う。このため、生活保護費の全額国庫負担も視野に見直しをはかるとともに、当面、生活保護申請が集中している自治体への財政負担を軽減する仕組みを検討する。
  4. 福祉現場の業務拡大や自立支援業務の高度化等を踏まえ、ケースワーカー(福祉事務所職員)の増員、専門性の確保をはかる。
  5. 申請権や受給権を侵害する違法な運用(いわゆる水際作戦)を是正し、生活保護法の本来の趣旨に添った運用を徹底する。申請権を確実に行使できるよう、実施機関の窓口に申請書一式を備え置くことを義務づける。また、申請等に関する苦情や相談、不服申し立て(審査請求)を受付け、調査権と行政への勧告権を持つ「第三者機関」を設置する。
  6. 生活保護制度を広く市民に知らせ、申請書やパンフレットを福祉事務所や行政の各相談窓口に設置するなど、誰もが利用しやすい制度にする。
  7. 資産を使い果たさなければ保護しないために自立をかえって困難にしているという観点から、最低生活費3ヶ月分程度までの現金・預貯金は認めるなど資産要件を緩和する。

(5)ナショナルミニマムの確保と生活の底上げ

  1. 地方分権改革の推進にあたっては、生存権や安全の確保、人としての尊厳に関わるサービスについては国が最低基準を設けることを前提とするとともに、当事者・社会的弱者の声が反映されるよう留意する。
  2. 最低賃金を大幅に引き上げ、生活できる賃金水準の確保をはかる。
  3. 公的機関が民間企業などへ委託・発注する事業において、公正労働基準と労働関係法規の遵守、社会保険の全面適用等を基準とする公契約基本法や条例を制定する。

(6)貧困ビジネスへの規制強化

  1. 劣悪な居住環境や不要なサービスを強要し、高額な利用料を生活保護費からピンハネするなど様々な問題を引き起こしている「無料低額宿泊所」に対する規制を強化する。このため、第1種社会福祉事業の実体を有するにもかかわらず第2種社会福祉事業として無許可営業することを容認する厚生労働省社会・援護局長通知(平成15 年)をただちに廃止し、最低基準を設け、取り締まり・罰則を強化する。
  2. 追い出し屋被害を根絶するため、「追い出し屋規制法」を通常国会に再提出し、速やかに成立させる。また、滞納家賃のデータベース化に対しては、収入が不安定な人たちが賃貸住宅市場から排除されないよう歯止めをかける。

(7)経済的理由で夢を断念させない ~ 教育・人材育成での機会均等

  1. 司法修習生に対する給費制を含む経済的支援
    経済的理由から法曹になることを断念することがないよう、改正裁判所法施行後1年以内に、法曹養成制度全体の見直しを早急に行うとともに、司法修習生に対する経済的支援について修習専念義務の在り方等多様な観点から検討し、給費制を含め適切な措置を講ずる。検討にあたっては、市民や当事者などを含め、多様な意見が反映されるような体制を整備する。
  2. 奨学金制度の拡充
    国・地方自治体は、義務教育終了後の学生に対する公的奨学金制度を充実する。

    1. 世帯収入や学業成績に関係なく、希望に応じて貸与する。
    2. 貸与奨学金は全面的に無利子とする。
    3. 水準を、一定程度の生活費まで保障できるように改善する。
    4. 意欲・学力等の一定の基準を満たしながら、世帯収入が一定以下の学生に対する、無償給付型奨学金制度を創設する。

(8)就労・自立支援における社会的事業者の活用と育成

 2011 年10 月より実施された「求職者支援制度」や、既存の公共職業訓練制度、及び生活保護受給者や就労困難な若者等に対する自立支援プログラムなど、全体の就労支援・自立支援政策の中で、「社会的企業」や「協同労働の協同組合」等を積極的に活用することで、地域における就労創出、さらには「新しい公共」の推進を連動させる政策を推進する。
 特に、「求職者支援訓練」においては、制度の抜本的見直し(①求職を一律の目的としない、仕事おこしや分野別の縦割りを超えたカリキュラムの設計と弾力的運用、②東北被災地など就労困難地域における就労率の一層の緩和措置、③就労に困難を抱える若者や高齢者、障がい者などに受講の枠を広げるためにも雇用保険財源から一般財源への移行等)を行い、公的職業訓練の一層の充実と(公共的社会サービスを担う地域の非営利組織、協同組合、中小企業などのコミュニティ事業者が実施主体となれるような)制度の弾力的運用、訓練メニューの創造的開発などを図る。

(9)就労創出による社会参加と居場所づくり

 就労困難な若者や女性、高齢者、障がい者を対象に、地域における就労創出による社会参加と居場所づくりを目的に、社会的訓練などの公的職業訓練と公的に就労を保障する制度を組み合わせた「公的訓練・就労事業制度」を新たに創設する。この制度は、戦後の失業対策事業の評価なども踏まえ、時限的かつ地域での就労創出と産業創造に配慮した制度として設計する。

4.多重債務対策

 改正貸金業法の完全施行後の状況を踏まえ、次の課題について強化をはかる。

  1. 多重債務者対策本部が貸金業者による脱法行為を厳しく監視できるよう、都道府県・多重債務対策協議会における実態の検証・分析の強化と多重債務者対策本部との関係で有機的な連携をはかる。
  2. ヤミ金撲滅に向けて引き続き一層の取り組み強化をはかる。また、クレジットカードのショッピング枠の現金化を悪用した業者による、法定金利相当額を大幅に上回る高額な手数料問題が顕在化しており、これを規制する法制度が未整備であることを踏まえ、必要な法整備をはかる。
  3. 低所得者や債務整理後の借りられなくなった人に対する制度として、生活福祉資金制度の改善をはじめ、生活再建支援のサポート機能を有した仕組みや民間非営利組織等(労金・生協・NPO等)が活用できる保証制度を確立し、個人向けセーフティネット貸付の拡充をはかる。

5.消費者政策の充実強化

(1) 悪質商法(3.4 兆円の経済損失)の根絶で、良質な事業・雇用の創出へ〔総論〕

  1. 消費者被害に伴う経済的損失額は3兆4千億円とも推計(平成20 年版国民生活白書)されており、消費者のみならず善良な事業者や労働者を含めた国民全体の最小不幸社会を実現する観点から、悪質商法の根絶、消費者行政の充実に国と地方が協力し責任をもって取り組む。
  2. このため、国は消費者被害に伴う経済的損失額について毎年推計値を公表し、国および地方の消費者行政の強化・充実に向けた世論喚起をはかる。また、この経済的損失分(GDP0.7%)を良質な事業・雇用創出に振り替えることを「日本再生の基本戦略」の中に位置づける。

(2) 集団的消費者被害回復に係る訴訟制度等の導入

 「消費者安全法の一部を改正する法律案」、「特定商取引に関する法律の一部を改正する法律案」、「集団的消費者被害回復に係る訴訟手続に関する法律案(仮称)」を今国会で成立させること。
 あわせて、行政による経済的不利益賦課制度、悪徳事業者による財産の隠匿・散逸防止策の導入について検討を進める。

(3) 国民生活センターの国への移行の在り方について

 国民生活センターが有する全ての機能を維持し、基本的に一体性を確保しつつ、消費者行政全体の機能の充実・強化を実現するための国への移行の在り方について結論を得る。国民生活センターの国への移行にあたっては、「消費者庁及び消費者委員会設置法附則3項」にあるように、消費者庁・消費者委員会・国民生活センターの機能と組織をトータルで見直すことが必要であり、国会や消費者委員会等でも幅広く検討を行なう。

(4) 地方消費者行政の充実・強化

 「地方消費者行政活性化基金」は、被災県を除き 2012 年度末で取り崩しを終了するが、消費者庁は、2013 年度以降の基金継続等の財政支援を含む地方消費者行政支援策を具体化する。支援措置の具体化を通じて、地方における消費者行政予算の確保、地方の消費者行政に携わる人材の支援・育成、相談スタッフの位置づけの明確化と待遇改善、消費者相談体制の維持・強化、行政処分の執行体制の強化など、地方消費者行政の充実・強化をはかる。

(5) 消費者団体の公益的活動に対する支援

 消費者庁は、消費者団体の公益的活動に対する支援を行なう。特に、集団的消費者被害回復に係る訴訟制度を担う特定適格消費者団体への財政面・情報面の支援を行い、新たな訴訟制度の実効性を確保する。また、弁護士法第72 条の規定に例外を設け、特定適格消費者団体が必要な報酬・費用を回収できる仕組みについて明記されるようにする。

6.中小企業勤労者の福祉格差の是正

  1. 中小企業勤労者の福祉格差の是正に向けて、国・自治体・事業主の役割・責務等の明確化、勤労者福祉に関する制度運用への労使の参画促進、ワーク・ライフ・バランスの推進、財政面の充実、関連施策との関係整備等をはかる観点から、関係法制を整備する。
  2. 中小企業勤労者福祉サービスセンターの自立と再生に向けて、広域化を推進するとともに、勤労者の暮らしと福祉に関する総合福祉センターをも展望し、魅力あるサービス内容への抜本改革を進める。
    1. 全ての会員がいつでもサービスを気軽に利用できる仕組みを確立する。
    2. 既存の企業内福利厚生と重複せずに、従業員ニーズに合わせてサービス・会費が選択できる複数会員制度の導入を進める。
    3. 地域の福祉団体やNPO等とのネットワークにより、個別企業では提供困難な子育て・介護支援、生活福祉相談、生涯生活設計支援、共済・生活保障、自己啓発、健康増進、生きがいづくりなど、ワーク・ライフ・バランスの支援や勤労者の多様なニーズに応えるサービスを提供する。
    4. 大企業や公務部門からの福利厚生事業の受託化を積極的に進め、地域の全勤労者を対象とした事業展開をはかる。特に、非正規労働者や退職者を事業の適用対象とし、必要な財政支援を行う。
    5. 中小企業勤労者福祉サービスセンター未設置地域における設置促進の取り組みへの支援を行う。
  3. 中小企業勤労者福祉サービスセンターの再編(広域化と改革)を進めるにあたって、都道府県が積極的な役割を果たすよう、国の支援・指導を強化するとともに、裏付けとなる財源確保をはかる。また、地域における勤労者のライフサポート事業の促進やサービスセンターの統合・事務の集中化を支援するための基金の造成など、国庫補助廃止に変わる新たなスキームでの国の支援策を早急に検討・実施する。
  4. 中小企業退職金共済制度(中退共)への加入促進をはかるとともに、以下の制度改善を行う。
    1. 一般の中退共では、「掛金納付期間が1年未満は支給なし(2年未満は掛金納付額を下回る)」となっているが、企業の倒産・廃業の場合には掛金相当額が受給できるよう措置を講ずる。また、特定業種(建設業、清酒製造業、林業)退職金共済制度においては掛金納付期間が2年未満は支給されないことから、一般の中退共と同様に「1年未満」となるよう措置を講ずる。

7.勤労者の生活設計・保障への支援

(1) 財形制度の改善

【普及促進に関する項目】
  1. 財形貯蓄制度の導入促進と融資制度の利用促進を図るために、実効性のある周知広報活動および支援を行う。
    国が行っている企業(特に中小企業)および勤労者(非正規雇用者を含む)への実効ある周知広報活動が不十分であり、財形貯蓄・融資制度の導入が進んでいない。
    また、財形制度導入企業の事務負担や財形制度導入時の負荷が過大であり、特に中小企業において、財形制度導入が進まないうえに大企業も含め導入企業割合が減少している。
    雇用・能力開発機構が廃止され財形事務は勤労者退職金共済機構に移管となったが、中退共と財形年金を合わせて周知するなど、中小企業に対してのパイプを活かした活動を推進願いたい。
【税制改正に関する項目】
  1. 非正規雇用者に対して、一般財形、財形年金、財形住宅の制度が利用しやすいように対策を講ずる。
  2. 財形年金貯蓄及び財形住宅貯蓄の非課税限度額を1,000 万円に引き上げる。
  3. 非課税限度額を超えた金額のみ課税となる積立を認める。
  4. 非課税財形(住宅・年金)契約時の年齢または期間制限(新規契約時・受取時)を撤廃する。
    年金・住宅共通
    ・新規契約 55歳未満
    年金
    ・積立終了後の最大据置期間 5年
    ・受取開始年齢 60歳以降
    ・受取期間 20年以内
  5. 育児および介護休業・休職期間は、積立中断期間には算入しない。
  6. 財形住宅貯蓄の増改築等における適格払出しの費用要件75 万円超を30 万円超にする。
  7. 勤務先の都合により離職した失業者に対して、非課税適用継続期間の延長と非課税財形の払出し・解約する際の適格払出しの要件を緩和する。
  8. 災害・疾病その他これに類するやむを得ない理由で税務署長の証明のある払出しの際の遡及課税としない措置を、財形年金貯蓄に加え財形住宅貯蓄も対象とし、かつ、払出し時の利子等も非課税とする。

(2) 共済制度および相続税非課税制度の改善

  1. 火災共済の異常危険準備金の洗替保証率を現行の40%から50%に引き上げる。
  2. 自然災害共済における異常危険準備金の積立率を現行の15%から30%に、洗替保証限度率について、現行の75%を100%に拡充する。
  3. 遺族の生活資金確保のため、死亡共済金の相続税非課税限度額について、「現行限度額(「法定相続人数×500万円)」に、「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算する。
    なお、税制の抜本的な改革等の中で、相続税制の見直しがなされた場合においても、少なくとも現行の非課税措置における対象範囲および水準を維持する。

8.安心・信頼できる社会保障の構築

(1) 子育て支援

  1. 仕事と育児の両立支援のため、ファミリーサポートセンター未設置市町村の解消を図るとともに、病児・病後児や早朝・夜間等の緊急預かりのための「病児・緊急対応強化事業」については、地域における事業導入の促進をはかる。
  2. 子ども・子育て新システムの制度設計については、実施主体となる自治体がすべての子どもと子育て世帯への利用保証をはかり、現場での機動的な運用が可能な制度とする方向で、包括的なシステム構築の検討をはかる。

(2) 年金制度

  1. 「新しい年金制度」の創設を含め、年金制度の改革にあたっては加入者・受給者の意見反映を踏まえ、十分な議論を行う。
  2. マクロ経済スライドについては、少なくとも名目年金額を維持する現行制度の範囲内とする。ただし、基礎的消費支出を賄う位置づけを有する基礎年金部分にはマクロ経済スライドは適用しない。
  3. 公的年金積立金の運用者は、国連の「責任投資原則」に署名し、この趣旨に沿って運用する。

9.くらしの安全・安心の確保

(1)食品の安全・安心の確保

  1. 放射性物質に関する適切な情報提供
    2012 年4月から、食品に含まれる放射性セシウムの基準値が変更された。新しい基準値は、これまでの「暫定規制値」と比べてかなり厳しい値となっているが、食品を介した被ばくについて不安を訴える声は、依然として多く寄せられている。一方、今回の原発事故による食品からの内部被ばくの実態に関わる情報は、国民には十分に提供されていない。食品からの被ばくについては、現状を正しく分かりやすく国民に伝えること。また、食品の放射性物質の検査結果は随時公表されているが、それだけでなく、リスク管理の根拠や方法、また、食品から実際に受ける被ばく線量についても、分かりやすく積極的に情報提供を行なうこと。
  2. 食品安全基本法第21条第1項に規定する「基本的事項」の改定
    2004 年1月16 日閣議決定された「基本的事項」は、2009 年9月に消費者庁が設置されるなどの行政体制が変更されたにもかかわらず改定されていない。また、2010 年9月3日公表の『「消費者基本計画」における「工程の明確化」について』の「施策番号20」では、『「基本的事項」の改定は、平成22 年度の早い時期に着手します。』と明記されている。現在消費者委員会において、この改定の議論が開始されているが、消費者庁設置以降の行政体制をふまえた改定を早急に行ない、それに基づいて必要な措置を行なう。
  3. 食品添加物のリスク評価
    2003 年の食品安全基本法の制定により、化学物質の管理においては、リスクアナリシスの枠組みに則って進められているが、同法が制定される前に指定された指定添加物や既存添加物の中には、安全性のデータが不十分なものが残されている。食品に使用する化学物質の適正な管理を推進し、食品の安全への消費者の理解を促進するために、根拠が不十分な食品添加物について早急にリスク評価を進める。

(2)フードバンク活動の促進

  1. 食品廃棄・ロスを削減し食品として有効に活用する観点から、フードバンクを「新しい公共」の担い手として積極的に位置づけ、省庁横断的な施策を推進する。
  2. 災害時における食料支援システムとしてフードバンクを総合的・恒常的に位置づけ、平常時は福祉支援と災害訓練に、災害時はそのままフードバンクのインフラ(基幹物流、地域物流網)が活用できるようシステムの構築をはかる。(再掲)
  3. 国や自治体の備蓄米・食料等を活用してフードバンクへの食料安定供給をはかるとともに、基幹・地域物流網整備への支援を行う。
  4. フードバンク活動を促進・普及するための支援策、補助事業を拡充するとともに、業務の継続性を担保する(マッチング・情報管理システムの構築や管理者の養成、評価システムの構築など)施策を講ずる。
  5. 食品関連企業や物流企業のフードバンクへの支援を促進するためのインセンティブとして、CSR(企業の社会的責任)を評価する仕組みや助成・税制優遇を検討する。
  6. 福祉事務所窓口での困窮者へのフードバンク食品の提供やパントリー施設の整備、食品ロスの削減を通じた環境負荷の低減など、福祉・環境政策とも連携した施策を推進する。

(3)環境や防災に配慮した住宅整備促進等の住宅政策の改善

  1. 税制度の緩和・改善
    1. 住宅ローン控除制度の恒久化
      住宅ローン等を利用してマイホームを取得または改増築等した場合、住宅借入金等特別控除が一定の要件を満たせば適用され所得税額控除される。特別控除制度は特例措置として延長しつつ今日に至っているが、特例措置ではなく制度の恒久化をはかる。
    2. 住宅取得に係わる消費税増税の緩和・特別税率の設定
      平成24年度の税制改正大綱が昨年12月10日に閣議決定された。本年3月30日消費増税関連法案が閣議決定され、同日夕、法案が国会に提出された。消費税率が引き上げられた場合、住宅取得を控えることになりかねない。住宅取得に係わる消費税率の緩和策として、消費税の据え置きまたは軽減税率の導入等により、住宅取得時の税負担の緩和をはかる。
  2. 補助金制度の拡充
    東日本大震災を機に安全で震災に強い住宅や省エネルギー住宅がクローズアップされてきている。既に国による補助金制度はあるが、さらに①高耐震・高耐久住宅、②省エネ対策住宅、③耐震・バリアフリー・省エネリフォーム、④液状化地盤改良工事等への国の補助金制度の拡充、および行政窓口の一本化をはかる。
    また、内需経済の活性化に向け、十分な予算措置をはかる。
  3. 悪徳リフォーム事業者対策
    リフォーム事業は近年様々な分野からの進出もありその競争が激化している。中には高齢者等をねらった悪質な事業者も存在する。悪質事業者から消費者を保護するための対策に早急に取り組む。
  4. その他
    新築住宅に義務化されている瑕疵担保責任の適用を、一定規模以上のリフォームにも適用するよう、制度を新設する。

(4)環境分野

  1. 日本の2020 年目標と、2013 年からの具体的対策を早急に策定すること
    温室効果ガスの2050 年までの長期目標をふまえて、2020 年の目標とそのための2013 年からの具体的な対策を早急に策定する。
  2. 2013 年以降の京都クレジットや国内クレジットの扱いを早急に明確にすること
    現在、事業者等が保有している京都クレジットについて、2013 年以降も使用可能なのか、または2013 年以降に新たな京都クレジットの取得や活用は可能かどうかを明確にする。
    また、2012 年度までに国内クレジットとして認められたものは、基本的に2013 年以降も温室効果ガス削減効果が継続するものであり、2013 年以降もそのまま有効とすべきである。

(5)エネルギー政策について

 原子力エネルギーに代わるエネルギー源の確保、再生可能エネルギーの積極推進および省エネの推進を前提として原子力発電への依存度を低減し、最終的には原子力発電に依存しないエネルギー政策を目指していく。

  1. 短期的な課題として、電力供給制約に対応するため、無理のない省エネによってエネルギー需要を抑制する一方、既存発電設備の有効活用などによってエネルギー供給の増強を図り、安定的・低廉な価格での資源・エネルギー供給を実現する。
  2. 再生可能エネルギーの積極推進、化石エネルギーの高度利用、分散型エネルギーシステムの開発・普及やスマートグリッドの活用、省エネ技術・製品の普及、エネルギー節約型のライフスタイル・ワークスタイルの普及などに対する政策的な支援を行う。
  3. エネルギー政策に起因する産業の空洞化や雇用の喪失を回避し、グリーン・ジョブの創出と「公正な移行」を通じてグリーン・イノベーションに繋げる。

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