社会保険制度 解説:健康保険・共済組合短期 健康保険(共済組合短期給付)は、被保険者又は被扶養者が業務外の事由によって疾病にかかり又は負傷したとき、または死亡したり出産した場合に保険給付を行うものです。 1.被保険者等 (1)被保険者 適用事業所に使用される人はすべて被保険者になります。 パートタイマーも、勤務時間、勤務日数が一般の社員の4分の3以上ある場合は、被保険者となります。 ただし、次に掲げる人は被保険者になりません。 [1]船員保険の被保険者(疾病任意継続被保険者を除く。) [2]臨時に使用される人で次に掲げる人 (ア)2ヵ月以内の期間を定めて使用される人であって、その定めた期間を超えて使用されることが見込まれない人 (イ)日々雇入れられる人 (1ヵ月を超えて引き続き使用される場合は被保険者となります。) [3]季節的業務に使用される人 (当初から継続して4ヵ月を超えて使用される場合は被保険者となります。) [4]臨時的事業の事業所に使用される人 (当初から継続して6ヵ月を超えて使用される場合は被保険者となります。) [5]事業所の所在地が一定しない事業に使用される人 [6]国民健康保険組合の事業所に使用される人 [7]後期高齢者医療の被保険者等 [8]健康保険の保険者、共済組合の承認を受けて国民健康保険へ加入した人 [9]適用事業所に使用される人で1週間又は1ヵ月間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の4分の3未満である短時間労働者に該当し、かつ、次のいずれかの要件に該当する人 イ.1週間の所定労働時間が20時間未満であること ロ.その事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれないこと ハ.報酬(最低賃金に算入しないものに相当するものを除く。)の月額が8万8千円未満であること 最低賃金に算入しないものとは次の①~⑥までに掲げるものとします。 ①臨時に支払われる賃金 ②1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等) ③所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金 ④所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金 ⑤深夜労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分 ⑥最低賃金において算入しないことと定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当) ニ.学生その他これらに準ずる人 (2)適用事業所 以下の事業所は適用事業所になります。 [1]次に掲げる事業の事業所であって、常時5人以上従業員を使用している事業所。 イ 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業 ロ 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業 ハ 鉱物の採掘又は採取の事業 ニ 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業 ホ 貨物又は旅客の運送の事業 ヘ 貨物積卸しの事業 ト 焼却、清掃又はとさつの事業 チ 物の販売又は配給の事業 リ 金融又は保険の事業 ヌ 物の保管又は賃貸の事業 ル 媒介周旋の事業 ヲ 集金、案内又は広告の事業 ワ 教育、研究又は調査の事業 カ 疾病の治療、助産その他医療の事業 ヨ 通信又は報道の事業 タ 社会福祉法に定める社会福祉事業及び更生保護事業法に定める更生保護事業 レ 弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業 ※5人以上であっても、個人経営で農業・漁業などの第1次産業、理容業などのサービス業、宗教業などは、適用事業所にはなりません。 [2]常時従業員を使用している法人の事業所 株式会社、有限会社、宗教法人などすべての法人は、事業の種類に関係なく、常時使用している従業員が1人でもいれば、適用事業所になります。 ※適用事業所以外の事業所でも、厚生労働大臣の認可を受けて適用事業所となることができます。認可を受けようとするときは、その事業所に使用される者(被保険者となるべき者に限る)の2分の1以上の同意を得て、厚生労働大臣に申請しなければなりません。 (3)被扶養者 被扶養者に該当する条件は、日本国内に住所(住民票)を有しており、被保険者により主として生計を維持されている次の範囲となります。 日本国内に住所を有しない海外在住の方でも特例的に被扶養者として認定される場合があります。 [1]外国において留学をする学生 [2]外国に赴任する被保険者(国民年金第3号被保険者を扶養する国民年金第2号被保険者を含む。以下同じ。)に同行する者 [3]観光、保養またはボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者 [4]被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者であって[2]に掲げる者と同等と認められる者 [5][1]から[4]までに掲げる者のほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者 (4)任意継続被保険者 退職前に継続して2カ月以上加入期間がある人は、資格喪失日より20日以内に申請することによって、引き続き2年間被保険者となることができます。 なお、保険料は全額自己負担となります。(使用者の半額負担はありません。) 2.保険料等 (1)保険料 保険料は、被保険者ひとりひとりについて、標準報酬月額及び標準賞与額に保険料率をかけて計算されます。 (2)保険料率 [1]協会管掌健康保険 標準報酬月額と標準賞与額の3%~13%の範囲で都道府県単位の保険料を協会が決定。 関連資料:令和6年度都道府県単位保険料率 [2]健康保険組合 標準報酬月額と標準賞与額の3%~13%の範囲で、組合規約で決定します。原則、労使折半。労使負担割合は、規約で定めて、事業主負担割合を増やすことができます。 [3]共済組合 各共済組合ごとに決定され、負担割合は原則として労使折半です。 (3)標準報酬月額及び標準賞与額 【標準報酬月額】 標準報酬月額は、被保険者が受けるさまざまな報酬(月給、週給、日給、歩合給等)を月額に換算し、その月額を一定の幅で区分した「標準報酬月額等級」にあてはめて決定します。標準報酬月額の区分は、第1級58,000円~第47級1,390,000円となっています。 その標準報酬月額は次のときに決められます。 ○資格取得時決定 被保険者の資格を取得したときにその後に受ける報酬の見込み月額で決定します。 ・資格取得月が1月~5月のときはその年の8月まで適用 ・資格取得月が6月~12月のときは翌年の8月まで適用 ○定時決定 被保険者が実際にうける報酬と、標準報酬月額にズレがないように、定期的に標準報酬月額の見直しをします。毎年4月から6月に支払われた報酬の平均をもとに7月に決定します。この標準報酬月額は、原則として、その年の9月から翌年の8月まで適用されます。 ○随時改定 報酬が大幅に変動したときに標準報酬月額を改定します。随時改定は、次のすべてに該当する場合に行われます。 [1]昇(降)給などで固定的賃金に変動があったとき [2]固定的賃金の変動月以後引き続く3ヵ月間に支払われた報酬の平均月額と従来の標準報酬月額との間に、原則として2等級以上の差が生じたとき [3]3ヵ月とも支払基礎日数が17日以上あるとき ・改定月が1月~6月までのときはその年の8月まで適用 ・改定月が7月~12月までのときは翌年の8月まで適用 (ただし、さらに随時改定が行われる場合はその前月まで) [4]産前産後休業、育児休業等を終了した際の改定 産前産後休業を終了した被保険者、育児休業等(養育する子が3歳に達するまでの場合に限ります。)を終了した被保険者が、事業主を経由して申出したときは、産前産後休業(引き続き育児休業等を開始した人を除く)、育児休業等終了月(ただし、終了する日が末日の場合は、その翌月)以後3月間に受けた報酬の平均を基準として、育児休業等終了日の翌日から起算して2月を経過する月の翌月から標準報酬月額を改定することができます。 <報酬とは> 健康保険でいう報酬とは、金銭・現物を問わず、被保険者が事業主から労働の対償として受けるすべてのものをいいます。 金銭によるものの具体例 現物によるものの具体例 報酬に該当するもの ・基本給 ・残業手当 ・勤務手当 ・役付手当 ・家族手当 ・通勤手当 ・住宅手当 ・賞与等(年4回以上) など ・通勤定期券 ・自社製品 ・衣服 ・食事 ・社宅、寮 など (衣服、食事、住宅については、都道府県ごとに標準価額が定められていて、それによって金銭に換算します。) 報酬に該当しないもの ・賞与等(年3回以下) ・大入袋 ・見舞金 ・解雇予告手当 ・退職金 ・傷病手当金 など ・制服、作業服 ・見舞品 ・生産施設の一部である住居 など 【標準賞与額】 標準賞与額は、支払ごとに1,000円未満を切り捨てた賞与の額をいいます。 健康保険における賞与額の上限は、年間(4月1日~3月31日)の賞与の累計が573万円になります。 <賞与とは> 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、被保険者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、3ヵ月を超える期間ごとに受けるものをいいます。 【任意継続被保険者の標準報酬月額】 任意継続被保険者の標準報酬月額は、次のいずれかの低い方の額とします。ただし、健康保険組合の規約により、資格喪失時の標準報酬月額とすることができます。 [1]資格喪失時の標準報酬月額 [2]その人の加入する保険集団の前年(1月から3月までは前々年)の9月30日における全被保険者の標準報酬月額の平均額 (4)保険料の免除等 [1]産前産後休業期間中(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)、 育児・介護休業法に基づく育児休業期間中については、事業主の申請により、被保険者負担分・事業主負担分ともに免除されます。ただし、育児休業等の開始月については、同月の末日が育児休業等期間中であること又は同月中に14日以上育児休業等を取得した場合に限り、賞与については、育児休業等を暦月で1か月超(暦日で計算)取得した場合に限り免除されます。 [2]介護保険の第2号被保険者(40歳以上65歳未満)は、前記の保険料率に介護保険料率が上乗せされ、原則として労使で折半されます。 [3]事業主は、被保険者の負担すべき前月分の保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月分及びその月分)を給与等から控除することができ、毎月の保険料は、事業主が併せて翌月の末日までに納付します。 3.国庫負担等 [1]事務費の国庫負担 予算の範囲内において、事務(前期高齢者納付金等、後期高齢者支援金及び、日雇拠出金並びに介護納付金の納付に関する事務を含む)の執行に要する費用を国庫が負担します。 [2]協会管掌健康保険の国庫補助 ・療養の給付、入院時食事療養費、傷病手当金、出産手当金等の支給に要する費用の額並びに前期高齢者納付金の納付に要する費用の額に給付割合を乗じて得た額の合算額の16.4% ・介護納付金の納付に要する費用の16.4% [3]健康保険組合の国庫負担 各健康保険組合における被保険者数を基準として厚生労働大臣が算定します。 [4]共済組合 ・国家公務員共済組合については、短期給付の50%、事務費の全額を国庫が負担します。 ・地方公務員共済組合については、地方公共団体が負担します。 4.給付内容 【療養の給付】 (1)療養の給付の範囲 被保険者や被扶養者が疾病にかかり又は負傷したときは、保険医療機関等において次に掲げる療養の給付(家族療養費)を受けることができます。 [1]診察 [2]薬剤又は治療材料の支給 [3]処置、手術その他の治療 [4]居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護 [5]病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護 (2)一部負担金 療養の給付等を受けたときは、次の区分により一部負担金を保険医療機関等に支払わなければなりません。 年齢・所得区分 被保険者本人 被扶養者 70歳以上 75歳未満 一定以上所得者 3割 3割 一般 2割 2割 70歳未満 標準報酬月額に関係なく 3割 70歳以上74歳未満 (被保険者が一定以上所得者の場合は3割) 2割 義務教育就学前以後70歳未満 3割 義務教育就学前 2割 ※70歳以上75歳未満の一定以上所得者とは標準報酬月額が28万円以上の人をいいます。ただし、年収が520万円(単身者は383万円)未満である旨を届け出た場合は、2割負担となります。 ※災害等で一部負担金を支払うことが困難であると認められる人に対しては、一部負担金が減額、免除又は猶予されます。 【入院時生活療養費】 支給要件:療養病床に入院する65歳以上の人(特定長期入院被保険者)の生活療養(食事療養並びに温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養)に要した費用について支給されます。 自己負担額:生活療養を受けたときは次の生活療養標準負担額を負担します。 区分 食費(1食につき) 居住費(1日につき) 課税世帯 医療区分Ⅰの人(医療の必要性の低い人) 490円※450円 370円 医療区分II・Ⅲの人(医療の必要性の高い人)(指定難病の人以外) 490円※450円 370円 指定難病の人 280円 0円 市町村民税非課税の世帯に属する人等 230円 370円 年金受給額80万円以下の人等 140円 370円 ※管理栄養士等を配置していない保険医療機関に入院している場合は450円 【入院時食事療養費】 入院をして食事療養を受けた場合は、1食につき次のとおり食事療養標準負担額を負担(1日の負担額は3食を限度)します。 一般被保険者・家族 490円 指定難病患者等 280円 市町村民税非課税者等 90日以内の入院 230円 90日を超えた入院 180円 所得が一定水準に満たない70歳以上の高齢受給者 110円 【保険外併用療養費】 (1)支給要件 被保険者又は被扶養者が次に掲げる療養を受けたときに支給されます。(被扶養者に対するものは、家族療養費として支給されます。) [1]評価療養(高度の医療技術を用いた療養等で保険給付の対象となるかについて評価を行うことが必要な療養として厚生労働大臣が定めるもの) [2]患者申出療養(高度の医療技術を用いた療養等で患者の申出に基づき、保険給付の対象となるかについて評価を行うことが必要な療養として厚生労働大臣の定めるもの) [3]選定医療(被保険者の選定に係る特別の病室の提供その他の厚生労働大臣が定める療養) (2)自己負担額 療養の給付における一部負担金、入院時食事療養費における食事療養標準負担額、入院時生活療養における生活療養標準負担額と同様になります。紹介状なしに特定機能病院や500床以上の大病院で受診する場合は、初診で医科7,000円以上、歯科5,000円以上、再診で医科3,000円以上、歯科1,900円以上の特別料金を負担が義務付けられています。 【療養費】 (1)支給要件 被保険者証が手元になく全額自費で支払った等、療養の給付等が受けられなかった場合に、保険者がやむを得ないと認めたときは療養費が支給されます。(療養の給付等は現物支給になりますが、療養費は現金支給になります。) 具体的には、次のような場合があります。 [1]やむを得ない事情で、健康保険を扱っていない医療機関にかかったとき (けがをして運ばれた医療機関が保険医療機関でなかったときなど) [2]やむを得ない事情で、被保険者証を提示できなかったとき (旅行先や出張先で急病になり、被保険者証が手元になかったときなど) [3]はり・きゅう・あんま・マッサージなどの治療を医師の同意のもとに受け、保険者がその必要を認めたとき [4]必要があってコルセット・ギブスなど治療用装具を用いたとき [5]出張等でやむを得ず海外で医者にかかったとき [6]入院時食事療養費の標準負担額の軽減措置の条件を満たしているのに受けられなかったときなど (2)支給額 療養に要した費用から一部負担金を控除した額及び食事療養に要した額から標準負担額を控除した額を基準として保険者が定めた額 【訪問看護療養費】 (1)支給要件 被保険者又は被扶養者が疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にあると主治医が認めた場合に、訪問看護ステーション等の療養上の世話又は必要な診療の補助を受けたときは、その訪問看護に要した費用について訪問看護療養費(家族訪問看護療養費)が支給されます。 (2)基本利用料 療養の給付における一部負担金と同様になります。 【移送費】 (1)支給要件 被保険者又は被扶養者が療養の給付等を受けるために病院又は診療所に移送されたときに移送費(家族移送費)が支給されます。移送費は移送により健康保険法に基づく適切な療養を受けること、移送の原因である疾病又は負傷により移動することが著しく困難であること及び緊急その他やむを得ない等保険者が必要と認める場合に支給されます。 (2)支給額 移送費の額は、最も経済的な通常の経路及び方法により移送されたときの費用により算定した額とします。ただし、現に要した費用の額を超えることはできません。 【傷病手当金】 (1)支給要件 被保険者が疾病又は負傷のため労務に服することができず仕事を休み、報酬が減額されたり、受けられなかったりした場合に傷病手当金が支給されます。ただし、任意継続被保険者は支給されません。 傷病手当金は、次の条件を満たしたときに支給されます。 [1]疾病又は負傷のため療養中であること(自宅療養を含む) [2]労務に服することができないこと [3]労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過していること (3日続けて休業した場合に第4日目から支給されます。) [4]報酬が受けられないこと(報酬を受けていても傷病手当金の額より少ないときはその差額が支給されます。) (2)支給期間 支給を始めた日から通算して1年6ヵ月分 (3)支給額 1日当たりの金額:支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3) 支給開始日とは、最初に傷病手当金が支給された日のことをいいます。 ・支給開始日の以前の期間が12ヵ月に満たない場合は、次の[1]と[2]を比べて少ない方の額を使用して計算します。 [1]支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額 [2]28万円(当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額) ・報酬を受けた場合でも報酬の額が傷病手当金の額より少ないときはその差額が支給されます。 【出産手当金】 (1)支給要件 被保険者が出産したときは、出産手当金が支給されます。ただし、任意継続被保険者は支給されません。 (2)支給期間 出産の日(出産が予定日より遅れた場合は予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産後56日までの期間で労務に服さなかった期間 (3)支給額 1日当たりの金額:支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3) ・支給開始日とは、最初に出産手当金が支給された日のことをいいます。 ・支給開始日の以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、次の[1]と[2]を比べて少ない方の額を使用して計算します。 [1]支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額 [2]28万円(当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額) ・休んだ期間について報酬を受けた場合でも報酬の額が出産手当金の額より少ないときはその差額が支給されます。 (4)出産手当金と傷病手当金の調整 出産手当金と傷病手当金の支給要件を同時に満たしているときは、出産手当金が優先し、出産手当金が支給されている間は、傷病手当金は支給されません。傷病手当金の額が出産手当金の額よりも大きい場合はその差額が支給されます。 【出産育児一時金】 (1)支給要件 被保険者又は被扶養者が出産したときは、出産育児一時金(家族出産育児一時金)が支給されます。 (2)支給額 1児につき488,000円。ただし、産科医療補償制度に加入する医療機関において出産したときは、産科医療補償制度に係る費用が上乗せされ、500,000円となります。 【埋葬料】 (1)支給要件 被保険者又は被扶養者が死亡した場合には埋葬料(家族埋葬料)が支給されます。 (2)支給額 50,000円(埋葬を行った者については、50,000円内で実費) 【休業手当(共済組合)】 共済組合の組合員が被扶養者の病気などで欠勤した場合、標準報酬日額に応じて国公共済は5割、地公共済は6割が支給されます。 【高額療養費】 (1)支給要件 1ヵ月の自己負担額が一定額を超えたとき、又は同一世帯で自己負担額を合算した額が一定額を超えたときは、超えた分が高額療養費として支給されます。 (2)支給額 [1]同一人 被保険者又は被扶養者が、同一医療機関で同一月に支払った額が下表の高額療養費算定基準額を超えた場合は、超えた分が支給されます。 [2]世帯合算 同一世帯で同一月に21,000円以上支払った人が2人以上いるときは、それらを合算して、下表の高額療養費算定基準額を超えた場合は、超えた分が支給されます。(1人が2つ以上の異なる医療機関に支払ったときも同様) [3]多数回該当 同一世帯で高額療養費に係わる療養があった月以前12ヵ月以内に既に3回以上高額療養費が支給されている(限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む)ときは、自己負担限度額がさらに軽減され、4か月目からは下表の高額療養費算定基準額の多数回該当の額を超えた分が支給されます。 [4]特定疾病 血友病患者、腎透析患者等の高額な療養を長期間受けなければならない人については、同一医療機関で同一月に支払った額が10,000円(腎透析患者の上位所得者は20,000円)を超えた場合は、超えた分が支給されます。この高額療養費は、現物給付となります。 (1)70歳未満の高額療養費算定基準額 区分 標準報酬月額 高額療養費算定基準額 原則 多数回該当 ア 83万円以上 252,600円+(総医療費-842,0000円)×1% 140,100円 イ 53万円~79万円 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 93,000円 ウ 28万円~50万円 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 44,400円 エ 26万円以下 57,600円 44,400円 オ 低所得者 35,400円 24,600円 (注)1.総医療費とは保険適用される診療費用の総額(10割) 2.低所得者とは、市町村民税の非課税者及び免除者とその被扶養者。 3.「区分ア」又は「区分イ」に該当する場合、市区町村民税が非課税であっても、標準報酬月額での「区分ア」又は「区分イ」の該当となる。 (2)70歳以上75歳未満の高額療養費算定基準額 区分 標準報酬月額 高額療養費算定基準額 同一人の外来 入院を含む世帯合算 ア 83万円以上 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% <140,100円> イ 53万円~79万円 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% <33,000円> ウ 28万円~50万円 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% <14,400円> エ 一般(26万円以下) 18,000円 (年間上限14.4万円) 57,600円<44,400円> オ 低所得者 II 8,000円 24,600円 I 15,000円 1.低所得者IIは、市町村民税の非課税者及び免除者とその被扶養者。 2.低所得者Iは、被保険者とその扶養家族全ての人の収入から必要経費・控除額を除いた後の所得がない場合。 3.現役並み所得者に該当する場合は、市区町村民税が非課税等であっても現役並み所得者となる。 4.< >は多数回該当 【高額介護合算療養費】 支給要件:同一世帯内に介護保険の受給者がいる場合に、1年間(毎年8月1日~翌年7月31日まで)にかかった医療保険と介護保険の自己負担額の合算額が著しく高額になった場合は、負担を軽減するために自己負担限度額を超えた額が医療保険、介護保険の自己負担額の比率に応じて、現金で健康保険から支給されます。 支給額:年齢・所得区分ごとの自己負担限度額 (1)70歳未満の介護合算算定基準額 区分 標準報酬月額 基準額 ア 83万円以上 212万円 イ 53万円~79万円 141万円 ウ 28万円~50万円 67万円 エ 26万円以下 50万円 オ 低所得者 34万円 (注)1.低所得者とは、市町村民税の非課税者及び免除者とその被扶養者。 (2)70歳以上75歳未満の介護合算算定基準 区分 標準報酬 基準額 上位所得者 現役並所得者 標準報酬月額28万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割の人) 83万円以上 212万円 53万円~79万円 141万円 28万円~50万円 67万円 一般(26万円以下) 56万円 住民税非課税者・低所得者 II 31万円 住民税非課税者・低所得者 I 19万円※ (注) 1.低所得者IIは、70歳以上の方で、世帯全員が住民税非課税の場合等 2.低所得者Iは、70歳以上の方で世帯全員が住民税非課税であり、所得が一定基準(年金収入80万円以下等)を満たす場合等。※介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円。 算定方法:毎年8月1日~翌年7月31日までの1年間に支払った医療保険の自己負担額(高額療養費を除く)および介護保険の自己負担額(高額介護サービス費、高額介護予防サービス費を除く)が対象となります。ただし、保険外併用療養費の差額部分や入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担額は対象になりません。 (3)70歳未満の方と70歳から74歳の方が混在する場合 70歳から74歳の方の自己負担額に(2)の基準額を適用し、支給金額①を計算します。次に、70歳から74歳の方のなお残る自己負担額と70歳未満の方の自己負担額の合計額に(1)の基準額を適用し、支給金額②を計算します。①と②を合計した額が支給金額になります。 【資格喪失後の給付】 ○傷病手当金及び出産手当金 (1)支給要件 被保険者の資格を喪失した日の前日までに引き続き1年以上被保険者であった人であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けていた人は、継続して同一の保険者からその給付を受けることができます。 (2)支給額 [1]傷病手当金 1日につき資格喪失時に受けていた額が支給開始日から通算して1年6ヵ月まで支給されます。ただし、喪失後に労務可能になった日以後は、支給された日数が1年6ヵ月に満たなくても支給されません。 [2]出産手当金 1日につき喪失時に受けていた額が出産後56日まで支給されます。 ○死亡に関する給付 (1)支給要件 下記の被保険者が死亡した場合、その被保険者の最後の保険者から埋葬料の支給を受けることができます。 [1]資格喪失後に傷病手当金又は出産手当金の給付を受けている人が死亡したとき [2]資格喪失後に傷病手当金又は出産手当金を受けていた人がその給付を受けなくなった日後3ヵ月以内に死亡したとき [3]被保険者の資格を喪失した後3ヵ月以内に死亡したとき (2)支給額 50,000円(埋葬を行った者については、50,000円内で実費) ○出産に関する給付 (1)支給要件 被保険者の資格を喪失した日の前日までに引き続き1年以上被保険者であった人が資格を喪失した日後6ヵ月以内に出産したときは、被保険者として受けることができるはずであった出産育児一時金の支給を最後の保険者から受けることができます。 (出産手当金については平成19年4月からは廃止) (2)支給額 [1]出産育児一時金 1児につき488,000円 ただし、産科医療補償制度に加入する医療機関において出産したときは、産科医療補償制度に係る費用が上乗せされ、500,000円となります。 【付加給付】 健康保険組合は、傷病・出産手当金付加金、家族療養付加金等の給付を行うことができます。また、共済の場合にもそれぞれの共済の事情により付加給付が実施されています。 【退職者医療(国民健康保険)】 (平成26年度までの間における65歳未満の退職被保険者等が65歳に達するまで) (1)対象 被用者年金各法に基づく老齢又は退職を支給事由とする年金給付を受けることができる人で次のいずれかに該当する人 [1]年金保険の被保険者等であった期間が20年(受給期間短縮特例等により年金給付を受けることができる人はその期間)以上の人 [2]40歳に達した月以後の年金保険の被保険者等であった期間が10年以上の人 (2)一部負担金 健康保険制度の療養の給付等の一部負担金と同じ (3)財源 退職者の保険料、被用者保険等保険者の拠出 (4)その他 健康保険組合は、厚生労働大臣の認可を受け独自に退職者医療制度を行うことができます。 【日雇特例被保険者】 (1)日雇特例被保険者 適用事業所に使用される下記の人は、日雇特例被保険者となります。ただし、適用事業所において、引き続く2ヵ月間に通算して26日以上使用される見込みがないと明らかなとき、任意継続被保険者であるとき等厚生労働大臣の承認を受けた人は日雇特例被保険者とはなりません。 [1]日々雇入れられる人であって、1ヵ月を超えて引き続き使用されない人 [2]2ヵ月以内の期間を定めて使用される人であって、その定めた期間を超えて使用されることが見込まれない人 [3]季節的業務に使用される人であって、継続して4ヵ月を超えて使用されない人 [4]臨時的事業に使用される人であって、継続して6ヵ月を超えて使用されない人 (2)保険給付 [1]支給要件 保険給付を受ける日の属する月の前2ヵ月間に通算して26日以上、又は保険給付を受ける日の属する月の前6ヵ月間に通算78日分以上の保険料を納付されている場合に原則として保険給付が受けられます。また、傷病手当金、埋葬料、出産手当金等は別の要件があります。 [2]給付内容 健康保険の一般被保険者に関する給付と同様ですが、傷病手当金等の支給額の算出方法や支給期間が異なります。 [3]保険料額 賃金日額により第1級390円(440円)~第11級3,230円(3,760円)となっています。( )内は、介護保険第2号被保険者の保険料額。 詳しくは事業所を管轄する年金事務所又は健康保険組合にお問い合わせください。 戻る
社会保険制度 解説:健康保険・共済組合短期
健康保険(共済組合短期給付)は、被保険者又は被扶養者が業務外の事由によって疾病にかかり又は負傷したとき、または死亡したり出産した場合に保険給付を行うものです。
1.被保険者等
(1)被保険者
適用事業所に使用される人はすべて被保険者になります。
パートタイマーも、勤務時間、勤務日数が一般の社員の4分の3以上ある場合は、被保険者となります。
ただし、次に掲げる人は被保険者になりません。
[1]船員保険の被保険者(疾病任意継続被保険者を除く。)
[2]臨時に使用される人で次に掲げる人
(ア)2ヵ月以内の期間を定めて使用される人であって、その定めた期間を超えて使用されることが見込まれない人
(イ)日々雇入れられる人
(1ヵ月を超えて引き続き使用される場合は被保険者となります。)
[3]季節的業務に使用される人
(当初から継続して4ヵ月を超えて使用される場合は被保険者となります。)
[4]臨時的事業の事業所に使用される人
(当初から継続して6ヵ月を超えて使用される場合は被保険者となります。)
[5]事業所の所在地が一定しない事業に使用される人
[6]国民健康保険組合の事業所に使用される人
[7]後期高齢者医療の被保険者等
[8]健康保険の保険者、共済組合の承認を受けて国民健康保険へ加入した人
[9]適用事業所に使用される人で1週間又は1ヵ月間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の4分の3未満である短時間労働者に該当し、かつ、次のいずれかの要件に該当する人
イ.1週間の所定労働時間が20時間未満であること
ロ.その事業所に継続して1年以上使用されることが見込まれないこと
ハ.報酬(最低賃金に算入しないものに相当するものを除く。)の月額が8万8千円未満であること
最低賃金に算入しないものとは次の①~⑥までに掲げるものとします。
①臨時に支払われる賃金
②1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
③所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金
④所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金
⑤深夜労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分
⑥最低賃金において算入しないことと定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)
ニ.学生その他これらに準ずる人
(2)適用事業所
以下の事業所は適用事業所になります。
[1]次に掲げる事業の事業所であって、常時5人以上従業員を使用している事業所。
イ 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業
ロ 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業
ハ 鉱物の採掘又は採取の事業
ニ 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業
ホ 貨物又は旅客の運送の事業
ヘ 貨物積卸しの事業
ト 焼却、清掃又はとさつの事業
チ 物の販売又は配給の事業
リ 金融又は保険の事業
ヌ 物の保管又は賃貸の事業
ル 媒介周旋の事業
ヲ 集金、案内又は広告の事業
ワ 教育、研究又は調査の事業
カ 疾病の治療、助産その他医療の事業
ヨ 通信又は報道の事業
タ 社会福祉法に定める社会福祉事業及び更生保護事業法に定める更生保護事業
レ 弁護士、公認会計士その他政令で定める者が法令の規定に基づき行うこととされている法律又は会計に係る業務を行う事業
※5人以上であっても、個人経営で農業・漁業などの第1次産業、理容業などのサービス業、宗教業などは、適用事業所にはなりません。
[2]常時従業員を使用している法人の事業所
株式会社、有限会社、宗教法人などすべての法人は、事業の種類に関係なく、常時使用している従業員が1人でもいれば、適用事業所になります。
※適用事業所以外の事業所でも、厚生労働大臣の認可を受けて適用事業所となることができます。認可を受けようとするときは、その事業所に使用される者(被保険者となるべき者に限る)の2分の1以上の同意を得て、厚生労働大臣に申請しなければなりません。
(3)被扶養者
被扶養者に該当する条件は、日本国内に住所(住民票)を有しており、被保険者により主として生計を維持されている次の範囲となります。
日本国内に住所を有しない海外在住の方でも特例的に被扶養者として認定される場合があります。
[1]外国において留学をする学生
[2]外国に赴任する被保険者(国民年金第3号被保険者を扶養する国民年金第2号被保険者を含む。以下同じ。)に同行する者
[3]観光、保養またはボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者
[4]被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者であって[2]に掲げる者と同等と認められる者
[5][1]から[4]までに掲げる者のほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者
(4)任意継続被保険者
退職前に継続して2カ月以上加入期間がある人は、資格喪失日より20日以内に申請することによって、引き続き2年間被保険者となることができます。
なお、保険料は全額自己負担となります。(使用者の半額負担はありません。)
2.保険料等
(1)保険料
保険料は、被保険者ひとりひとりについて、標準報酬月額及び標準賞与額に保険料率をかけて計算されます。
(2)保険料率
[1]協会管掌健康保険
標準報酬月額と標準賞与額の3%~13%の範囲で都道府県単位の保険料を協会が決定。
関連資料:令和6年度都道府県単位保険料率
[2]健康保険組合
標準報酬月額と標準賞与額の3%~13%の範囲で、組合規約で決定します。原則、労使折半。労使負担割合は、規約で定めて、事業主負担割合を増やすことができます。
[3]共済組合
各共済組合ごとに決定され、負担割合は原則として労使折半です。
(3)標準報酬月額及び標準賞与額
【標準報酬月額】
標準報酬月額は、被保険者が受けるさまざまな報酬(月給、週給、日給、歩合給等)を月額に換算し、その月額を一定の幅で区分した「標準報酬月額等級」にあてはめて決定します。標準報酬月額の区分は、第1級58,000円~第47級1,390,000円となっています。
その標準報酬月額は次のときに決められます。
○資格取得時決定
被保険者の資格を取得したときにその後に受ける報酬の見込み月額で決定します。
・資格取得月が1月~5月のときはその年の8月まで適用
・資格取得月が6月~12月のときは翌年の8月まで適用
○定時決定
被保険者が実際にうける報酬と、標準報酬月額にズレがないように、定期的に標準報酬月額の見直しをします。毎年4月から6月に支払われた報酬の平均をもとに7月に決定します。この標準報酬月額は、原則として、その年の9月から翌年の8月まで適用されます。
○随時改定
報酬が大幅に変動したときに標準報酬月額を改定します。随時改定は、次のすべてに該当する場合に行われます。
[1]昇(降)給などで固定的賃金に変動があったとき
[2]固定的賃金の変動月以後引き続く3ヵ月間に支払われた報酬の平均月額と従来の標準報酬月額との間に、原則として2等級以上の差が生じたとき
[3]3ヵ月とも支払基礎日数が17日以上あるとき
・改定月が1月~6月までのときはその年の8月まで適用
・改定月が7月~12月までのときは翌年の8月まで適用
(ただし、さらに随時改定が行われる場合はその前月まで)
[4]産前産後休業、育児休業等を終了した際の改定
産前産後休業を終了した被保険者、育児休業等(養育する子が3歳に達するまでの場合に限ります。)を終了した被保険者が、事業主を経由して申出したときは、産前産後休業(引き続き育児休業等を開始した人を除く)、育児休業等終了月(ただし、終了する日が末日の場合は、その翌月)以後3月間に受けた報酬の平均を基準として、育児休業等終了日の翌日から起算して2月を経過する月の翌月から標準報酬月額を改定することができます。
<報酬とは>
健康保険でいう報酬とは、金銭・現物を問わず、被保険者が事業主から労働の対償として受けるすべてのものをいいます。
・残業手当
・勤務手当
・役付手当
・家族手当
・通勤手当
・住宅手当
・賞与等(年4回以上)
など
・自社製品
・衣服
・食事
・社宅、寮
など
(衣服、食事、住宅については、都道府県ごとに標準価額が定められていて、それによって金銭に換算します。)
・大入袋
・見舞金
・解雇予告手当
・退職金
・傷病手当金
など
・見舞品
・生産施設の一部である住居
など
【標準賞与額】
標準賞与額は、支払ごとに1,000円未満を切り捨てた賞与の額をいいます。
健康保険における賞与額の上限は、年間(4月1日~3月31日)の賞与の累計が573万円になります。
<賞与とは>
賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、被保険者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、3ヵ月を超える期間ごとに受けるものをいいます。
【任意継続被保険者の標準報酬月額】
任意継続被保険者の標準報酬月額は、次のいずれかの低い方の額とします。ただし、健康保険組合の規約により、資格喪失時の標準報酬月額とすることができます。
[1]資格喪失時の標準報酬月額
[2]その人の加入する保険集団の前年(1月から3月までは前々年)の9月30日における全被保険者の標準報酬月額の平均額
(4)保険料の免除等
[1]産前産後休業期間中(産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間)、 育児・介護休業法に基づく育児休業期間中については、事業主の申請により、被保険者負担分・事業主負担分ともに免除されます。ただし、育児休業等の開始月については、同月の末日が育児休業等期間中であること又は同月中に14日以上育児休業等を取得した場合に限り、賞与については、育児休業等を暦月で1か月超(暦日で計算)取得した場合に限り免除されます。
[2]介護保険の第2号被保険者(40歳以上65歳未満)は、前記の保険料率に介護保険料率が上乗せされ、原則として労使で折半されます。
[3]事業主は、被保険者の負担すべき前月分の保険料(被保険者がその事業所に使用されなくなった場合においては、前月分及びその月分)を給与等から控除することができ、毎月の保険料は、事業主が併せて翌月の末日までに納付します。
3.国庫負担等
[1]事務費の国庫負担
予算の範囲内において、事務(前期高齢者納付金等、後期高齢者支援金及び、日雇拠出金並びに介護納付金の納付に関する事務を含む)の執行に要する費用を国庫が負担します。
[2]協会管掌健康保険の国庫補助
・療養の給付、入院時食事療養費、傷病手当金、出産手当金等の支給に要する費用の額並びに前期高齢者納付金の納付に要する費用の額に給付割合を乗じて得た額の合算額の16.4%
・介護納付金の納付に要する費用の16.4%
[3]健康保険組合の国庫負担
各健康保険組合における被保険者数を基準として厚生労働大臣が算定します。
[4]共済組合
・国家公務員共済組合については、短期給付の50%、事務費の全額を国庫が負担します。
・地方公務員共済組合については、地方公共団体が負担します。
4.給付内容
【療養の給付】
(1)療養の給付の範囲
被保険者や被扶養者が疾病にかかり又は負傷したときは、保険医療機関等において次に掲げる療養の給付(家族療養費)を受けることができます。
[1]診察
[2]薬剤又は治療材料の支給
[3]処置、手術その他の治療
[4]居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
[5]病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
(2)一部負担金
療養の給付等を受けたときは、次の区分により一部負担金を保険医療機関等に支払わなければなりません。
75歳未満
(被保険者が一定以上所得者の場合は3割)
※70歳以上75歳未満の一定以上所得者とは標準報酬月額が28万円以上の人をいいます。ただし、年収が520万円(単身者は383万円)未満である旨を届け出た場合は、2割負担となります。
※災害等で一部負担金を支払うことが困難であると認められる人に対しては、一部負担金が減額、免除又は猶予されます。
【入院時生活療養費】
支給要件:療養病床に入院する65歳以上の人(特定長期入院被保険者)の生活療養(食事療養並びに温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養)に要した費用について支給されます。
自己負担額:生活療養を受けたときは次の生活療養標準負担額を負担します。
※管理栄養士等を配置していない保険医療機関に入院している場合は450円
【入院時食事療養費】
入院をして食事療養を受けた場合は、1食につき次のとおり食事療養標準負担額を負担(1日の負担額は3食を限度)します。
【保険外併用療養費】
(1)支給要件
被保険者又は被扶養者が次に掲げる療養を受けたときに支給されます。(被扶養者に対するものは、家族療養費として支給されます。)
[1]評価療養(高度の医療技術を用いた療養等で保険給付の対象となるかについて評価を行うことが必要な療養として厚生労働大臣が定めるもの)
[2]患者申出療養(高度の医療技術を用いた療養等で患者の申出に基づき、保険給付の対象となるかについて評価を行うことが必要な療養として厚生労働大臣の定めるもの)
[3]選定医療(被保険者の選定に係る特別の病室の提供その他の厚生労働大臣が定める療養)
(2)自己負担額
療養の給付における一部負担金、入院時食事療養費における食事療養標準負担額、入院時生活療養における生活療養標準負担額と同様になります。紹介状なしに特定機能病院や500床以上の大病院で受診する場合は、初診で医科7,000円以上、歯科5,000円以上、再診で医科3,000円以上、歯科1,900円以上の特別料金を負担が義務付けられています。
【療養費】
(1)支給要件
被保険者証が手元になく全額自費で支払った等、療養の給付等が受けられなかった場合に、保険者がやむを得ないと認めたときは療養費が支給されます。(療養の給付等は現物支給になりますが、療養費は現金支給になります。)
具体的には、次のような場合があります。
[1]やむを得ない事情で、健康保険を扱っていない医療機関にかかったとき
(けがをして運ばれた医療機関が保険医療機関でなかったときなど)
[2]やむを得ない事情で、被保険者証を提示できなかったとき
(旅行先や出張先で急病になり、被保険者証が手元になかったときなど)
[3]はり・きゅう・あんま・マッサージなどの治療を医師の同意のもとに受け、保険者がその必要を認めたとき
[4]必要があってコルセット・ギブスなど治療用装具を用いたとき
[5]出張等でやむを得ず海外で医者にかかったとき
[6]入院時食事療養費の標準負担額の軽減措置の条件を満たしているのに受けられなかったときなど
(2)支給額
療養に要した費用から一部負担金を控除した額及び食事療養に要した額から標準負担額を控除した額を基準として保険者が定めた額
【訪問看護療養費】
(1)支給要件
被保険者又は被扶養者が疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にあると主治医が認めた場合に、訪問看護ステーション等の療養上の世話又は必要な診療の補助を受けたときは、その訪問看護に要した費用について訪問看護療養費(家族訪問看護療養費)が支給されます。
(2)基本利用料
療養の給付における一部負担金と同様になります。
【移送費】
(1)支給要件
被保険者又は被扶養者が療養の給付等を受けるために病院又は診療所に移送されたときに移送費(家族移送費)が支給されます。移送費は移送により健康保険法に基づく適切な療養を受けること、移送の原因である疾病又は負傷により移動することが著しく困難であること及び緊急その他やむを得ない等保険者が必要と認める場合に支給されます。
(2)支給額
移送費の額は、最も経済的な通常の経路及び方法により移送されたときの費用により算定した額とします。ただし、現に要した費用の額を超えることはできません。
【傷病手当金】
(1)支給要件
被保険者が疾病又は負傷のため労務に服することができず仕事を休み、報酬が減額されたり、受けられなかったりした場合に傷病手当金が支給されます。ただし、任意継続被保険者は支給されません。
傷病手当金は、次の条件を満たしたときに支給されます。
[1]疾病又は負傷のため療養中であること(自宅療養を含む)
[2]労務に服することができないこと
[3]労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過していること
(3日続けて休業した場合に第4日目から支給されます。)
[4]報酬が受けられないこと(報酬を受けていても傷病手当金の額より少ないときはその差額が支給されます。)
(2)支給期間
支給を始めた日から通算して1年6ヵ月分
(3)支給額
1日当たりの金額:支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)
支給開始日とは、最初に傷病手当金が支給された日のことをいいます。
・支給開始日の以前の期間が12ヵ月に満たない場合は、次の[1]と[2]を比べて少ない方の額を使用して計算します。
[1]支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
[2]28万円(当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額)
・報酬を受けた場合でも報酬の額が傷病手当金の額より少ないときはその差額が支給されます。
【出産手当金】
(1)支給要件
被保険者が出産したときは、出産手当金が支給されます。ただし、任意継続被保険者は支給されません。
(2)支給期間
出産の日(出産が予定日より遅れた場合は予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産後56日までの期間で労務に服さなかった期間
(3)支給額
1日当たりの金額:支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)
・支給開始日とは、最初に出産手当金が支給された日のことをいいます。
・支給開始日の以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、次の[1]と[2]を比べて少ない方の額を使用して計算します。
[1]支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
[2]28万円(当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額)
・休んだ期間について報酬を受けた場合でも報酬の額が出産手当金の額より少ないときはその差額が支給されます。
(4)出産手当金と傷病手当金の調整
出産手当金と傷病手当金の支給要件を同時に満たしているときは、出産手当金が優先し、出産手当金が支給されている間は、傷病手当金は支給されません。傷病手当金の額が出産手当金の額よりも大きい場合はその差額が支給されます。
【出産育児一時金】
(1)支給要件
被保険者又は被扶養者が出産したときは、出産育児一時金(家族出産育児一時金)が支給されます。
(2)支給額
1児につき488,000円。ただし、産科医療補償制度に加入する医療機関において出産したときは、産科医療補償制度に係る費用が上乗せされ、500,000円となります。
【埋葬料】
(1)支給要件
被保険者又は被扶養者が死亡した場合には埋葬料(家族埋葬料)が支給されます。
(2)支給額
50,000円(埋葬を行った者については、50,000円内で実費)
【休業手当(共済組合)】
共済組合の組合員が被扶養者の病気などで欠勤した場合、標準報酬日額に応じて国公共済は5割、地公共済は6割が支給されます。
【高額療養費】
(1)支給要件
1ヵ月の自己負担額が一定額を超えたとき、又は同一世帯で自己負担額を合算した額が一定額を超えたときは、超えた分が高額療養費として支給されます。
(2)支給額
[1]同一人
被保険者又は被扶養者が、同一医療機関で同一月に支払った額が下表の高額療養費算定基準額を超えた場合は、超えた分が支給されます。
[2]世帯合算
同一世帯で同一月に21,000円以上支払った人が2人以上いるときは、それらを合算して、下表の高額療養費算定基準額を超えた場合は、超えた分が支給されます。(1人が2つ以上の異なる医療機関に支払ったときも同様)
[3]多数回該当
同一世帯で高額療養費に係わる療養があった月以前12ヵ月以内に既に3回以上高額療養費が支給されている(限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む)ときは、自己負担限度額がさらに軽減され、4か月目からは下表の高額療養費算定基準額の多数回該当の額を超えた分が支給されます。
[4]特定疾病
血友病患者、腎透析患者等の高額な療養を長期間受けなければならない人については、同一医療機関で同一月に支払った額が10,000円(腎透析患者の上位所得者は20,000円)を超えた場合は、超えた分が支給されます。この高額療養費は、現物給付となります。
(1)70歳未満の高額療養費算定基準額
(注)1.総医療費とは保険適用される診療費用の総額(10割)
2.低所得者とは、市町村民税の非課税者及び免除者とその被扶養者。
3.「区分ア」又は「区分イ」に該当する場合、市区町村民税が非課税であっても、標準報酬月額での「区分ア」又は「区分イ」の該当となる。
(2)70歳以上75歳未満の高額療養費算定基準額
<140,100円>
<33,000円>
<14,400円>
(年間上限14.4万円)
1.低所得者IIは、市町村民税の非課税者及び免除者とその被扶養者。
2.低所得者Iは、被保険者とその扶養家族全ての人の収入から必要経費・控除額を除いた後の所得がない場合。
3.現役並み所得者に該当する場合は、市区町村民税が非課税等であっても現役並み所得者となる。
4.< >は多数回該当
【高額介護合算療養費】
支給要件:同一世帯内に介護保険の受給者がいる場合に、1年間(毎年8月1日~翌年7月31日まで)にかかった医療保険と介護保険の自己負担額の合算額が著しく高額になった場合は、負担を軽減するために自己負担限度額を超えた額が医療保険、介護保険の自己負担額の比率に応じて、現金で健康保険から支給されます。
支給額:年齢・所得区分ごとの自己負担限度額
(1)70歳未満の介護合算算定基準額
(注)1.低所得者とは、市町村民税の非課税者及び免除者とその被扶養者。
(2)70歳以上75歳未満の介護合算算定基準
標準報酬月額28万円以上で高齢受給者証の負担割合が3割の人)
(注)
1.低所得者IIは、70歳以上の方で、世帯全員が住民税非課税の場合等
2.低所得者Iは、70歳以上の方で世帯全員が住民税非課税であり、所得が一定基準(年金収入80万円以下等)を満たす場合等。※介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円。
算定方法:毎年8月1日~翌年7月31日までの1年間に支払った医療保険の自己負担額(高額療養費を除く)および介護保険の自己負担額(高額介護サービス費、高額介護予防サービス費を除く)が対象となります。ただし、保険外併用療養費の差額部分や入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担額は対象になりません。
(3)70歳未満の方と70歳から74歳の方が混在する場合
70歳から74歳の方の自己負担額に(2)の基準額を適用し、支給金額①を計算します。次に、70歳から74歳の方のなお残る自己負担額と70歳未満の方の自己負担額の合計額に(1)の基準額を適用し、支給金額②を計算します。①と②を合計した額が支給金額になります。
【資格喪失後の給付】
○傷病手当金及び出産手当金
(1)支給要件
被保険者の資格を喪失した日の前日までに引き続き1年以上被保険者であった人であって、その資格を喪失した際に傷病手当金又は出産手当金の支給を受けていた人は、継続して同一の保険者からその給付を受けることができます。
(2)支給額
[1]傷病手当金
1日につき資格喪失時に受けていた額が支給開始日から通算して1年6ヵ月まで支給されます。ただし、喪失後に労務可能になった日以後は、支給された日数が1年6ヵ月に満たなくても支給されません。
[2]出産手当金
1日につき喪失時に受けていた額が出産後56日まで支給されます。
○死亡に関する給付
(1)支給要件
下記の被保険者が死亡した場合、その被保険者の最後の保険者から埋葬料の支給を受けることができます。
[1]資格喪失後に傷病手当金又は出産手当金の給付を受けている人が死亡したとき
[2]資格喪失後に傷病手当金又は出産手当金を受けていた人がその給付を受けなくなった日後3ヵ月以内に死亡したとき
[3]被保険者の資格を喪失した後3ヵ月以内に死亡したとき
(2)支給額
50,000円(埋葬を行った者については、50,000円内で実費)
○出産に関する給付
(1)支給要件
被保険者の資格を喪失した日の前日までに引き続き1年以上被保険者であった人が資格を喪失した日後6ヵ月以内に出産したときは、被保険者として受けることができるはずであった出産育児一時金の支給を最後の保険者から受けることができます。 (出産手当金については平成19年4月からは廃止)
(2)支給額
[1]出産育児一時金
1児につき488,000円
ただし、産科医療補償制度に加入する医療機関において出産したときは、産科医療補償制度に係る費用が上乗せされ、500,000円となります。
【付加給付】
健康保険組合は、傷病・出産手当金付加金、家族療養付加金等の給付を行うことができます。また、共済の場合にもそれぞれの共済の事情により付加給付が実施されています。
【退職者医療(国民健康保険)】
(平成26年度までの間における65歳未満の退職被保険者等が65歳に達するまで)
(1)対象
被用者年金各法に基づく老齢又は退職を支給事由とする年金給付を受けることができる人で次のいずれかに該当する人
[1]年金保険の被保険者等であった期間が20年(受給期間短縮特例等により年金給付を受けることができる人はその期間)以上の人
[2]40歳に達した月以後の年金保険の被保険者等であった期間が10年以上の人
(2)一部負担金
健康保険制度の療養の給付等の一部負担金と同じ
(3)財源
退職者の保険料、被用者保険等保険者の拠出
(4)その他
健康保険組合は、厚生労働大臣の認可を受け独自に退職者医療制度を行うことができます。
【日雇特例被保険者】
(1)日雇特例被保険者
適用事業所に使用される下記の人は、日雇特例被保険者となります。ただし、適用事業所において、引き続く2ヵ月間に通算して26日以上使用される見込みがないと明らかなとき、任意継続被保険者であるとき等厚生労働大臣の承認を受けた人は日雇特例被保険者とはなりません。
[1]日々雇入れられる人であって、1ヵ月を超えて引き続き使用されない人
[2]2ヵ月以内の期間を定めて使用される人であって、その定めた期間を超えて使用されることが見込まれない人
[3]季節的業務に使用される人であって、継続して4ヵ月を超えて使用されない人
[4]臨時的事業に使用される人であって、継続して6ヵ月を超えて使用されない人
(2)保険給付
[1]支給要件
保険給付を受ける日の属する月の前2ヵ月間に通算して26日以上、又は保険給付を受ける日の属する月の前6ヵ月間に通算78日分以上の保険料を納付されている場合に原則として保険給付が受けられます。また、傷病手当金、埋葬料、出産手当金等は別の要件があります。
[2]給付内容
健康保険の一般被保険者に関する給付と同様ですが、傷病手当金等の支給額の算出方法や支給期間が異なります。
[3]保険料額
賃金日額により第1級390円(440円)~第11級3,230円(3,760円)となっています。( )内は、介護保険第2号被保険者の保険料額。
詳しくは事業所を管轄する年金事務所又は健康保険組合にお問い合わせください。
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