3月14日、中央労福協は第49回Web学習会を開催し、92名が参加しました。今回は、大阪公立大学大学院文学研究科人間行動学専攻准教授の菅野拓さんから、お話をいただきました。
菅野さんは、1930年の北伊豆地震の避難所と、2016年の熊本地震の避難所の写真を示し、その様子が全く変わっていない原因は、現行制度の枠組みが実態に合っていないことにあると指摘しました。日本の法体系ではハード整備は優れているが、人に対する支援が欠けており、結果として、「在宅被災者」や「被災困窮者」を生んでいると述べました。
罹災証明書の区分が被災者支援の基準になっているが、そもそも住んでいた家の状況だけで被災者の状況を判断することは無理があり、結果として、被災者支援の枠組みから外れる被災者が出ていること、社会保障分野と災害法制の結びつきがあまりないために、行政のみが担い手となり、相談援助などの対人サービスが弱いことが問題であるとしたうえで、仙台市の取り組みが紹介されました。仙台市では、当初はばらばらに実施していた支援について、個別世帯ごとの状況を集約し、支援が必要な世帯を把握して、状況に応じた伴走型支援を行う「災害ケースマネージメント」を実施しており、行政・民間・NPOなど多様な主体が連携した「餅は餅屋の被災者支援」が必要だと述べました。
続いて能登半島地震のことに触れ、半島部ゆえの困難な支援オペレーションの問題をかかえるなかで、改めて、被災者一人ひとりの主体的な自立・生活再建を支援する必要が生じていること、それを踏まえて、政府も災害対策基本法の改正で、被災者に対する福祉的支援の充実や、「被災者援護協力団体」の登録制度の創設などを進めていることについても報告がありました。
最後の質疑では、生活困窮者自立支援に取り組む立場からも、様々なことができそうだとの意見があり、引き続きの連携を確認して、学習会を終了しました。