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【高等教育費や奨学金負担に関するアンケート2024】全国3,000人を対象に調査 ― 半数以上が高等教育費への公費負担拡充求める

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2024年10月18日

 中央労福協は10月18日、教育費負担の状況、奨学金の利用実態や問題点を明らかにし、今後の政策・制度の改善につなげることを目的として実施した「高等教育費や奨学金負担に関するアンケート」の調査結果を公表しました。調査は2024年6月にネット調査会社(株式会社ネットエイジア)の調査モニターを使用し、自記入式Webアンケートで実施、性別・年代・地域について日本全体の縮図となるよう構成を反映した3,000人をサンプルとしました。データクリーニング及び集計・分析は労働調査協議会に委託しました。

 

 調査結果のサマリー

  1. 大学等の高等教育への公費負担の引き上げを求める声はどの収入の世帯でも半数を超えており、中間層でも5割前後が可能な限り公費で負担することを希望している。
  2. 子ども一人当たりどのくらいの年間授業料が負担可能かを尋ねたところ中央値44.1万円となり、現在の国立大標準授業料535,800円を下回った。
  3. 教育費の負担が大きいことで経験したこととして「生活費を削って生活している」といった生活影響のみならず子どもの進学先が限定されるなど子育てに影響しているほか、第2子や第3子以降をもつかどうかにも影響している。
  4. 大卒の奨学金利用率は45.2%、日本学生支援機構の奨学金利用者の借入総額平均は337.7万円であった。
  5. 奨学金返済の負担は将来設計にも影響しており、結婚は4割半ば、出産や子育てなどは4割前後が返済による影響を感じている。
  6. 高等教育に関連して優先的に実現してほしい政策を尋ねたところ「大学などの授業料を半額程度に」が最も多く、高校生以下の子どもがいる世帯で希望が多い。
  7. 高等教育修学支援新制度について2024年度から支援対象層が拡大されたが、聞いたこともない・知らないという人が半数に及び、世帯年収が低い層ほど知られていないことがわかった。

 

中間層も求める高等教育に対する公費負担の拡充

 大学等の高等教育の公費負担に対して、「可能な限り公費であるべき」は3割半ば、「OECD平均まで引き上げるべき」は2割弱に及んでいます。このように大学等の高等教育に対しては公費負担による支援を拡充して欲しいという希望が多くみられました。また大学生未満の子どもがいる場合、世帯年収が低い層ほど「可能な限り公費」が多くなりますが、400万円以上(800万円未満)や800万円以上の層であっても5割前後を占めており、低所得層だけでなく中間層においても公費による負担拡充が求められているといえます。

 

負担可能と考える授業料が国立大学の標準授業料を下回る人は5割台半ば

 子どものいる人の将来の教育費負担への不安は<不安である>が77.8%に達します。大学生以前の子どものいる人に現実的に一人当たりどのくらいの年間授業料(入学金や生活にかかわる費用は除く)が負担可能と考えているのかを尋ねた結果は中央値44.1万円で、現在の国立大学の標準授業料(535,800円)を下回り、さらに分布をみると現在の授業料でも負担できない人(<50万円未満>までの層)が5割台半ばを占めます。今後授業料がさらに上がるとすれば、教育費を賄えない人は増加の一途を辿ることになり、支援策のより一層の拡充が求められるところです。

 

教育費負担の大きさが生活や子どもの教育、さらには少子化にも影響を及ぼす結果に

 実際の子どものいる人の年間教育費を確認すると中央値28.3万円で、この教育費に「負担感がある」という人が4人に3人と多くみられます。こうした教育費や負担感は長子が大学生の場合に大きく、年間教育費は中央値127.3万円、教育費に「負担感がある」も8割台に達しています。子どものいる人に教育費負担が大きいことで経験したことを尋ねた結果は、「生活費を削って生活している」といった生活への影響のみならず、「子どもの進学先が限定されたりした」といった子どもの教育にも影響が出ていることが示されています。さらに、「第2子をもつか悩む」や「第3子以降をもつか悩む」など、教育費負担の大きいことが少子化を助長する結果となっているといえます。

 

奨学金の利用率は31.2%、日本学生支援機構の貸与型奨学金利用者の借入総額は平均344.9万円

 奨学金制度の利用状況をみると<利用していた>は31.2%であり、大学卒の利用率は45.2%に上がります。奨学金利用者のうち、日本学生支援機構の貸与型奨学金利用者(以下JASSO利用者)の奨学金借入総額は、平均値344.9万円(中央値312.1万円)であり、過去の調査と比べて平均・中央値ともに最も高くなりました。

 

奨学金返済による[結婚][出産]への影響を返済者の4割前後が実感

 JASSO利用者について、今後の奨学金の返済に7割が不安を、返済の負担感に4割台半ばが苦しさを実感しており、これまでの調査から改善はみられません。さらに奨学金の返済は生活設計にも影響しています。[貯蓄]は6割強、[日常的な食事]や[結婚]は4割台半ば、[出産]や[子育て]などは4割前後が返済による影響を感じており、さらに過去の調査と比べて[結婚]、[出産]、[子育て]に対して影響を感じる人は増えています。

 

最優先は「大学などの授業料を半額程度に」

 大学などの高等教育関連の負担に関して優先的に実現してほしい項目(3つ以内選択)を確認すると、「大学などの授業料を半額程度にする(大学への公的助成の増額)」が最も多く、とくに長子が大学生になる前の高校生以下の子どもがいる世帯で希望が多くみられました。一方「授業料後払い制度の拡充」は全体で1割と少なくなっています。また、これ以外にも奨学金に関連した「返済者の負担軽減や救済制度の拡充」については、JASOO利用者で多いことが特徴となっています。

 

修学支援新制度における支援対象層拡大について周知度の向上を

 2024年度から始まった高等教育の修学支援新制度の支援対象層拡大に対する周知度は「聞いたこともない・知らない」が半数に及びました。さらに重視すべき点は、世帯年収が低い層ほど「聞いたこともない・知らない」が多く、支援策の対象条件に当てはまる層ほど周知度が低いことです。新制度の支援内容に対する評価についても<十分>は1割半ばに過ぎず、<不十分>が4割弱を占めています。また政府の教育費負軽減策が少子化改善に<期待できる>は1割台半ばにとどまり、<期待できない>が4割強に及んでいます。新制度の支援内容に対する評価や、教育費負軽減策による少子化改善への期待は高くはないものの、まずは新制度の周知度を高め、支援が必要な層に確実に支援を提供することが重要といえます。

 

 調査概要

 実施主体 : 労働者福祉中央協議会

 調査名称 : 高等教育費や奨学金負担に関するアンケート

 調査時期 : 2024年6月

 調査対象 : 性別・年代・地域等について日本全体の構成を反映した3,000人

 実施方法 : 調査モニターを利用した自記入式Webアンケート

 調査会社 : 株式会社ネットエイジア

 集計分析 : 労働調査協議会

 

調査結果データの引用・掲載について

 本調査結果を引用・掲載する場合に労働者福祉中央協議会への申請は不要です。

 但し、出典情報として実施主体、調査名称、調査時期、出典元URLを明記してください。

 (なお、申請は不要ですがもし宜しければ掲載情報等をお寄せ頂きますと幸いです)

 

提供データ等

 本アンケート調査の結果については「調査結果のポイント」「調査報告書(詳細版)」のほか、ビジュアル化した「調査結果リーフレット」の3種類で公表しています。それぞれのデータは下記よりご覧ください。

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