厚労省が来年度からの生活保護基準を大幅に引き下げる(最大5%)方針を示したことに対し、引き下げに反対する様々な団体による緊急院内集会が12月19日に衆議院第一議員会館で開催され、160名が参加した。厚労省で検討に当たった生活保護基準部会では当事者の声を全く聴かないまま結論を出したため、「もうひとつの生活保護基準部会」と題して当事者が声を上げた。「もうひとつの生活保護基準部会」実行委員会が主催。
法政大学教授で元生活保護制度の在り方専門委員会委員の布川日佐史さんは、生活保護基準部会の検証手法では夫婦子1人世帯における生活扶助基準額は平均的一般世帯の消費と比べると70%と妥当であるものの、算出された指数を使うとその他の多くの世帯類型が60%を割り込み50%台となり、指数の算出に問題があると指摘した。弁護士の森川清さんは「厚労省案のどこが問題か」と題して報告し、報告書案でも検証結果を機械的に当てはめることのないよう強く求められていることから、なんとしても撤回したいと強く訴えた。名古屋市立大学専任講師で元堺市ケースワーカーの桜井啓太さんは「子どものいる世帯の扶助・加算削減の影響」と題して報告し、母子加算の2割削減により18.8万人の子どもに、児童養育加算の1/3削減により2万人の子どもに影響が及ぶことを指摘した。また、大学進学支援については、受給世帯からの進学者の8割を占める「自宅生」への給付額10万円では進学の後押しにならないこと、世帯分離の廃止(世帯内修学)が検討されていないことなどを指摘した。
当事者発言では、生活保護を受給している8名の当事者が切実な生活実態や思いを述べ、さらなる引き下げへの懸念を訴えた。後半のリレートークでは中央労福協の花井圭子・事務局長が発言し、「私たちの税金の使われ方についてしっかり国会で問い質してほしい。私たちも今回の引き下げには納得できない、労福協の組織をあげて、みなさんと一緒に生活保護基準引き下げ撤回に向けてともに頑張りたい」と強調した。また、日本退職者連合の菅井義夫・事務局長も決意表明した。会場には国会議員も駆けつけ、激励のメッセージを送った。