政策・制度

政策・制度 2020年度政策制度要請

<総論>

 私たち労働者福祉中央協議会(中央労福協)は「すべての働く人の幸せと豊かさをめざして、連帯・協同で安心・共生の福祉社会をつくります」を理念に掲げ、加盟団体や幅広いネットワークによる連携・協働で、各般の課題に取り組んでいる。

 現在、世界は新型コロナウイルス感染症の脅威に晒され、わが国でも経済、社会、雇用、人々の生活などに甚大な影響が及んでいる。これまでの日本社会におけるセーフティネットの脆弱性が、この危機的状況の中で一気に浮上してきた。とりわけ社会的弱者、仕事や住まいを失い生活困窮に陥りかねない人々、学費納入が困難な学生や奨学金返済に苦しむ方々への支援が喫緊の課題となっている。
 本年は阪神・淡路大震災から25年、来年は東日本大震災から10年の節目を迎える。近年でも全国的に大規模災害が多発しており、被災者の生活再建支援に関する施策の充実が強く求められている。

 中央労福協は、国連が採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で役割が明記され、政府のSDGs実施指針でも連携するステークホルダーとして挙げられた「協同組合」の社会的価値を高める活動を進めている。
 また、社会の持続可能性自体が問われる中で大きな課題となっている、格差の是正、貧困や社会的排除、社会的孤立に陥らない社会を目指して活動を進めている。
 現在、大学学費の高騰と家計収入の減少により、大学生の約半数が何らかの奨学金を利用しているが、不安定雇用や低賃金労働、さらに今般のコロナ禍が追い打ちをかけ「返したくても返せない」若者たちが増えている。2018年4月に給付型奨学金制度が本格実施となり、本年4月より大学等修学支援法が施行されたが、両制度の対象者は低所得者層に限定されており、支援を受けられる人と受けられない人の間に分断が生じつつある。教育費の無償化も展望しつつ、対象者の中間所得者層への拡充など現行制度のさらなる改善が必要となっている。
 生活困窮者自立支援法の改正については、生活困窮者自立支援制度の発展と支援体制の強化が求められている。中央労福協の加盟団体(事業団体、地方労福協)においてもいくつかの地域で事業受託が取り組んでいるが、とりわけ、就労準備支援事業、家計改善支援事業の全自治体での実施や制度を担う人材の確保・育成、雇用の安定が喫緊の課題となっている。

 こうした状況を踏まえ、中央労福協は、直面する新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う市民生活への支援、SDGs(持続可能な開発目標)の達成、協同組合の発展、大規模災害等への対応、格差の是正・貧困の根絶、消費者政策の充実、ディーセント・ワークの確立、中小企業勤労者福祉、勤労者の生活設計・保障、安心の社会保障、くらしの安全・安心の確保に関して、中央労福協や事業団体全体で実現をめざす政策課題の要求・提言事項をとりまとめた。
 中央労福協は、この内容について広く各層への理解の進展に努め、その実現に向けて、取り組みを進めていく。
 

Ⅰ.柱立てと構成

〈最重点要求項目〉

〈重点要求項目〉

〈各論〉

  1. SDGs(持続可能な開発目標)の達成と協同組合の促進・支援
  2. 大規模災害等の被災者支援と復興・再生および防災・減災対策の強化
  3. 格差の是正、貧困のない社会に向けたセーフティネットの強化
  4. 消費者政策の充実強化
  5. ディーセント・ワークの確立
  6. 中小企業勤労者の福祉格差の是正
  7. 勤労者の生活設計・保障への支援
  8. 安心・信頼できる社会保障の構築
  9. くらしの安全・安心の確保

〈最重点要求項目〉

  1. 1. 新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う市民生活への支援を総合的に推進し、様々な困難を抱えた人たちへ寄り添った相談支援を行うととともに、雇用の維持、就労支援や雇用創出、住まいの保障、学費納入や奨学金返済が困難な人たちへの支援を拡充する。
  2. 2. 奨学金および学費に関する支援を受けられる人と受けられない人、低所得者層と中間層とで分断が生じないよう、既存の中間層への支援策を後退・縮小させないとともに、奨学金返済者の負担軽減のための税制支援、大学等の授業料の引き下げ、無利子奨学金の大幅な拡充、返済困難者への支援の拡充をはかる。
  3. 3. 多発する大規模災害に備え、被災者の生活再建支援に関する各種施策を着実に実行するとともに、被災者生活再建支援法の支給対象を半壊まで拡大すること、あわせて全ての被災区域を支援の対象とするよう見直しをはかる。

〈重点要求項目〉

1.SDGs(持続可能な開発目標)の達成と協同組合の促進・支援

  1. (1)SDGs実施指針の改定(2019年12月)において、「新しい公共」の項で、協同組合をはじめとした公共的な活動を担う民間主体による、地域の課題解決に向けた取り組みへの期待が明確に記載された。今後、多様なステークホルダーとの連携が一層進むよう、持続可能な開発目標(SDGs)推進円卓会議の構成を見直し、協同組合の代表を加える。
  2. (2)政府のSDGs実施方針の優先課題のひとつである「生物多様性、森林、海洋等の環境の保全」の推進を図るため、化石燃料に依存したエネルギー政策の抜本的な見直しと、「地域循環共生圏」の早期構築に向け、住民一人一人の主体性を基に、これまで協同組合が培ってきた活動を活かし、国、地方が一体となり持続可能な地域づくりを推進する。
  3. (3)「地方創生」や「地域共生社会」等の国の政策に、住民主体の持続可能な地域づくりや就労の自発的創出を促進する「労働者協同組合法案」を位置付け、速やかに制定する。また、社会的に排除された人々の就労を通じた社会参加を促進する担い手として、労働者協同組合や社会的企業の果たす役割を重視し、その育成・支援を充実させるとともに、コミュニティにおける就労と事業化を促進するための政策を推進する。

2.大規模災害等の被災者支援と復興・再生および防災・減災対策の強化

 災害ボランティアセンターの役割が大きくなっていることに鑑み、設置・運営のために公的な支援を行う。また、緊急的な復旧だけでなく、被災地のくらし全般の復興を視野に入れた支援体制を強化する。災害支援のための平時からの財源づくりを検討する。平時から行政・社協・NPO等民間の非常時に備えた連携支援体制づくりの支援を行う。

3.格差の是正、貧困のない社会に向けたセーフティネットの強化

 地域住民の複合化・複雑化した支援ニーズや社会的孤立に対応し、寄りそい型の相談支援や参加支援、地域づくりを促進するため、生活困窮者自立支援制度を着実に発展させるとともに、包括的な支援体制を構築するための法制度を整備する。国はそのための財源を確実に確保するとともに、制度の担い手となる相談員・支援員の雇用の安定と処遇の改善をはかる。

6.中小企業勤労者の福祉格差の是正

  1. (1)中小企業勤労者の福祉格差の是正に向けて、国・自治体・事業主の役割・責務等を明確にした法整備を行う。
  2. (2)従業員の福利厚生に積極的な取り組みを行う事業主、非正規労働者等が福利厚生制度を利用できるよう、財政面の充実をはかる。

7.勤労者の生活設計・保障への支援

  1. (1)財形貯蓄制度の導入および利用促進に向けて、これまで行った広報活動などを検証し、企業規模・雇用形態に関わらず、幅広い世代に対し財形貯蓄のもつ役割を明確にしたうえで、実効性のある広報活動を展開する。
  2. (2)人生100年時代を見据え、将来の生活資金を準備するために、非課税財形(年金・住宅)契約時の年齢制限(55歳未満)の撤廃または引き上げを行う。
  3. (3)現行の生命保険料控除制度(「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」)を、国民生活の安定に資するため、また、国民の自助努力支援のため、今後の社会保障制度改定の動向などを踏まえて、制度を拡充する。~所得税法上の所得控除限度額の内訳を各枠5万円とし、控除限度額合計を15万円とする。また地方税法上の所得控除限度額の内訳を各枠3.5万円とする。

8.安心・信頼できる社会保障の構築

  1. (1)要介護1・2には認知症の方が多く、利用者がサービスを受ける権利の保障の観点からも、要介護1・2に対する介護保険サービスの地域支援事業への移管検討にあたっては、サービスの低下を招く見直しとならないようにする。
  2. (2)マクロ経済スライド制度による年金額調整のあり方について、現受給者の年金を守るとともに将来の年金受給世代が貧困に陥らない年金額水準を確保する。
    また、基礎年金はマクロ経済スライドの対象外とする。
  3. (3)高齢者医療制度では75歳以上の医療費定率負担原則1割を堅持し、不適切かつ不公平な金融資産を算定基礎とした患者負担を実施しない。

<各論>

1.SDGs(持続可能な開発目標)の達成と協同組合の促進・支援

(1)政府におけるSDGs推進

  1. ① 政府が行うSDGs実施関連施策においては、本来SDGsの中で最も重要な目標のひとつである「貧困の根絶・格差の是正」を重要項目として位置付け、貧困の削減目標を設定し、着実に取り組む。
  2. ② 政府はSDGsで掲げられている「全ての人の人権が尊重される、誰一人取り残さない社会」のために、外国人・外国にルーツを持つ人々が地域の中で安心して暮らせるよう、人権・労働基本権の保障、交通インフラの整備、保健医療サービスへのアクセスの保障、教育の機会均等など多文化共生社会への転換をはかる。

(2)政府による協同組合支援の強化

 持続可能な社会づくりに向けた協同組合の役割発揮への期待が高まっており、政府による協同組合の支援についてより一層強化する。

  1. ① 協同組合憲章を定める等、協同組合全体を貫く協同組合政策の基本的な考え方と方針をよりいっそう明確にする。
  2. ② 2012国際協同組合年の取り組みを踏まえて、「自主・自立」、「民主的運営」を基本に組合員の出資・運営参加により事業を実施する協同組合が社会の中で認知され、持続的に役割を発揮できるよう政府による支援を継続的に行う(政府広報、統一的な統計調査、学校教育における協同組合に関する授業の強化など)。そのため、政府において、協同組合政策に関する調整窓口を設置する。

(3)協同組合の独自性や社会的役割を考慮した税制の適用

 非営利の相互扶助組織としての協同組合の社会的・公共的な役割と持続可能な経営基盤の確立の重要性に鑑み、協同組合に配慮した税制を継続する。

(4)生協法の改正

 少子高齢化の進展、格差拡大、自然災害の増加など社会の変化に伴う地域の課題に取り組み、持続可能な社会づくりを進める上で、行政や諸団体、市民から生協への役割発揮の期待が高まる中、そうした期待に幅広くこたえることを可能とする法制度面の改善を求める。

(5)持続可能な地域づくりに向けた非営利・協同組織と自治体・行政との協働関係の充実

 持続可能な地域づくりのために、自治体・行政と非営利・協同組織との関係を、単なるコスト削減や下請け型の業務委託ではなく、目的や基準(公正労働基準)を明確にした上での対等なパートナーシップにもとづく協働の関係へと再編成する。そのため、地域福祉の向上と住民自治の促進をはかる目的で、指定管理者制度などの公共サービスを支え充実させるための制度・政策を総合的に見直し、充実させる。
 特に、指定管理者制度においては①フルコスト・リカバリーの考え方をもとに一般管理費を含む間接経費全体を人たるに値する人件費(公正労働基準)を見込んだ積算とする、②一定額の利益、繰越金(あるいは積立金)を認めて「精算」項目を廃止する、③指定管理料の適正化、④印紙税や消費税の非課税扱いの徹底、⑤会計処理と監査の改善、⑥制度の趣旨に相応しい科目の創設、以上をはかる。

2.大規模災害等の被災者支援と復興・再生および防災・減災対策の強化

(1)大規模災害等の被災者への生活支援

  1. ① 地域ごとに被災者の生活、住居、就労、医療・介護・福祉等に関するきめ細かな情報提供や総合相談の体制を整備する。
  2. ② 子ども・被災者支援法にもとづく「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針」に関する各種施策など、原発事故被害者も含む被災者への支援を確実に実施する。
  3. ③ 原子力災害による除染・道路の整備・防波堤改修に伴う工事車両の増大および中間貯蔵施設への輸送車両の通行にかかる交通安全対策費用を増額する。(歩道と車道の区別、作業出入口ガードマン配置)。
  4. ④ 汚染水海洋放出の取り扱いについては、被災者感情に寄り添い、地域住民や関係団体の意見を十分に踏まえ、理解を得ながら丁寧に進める。
  5. ⑤ 二重ローン等の住宅等の既存債務問題について、政府方針を受けたガイドラインによる運用も進められているが、被災者の生活再建を柔軟に支援する観点から、国による一層の施策の周知広報をはかる。
  6. ⑥ 近年、復興住宅での高齢者の孤独死が増えていることから、入居者の孤立化防止の観点から、相談員による見守り・相談などの寄り添い支援を充実させるためにも、既存コミュニティや自治会、社会福祉協議会やNPO等の支援団体との連携強化をはかり、引きこもり防止に向けた対応を進める。

(2)住民主体による復興・再生の取り組みの制度化

 被災地・被災者の「生活」の確保・安定に最大限の努力を費やすとともに、東日本大震災からの復興・再生を住民主体による取り組みと位置づけ、被災地・被災者自身の自主的・自発的な復興・再生の取り組みを支援する制度の創設を検討する。

  1. ① 復興・再生を従来型の行政主導・行政本位にせず、市民・地域の力を集めた取り組みにするための、組織的・政策的な位置づけを国の方針として明確化する。具体的には、地域の民間組織や非営利組織等も交えた復興・再生のためのネットワーク組織の結成を促進し、官民一体となった取り組みを活発化させ、これを国として支援する。
  2. ② 東北の被災地・被災者の仕事の確保・創出について、地域の産業創出や従事する就労分野の変更を制度的に支える研修・訓練制度と、公的に就労を保障する制度を組み合わせた、「公的訓練・就労事業制度」(仮称)を新たに創設する。

(3)平時における防災・減災の対策

  1. ① 将来起こりうる大規模災害に備え、今後の災害対策に必要な被害想定、燃料確保や物流網の維持確保等の課題に対し、消費者ニーズを反映するため、政府の各種審議会等に、消費者団体等の意見を反映させる。
  2. ② 災害時の災害対応拠点となる自治体庁舎・公共施設・医療施設等の耐震化を徹底する。
  3. ③ 災害時に手助けが必要な高齢者や障害者、外国人などの迅速な避難が優先されるよう、自治体における避難行動要支援者の名簿作成を徹底する。さらに「避難勧告等に関するガイドライン(2019年3月29日改定)」が実際の避難行動に結びつくよう、通信手段の確保や情報提供のあり方など情報発信に関する総合的な取り組みを強化する。
  4. ④ 学校教育における防災教育や避難訓練の充実を図り、避難対策等を徹底する。
  5. ⑤ 災害に便乗した悪質商法・詐欺・空き巣等の発生防止に努め、予防啓発を徹底する。
  6. ⑥ 住民や企業に対し、南海トラフ地震や大型台風をはじめ今後想定される大規模災害等への啓発活動を強めるなど防災・減災対策を早急に進める。

3.格差の是正、貧困のない社会に向けたセーフティネットの強化

 子ども、若者、女性、高齢者など、あらゆる層に拡大する格差・貧困の解消をめざす。

(1)教育の機会均等 ~奨学金制度等の拡充・改善と教育費の負担軽減~

 幼児教育、初等教育、中等教育、高等教育等すべての子どもに保障し、教育費の無償化を漸進的にめざす。
 給付型奨学金制度の創設を契機として、有利子から無利子へ、貸与から給付への流れを加速し、既存の返済者の負担軽減や救済制度の拡充、学費を含む教育費負担の軽減につなげる。

  1. ① 教育の機会均等の確保、将来を担う人材の育成、親・保護者の経済的負担の軽減をはかるなどの観点から、政府は教育における公財政支出をOECD平均まで引き上げる。
    (注)日本の公財政教育支出の対GDP比(OECDインジケータ2019より)
    全教育段階 日本3.1% OECD平均4.4%(2016年)
    高等教育  日本0.6% OECD平均1.2%(2016年)
  2. ② 大学等修学支援法に伴う新制度への対応
     「大学等における修学の支援に関する法律」の施行に伴う新制度(低所得者に限定した授業料減免制度と給付型奨学金の拡充)の実施にあたっては、以下の対応を行う。

    1. a)「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」における「高等教育の漸進的無償化」の実現に向け、将来的には授業料無償化の対象者を段階的に広げていくことを展望してロードマップの検討・策定を行う。
    2. b)新型コロナウィルス感染症による影響で家計が急変した場合も急変後の所得見込みにより要件を満たせば新制度の支援対象となることを広く周知広報し、各大学で募集を行う。また、家計急変に伴い予定人員を上回る申請者が出ることを想定して十分な追加予算措置を講じる。
    3. c)低所得層を対象とする本支援制度の実施により、中間所得層も対象として各大学が行っている既存の授業料減免が縮小・後退しないよう、在校生に限らず2020年度以降の新入生に対しても国の財政措置を含めて必要な措置を講ずる。
    4. d)大学等の確認要件の設定・運用にあたっては、学生の選択肢を狭め、大学の自治や学問の自由への不当な介入とならないよう慎重な運用を行う。
    5. e)新制度において学生等に対する支援の継続を判断するにあたり、相対評価による学業成績が下位4分の1に属することを理由とする場合は、斟酌すべきやむを得ない事情がある場合の特例措置を現行よりも幅広く講じる。
    6. f)施行後のニーズの充足状況の調査や運用に伴う問題点の実態把握を行い、施行後4年の見直し時期以前であっても、必要な見直しや改善を行う。
  3. ③ 大学の授業料の引き上げに歯止めをかけ、高騰した大学等の授業料等の引き下げを可能にする環境を整えるため、国立大学法人運営費交付金や私学助成を拡充する。
  4. ④ 新型コロナウィルス感染症拡大の影響に伴う親の収入低下やアルバイト減少による収入減で学費支払いが困難となる学生が多数生じる可能性があることから、文部科学省より各大学・短大・専門学校等に対して、学費の延納・分納や減免などに柔軟に対応するよう周知徹底するとともに、制度の改善(延納時期の延長、分納回数の増加)や、延納・分納の制度がない場合には制度の導入を要請する。また、延納・分納を行う高等教育機関に対しては必要なつなぎ資金を公的に援助する。
     また、奨学金の申請が予定人員を上回ることを想定した追加予算措置を講じ、給付型奨学金と貸与型奨学金の拡充をはかる
  5. ⑤ 大学院生に対しても給付型奨学金を導入する。
  6. ⑥ 貸与奨学金は全面的に無利子とするため、独立行政法人日本学生支援機構法を改正し、一般財源化する。少なくとも、無利子が有利子を上回るよう、貸与基準を緩和し、無利子奨学金を大幅に拡充する。
  7. ⑦ 返還期限猶予制度について以下の改善を行う。
    1. a)新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い奨学金の返済が困難な方が漏れなく迅速に返還期限猶予制度が利用できるようにする。そのため、前年度の所得基準ではなく直近1ヶ月分の収入証明でも認めるなど、簡易な手続きと柔軟な運用を行うとともに、そうした取り扱いや制度内容について、返還者本人・連帯保証人・保証人の全てに対し個別に周知し利用を促す。
    2. b)延滞があることによって猶予制度の利用を制限しない。
    3. c)新型コロナウィルスによる市民生活への影響が収束するまでの間、返還期限の猶予期間は、返還期限猶予制度の通算利用可能期間である10年には算入しない。
    4. d)返還猶予期限(通算10年)が切れた人にも猶予期限をさらに延長(10年→15年)するなど、返済困難者への緊急の救済措置を講ずる。将来的には、返済開始から一定期間経過もしくは一定年齢に達した後は残額を免除する制度の導入を検討する。
    5. e)所得基準(年収300万円以下、給与所得者以外は年間所得200万円以下)を大幅に緩和する。
  8. ⑧ 延滞金は廃止する。廃止までの間、延滞金賦課率(現行3%)の引き下げを行うとともに、以前の賦課率(2014年3月までの10%、2014年4月~2020年3月までの5%)も引き下げる。また、元本返済が後回しとなる現行の充当順位は「延滞金→利息→元本」から「元本→利息→延滞金」に変更する。支払い能力がないにもかかわらず繰り上げ一括返済を求める運用は直ちに是正する。延滞者には救済支援を優先し、安易な信用情報機関への登録は行わない。
  9. ⑨ 所得連動返還型奨学金制度については、年収ゼロや非課税世帯であっても月額2,000円を返還させることの見直しなど、返済困難者の実情を踏まえて改善を行うとともに有利子奨学金や既返済者への適用を拡大する。
  10. ⑩ 貸与型奨学金における人的保証については、奨学生や保証人の負担が大きいことを踏まえ、当面は機関保証を中心とした制度への移行を進めつつ、保証のあり方についても抜本的な検討を行う。機関保証についても、保証料を引き下げるなど負担軽減策を講じるとともに、返済困難者に寄り添った救済を行う観点から制度や運用を改善する。
     また、自宅不動産等の生活手段からの回収を行わないなど、保証人に対して無理な返済を求めないよう適切なガイドラインを作成し、実行する。
  11. ⑪ 日本学生支援機構が保証人に対して半額の支払い義務しかないことを告げずに全額請求している問題を速やかに是正するとともに、既に半額以上を支払った人たちに対して返還を行う。
  12. ⑫ 奨学金返済者全体の負担軽減をはかる観点から、奨学金返済金への税制支援(所得控除または税額控除など)を導入する。また、従業員の奨学金返済への支援を行う事業者に対しても税制優遇措置を講じる。
  13. ⑬ 入学金・授業料等の入学時一括支払いを求められて対応に困難をきたすことのないよう、入学時の費用についての支援を強化する。
  14. ⑭ 政府および日本学生支援機構は、奨学金を借りる際の丁寧な制度説明、および返済が困難になった場合の相談方法等の周知徹底に努める。また、スカラシップ・アドバイザー事業については、これまでの実施状況や受講した生徒や親・保護者、教員等の声を踏まえて検証・改善を行うとともに、相談に応じられる体制を構築する。
  15. ⑮ 給付型奨学金の大幅な拡充や新型コロナウィルス感染症の影響による返済困難者の増加に伴い、日本学生支援機構の業務量や相談の増加が見込まれることから、それに見合った十分な相談体制の拡充、人員や体制の整備をはかる。また、申請書の簡素化をすすめ、申請者および学校の事務負担の軽減を行う。
  16. ⑯ 文部科学省の奨学金に関わる検討の場や学生支援機構の運営(運営評議会など)への奨学金利用者・保護者や勤労者代表の参画・意見反映を進める。
  17. ⑰ 返還期限猶予制度等の救済措置の周知を徹底する。学生支援機構の裁量による恣意的な利用制限が行われないよう、法制度や運用の見直しを行う。
  18. ⑱ 社会人が学び直しのできるリカレント教育の促進や生涯学習推進のための施策の拡充や環境整備を行う。

(2)地域共生社会の実現に向けて

 地域共生社会に向けた包括的な支援体制を構築するため、社会福祉法等の改正を第201回通常国会で成立させる。
同法の施行にあたっては、補助金の一括交付の対象となる生活困窮、高齢、障がい、子どもの各分野についての予算を全体的に拡充するとともに、制度を担う相談員・支援員の雇用の安定、処遇の改善をはかり、一生の仕事として誇りをもってキャリア形成できるような支援・環境整備に留意する。

(3)緊急雇用対策、就労支援と生活困窮者自立支援制度の拡充・体制整備

  1. ① 新型コロナウィルス感染拡大に伴い、安易な雇止めが行われることのないよう企業等に周知徹底するとともに、政府・自治体による自粛指示・要請に基づく休業に対しては、雇用形態を問わず十分な所得補償を行う。また、離職を余儀なくされた労働者に対しては早期の再就職が可能となるよう手厚い就労支援や雇用創出事業を行う。
  2. ② 今後の経済・雇用環境の悪化により生活困窮の深刻化が想定されることから、各地域の生活困窮者自立支援事業がきめ細やかな相談・支援が十分に行える体制が確保できるよう、状況に応じて国は自治体に対して必要な支援を行う。
  3. ③ 生活困窮者自立支援法の改正を踏まえて、生活困窮者自立支援制度の着実な発展と支援体制の強化をはかり、誰もが社会的に孤立することなく自立できる支え合いの社会・地域づくりにつなげていく。
    1. a)改正法に明記された基本理念に沿って、生活困窮者の尊厳の保持をはかりつつ、アウトリーチや社会的孤立への対応も含め、個々の状況に応じた包括的・早期的な支援や、関係機関・民間団体との緊密な連携による地域づくりを着実に進める。
    2. b)努力義務化された就労準備支援事業、家計改善支援事業については、2021年度までの集中的な取り組み期間においてすべての自治体での完全実施を早期に達成する。また、一時生活支援事業、子どもの学習支援・生活支援事業も含め、各事業の実施率を高めつつ、次期改定において必須化や補助率の引き上げをはかる。
    3. c)都道府県が改正法に明記された役割(市等に対する研修事業や事業実施体制の支援、ネットワークづくり等)を発揮できるよう、国としても最大限の支援を行う。
    4. d)改正法にもとづき、生活保護行政と生活困窮者自立支援制度との密接な連携のもと、切れ目ない支援を行う。
  4. ④ 2021年度の予算編成にあたっては、生活保護費等の削減によることなく、生活困窮者自立支援制度をさらに強化していくための十分な予算を確保する。
  5. ⑤ 今後の運用や制度の改善にあたって、以下の点に留意する。
    1. a)制度を担う相談員や支援員などの育成・確保、雇用の安定、処遇の改善をはかる。
    2. b)事業の委託契約にあたっては、事業の安定的運営やサービスの質の向上、利用者との信頼関係に立った継続的な支援、人材の確保やノウハウの継承をはかる観点から、価格競争や単年度実績で評価するのではなく、一定期間事業を委託し支援の質や実績を総合的に判断するよう、自治体関係者に周知徹底する。
    3. c)支援をより効果的に行うため、就労支援期間中の生活支援給付や交通費等の実費支給、学習支援や一時生活支援における食費等の経費への補助を行う。
    4. d)住居確保給付金については、対象要件の緩和(2020年4月20日省令改正)を周知徹底するとともに、支給上限額の引き上げや支給期間の延長、支給対象に入居一時金も含めるなど、さらなる拡充をはかる。
    5. e)地域で支える受け皿となる企業・団体へのインセンティブ(優先発注、助成等)を確保する。このため、就労準備支援事業へのインセンティブの実効化・拡充をはかるとともに、改正法案で努力義務化された「就労訓練の認定事業者への受注機会の増大」の具体化・促進をはかる。
  6. ⑥ 「生活困窮者自立支援制度」等社会的困難にある人々に対する自立・就労支援における社会的事業者の活用と雇用・就労創出策の充実
    1. a)「生活困窮者自立支援制度」等で実施される「就労準備支援事業」「就労訓練事業(中間的就労)」等において、「社会的企業」や労働者協同組合を積極的に位置づけ活用し、地域における雇用・就労創出や社会的居場所の推進と連動させる政策を推進する。特に「就労訓練事業」においては、事業所認定の推進をはかるとともに、地方自治体による優先発注など公共調達の充実をはかるために特段の支援策を講じる。
    2. b)就労困難な若者や女性、高齢者、障害者など社会的困難にある人々を対象に、地域における就労創出による社会参加と居場所づくりを目的に、社会的訓練などの公的職業訓練と公的に就労を保障する制度を組み合わせた「公的訓練・就労事業制度」(仮称)を新たに創設する。
    3. c)2020年度より実施される「就職氷河期世代活躍支援プラン」のさらなる拡大・充実と「中高年引きこもり(8050)問題の当事者」と称される就労困難な世代に対する特段の就労支援策を講ずる。現在、都道府県・指定都市に設置されているひきこもり地域支援センターを市町村にまで拡充させる。都道府県レベルのプラットフォームに若者就労支援団体の位置づけを行う。また、「求職者支援訓練」においても、「生活困窮者自立支援制度」や「就職氷河期世代活躍支援プラン」との積極的な連携をはかるとともに、制度の抜本的見直し(※1)を行い、公的職業訓練の一層の充実と制度の弾力的運用(※2)、訓練メニューの創造的開発などをはかる。
      ※1 ①求職を一律の目的としない、仕事おこしや分野別の縦割りを超えたカリキュラムの設計と弾力的運用、②就労に困難を抱える若者や高齢者、障害者などに受講の枠を広げるためにも雇用保険財源から一般財源への移行等
      ※2 公共的社会サービスを担う地域の非営利組織、協同組合、中小企業等のコミュニティ事業者が実施主体となることが可能となる等

(4)人間の尊厳が保障され、利用しやすい生活保護制度への改善

  1. ①生活保護基準の引き下げは、憲法25条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を割り込む恐れがあり、生活保護利用者のみならず国民生活全般にも影響を及ぼすため、引き下げは行わない。
    1. a)生活扶助基準の検証方法については、「一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準の水準を捉えていると・・・絶対的な水準を割ってしまう懸念がある」との生活保護基準部会の指摘を重く受けとめ、健康で文化的な生活水準を確保する観点から検証方法の見直しを早急に行う。それまでの間、生活扶助基準の引下げは凍結する。
    2. b)児童養育加算(3歳未満)や母子加算の減額は、子どもの貧困対策や貧困の連鎖防止の政策に逆行することから、撤回する。
    3. c)この間の引下げに伴う生活保護利用者の家計の実態や国民生活への影響について、実態把握・調査を行った上で十分な検証を行う。
    4. d)生活保護基準の決定のあり方について、厚生労働大臣の告示のみで決定できる現行の仕組みを見直し、生活保護基準部会への諮問、答申の尊重義務や当事者の参画をはかるなどの改善を行う。
  2. ② 社会保障の脆弱さが生活保護制度に過度に負荷をかけている制度全般のあり方を見直すとともに、人としての尊厳や生存権を保障する観点から生活保護法を見直し「生活保障法」への改正を検討する。
  3. ③ 生活保護世帯の子どもの大学等への進学支援については、貧困の連鎖を解消し教育の機会均等を確保する観点から、進学準備のための一時金の給付に加え、「世帯分離」の取り扱いの見直しを含め、引き続き検討を行う。
  4. ④ 生活保護受給者の医療機関受診に際しての窓口負担については、最低生活費を割り込む恐れや受診抑制が懸念されることから、償還払いの試行・導入は行わない。また、生活保護利用者以外の生活困窮者に対しても、医療アクセスを保障する観点から医療扶助を適用する。
  5. ⑤ 生活保護法の運用にあたっては、生活資金が逼迫している場合は速やかに保護を開始するとともに、生活保護の申請抑制や扶養義務の強化を招くことがないよう、現場に徹底する。生活保護制度を広く市民に知らせ、申請書やパンフレットを福祉事務所や行政の各相談窓口に設置するなど、誰もが利用しやすい制度にする。
  6. ⑥ 申請等に関する苦情や相談、不服申し立て(審査請求)を受付け、調査権と行政への勧告権を持つ「第三者機関」を設置する。
  7. ⑦ 生活保護行政の公的責任や業務拡大・高度化等を踏まえ、地方交付税の福祉事務所費の大幅な改善を図り、ケースワーカーを増員するとともに、職員の専門性を高める。
  8. ⑧ 資産を使い果たさなければ保護しないために自立をかえって困難にしているという観点から、最低生活費3ヶ月分程度までの現金・預貯金は認めるなど資産要件を緩和する。

(5)子どもの貧困・虐待対策の強化

  1. ① 「子どもの貧困対策法」の改正、第二期「子供の貧困対策大綱」制定をふまえ、当事者である子どもの視点を大切にし、「将来」だけでなく、「現在」の生活の支援、経済的支援、教育支援に取り組む基本姿勢をいっそう明確化し、以下の観点から根本的な貧困対策を推進する。
    1. a)市町村活動計画の努力義務化を受けて、具体的な対策実施の徹底
    2. b)多様な貧困指標と改善目標の設定
    3. c)教育無償化の中間層への拡大
    4. d)奨学金制度の改善生活保護世帯の大学進学支援措置の拡充
    5. e)生活保護世帯の大学進学支援措置の拡充
    6. f)乳幼児期への支援強化
    7. g)保護者の就労支援における、所得の増大他、職業生活の安定向上支援策の実施
  2. ② 子どもの貧困は親・保護者の貧困に起因しており、特にひとり親世帯の相対的貧困率は5割を超えているため、ひとり親世帯に対して、公的手当や税額控除の拡大など、総合的な対策を実施する。その場合は、離死別・未婚を問わないものとする。
  3. ③ 児童手当や児童扶養手当など公的手当の支給は、低所得世帯の収入の安定のため、2カ月毎から毎月の支給とする。
  4. ④ 相次ぐ児童の虐待死、児童虐待の増加という現状を踏まえて、児童虐待防止法、児童福祉法が改正され、2020年4月から2023年4月にかけて順次施行される予定である。児童虐待防止法では親権者の体罰禁止が、児童福祉法では児童相談所の体制強化や関係機関の連携強化等、児童相談所の設置促進などが盛り込まれる。児童虐待件数は年々増加しており、改正法の実施が急がれる。施策の早期実施と、地方自治体における実態把握、対策の拡充、関係機関との連携など法施行を待たずに実施する。

(6)フードバンク活動の促進

  1. ① フードバンクを食品ロスの削減のみならず福祉分野と災害時の食糧支援システムとして積極的に位置づけ、省庁横断的な施策を推進する。生活困窮者支援に関わる行政や様々な民間団体を通じたフードバンク食品の提供や、パントリー設備の整備、食品ロス削減を通じた環境負荷の低減など、福祉・環境政策とも連携した施策を推進する。
  2. ② 「食品ロスの削減の推進に関する法律案」の施行および「食品ロス削減推進基本計画」(2020年3月31日閣議決定)を踏まえ、フードバンクが継続的・安定的に発展できるよう、フードバンク団体の基盤強化(活動に必要な人件費への補助、事務所・倉庫・配送用車両等のインフラ整備への助成、人材育成など)への国や自治体の支援策を拡充する。
      また、地方公共団体が策定する食品ロス削減推進計画において、地方自治体がフードバンク活動の支援策を盛り込むよう、国からも必要な助言や支援を行う。
  3. ③ 食品寄附に関する責任を免責する制度を創設するなど、フードバンクへの食品提供を促進するための法整備をはかる。
  4. ④ 企業がフードバンク等に食品を寄贈した場合の法人税の全額損金算入が認められた(2018年12月19日 国税庁)ことを活用し、廃棄するより寄附することで食品ロス削減につなげる観点から周知広報を行う。

(7)自死・多重債務対策等

  1. ① 自死率がいまだ高水準にあることに鑑み、改正自殺対策基本法および自殺総合対策大綱にもとづく施策を強力かつ迅速に推進する。
  2. ② 特に若年層の自死については、国内全体の自死殺者数は大きく減少しているにも関わらず、10代の自死者数は増加傾向にあること、諸外国比でも自死死亡率は高いことなど、世界に類を見ない状況となっており、政府はその要因を探り、分析と早急な対策をはかる。
  3. ③ 若年層の自死防止へ向けた緊急的な当面の対策として、国の委託事業等で実施されているSNS相談活動について、自殺対策におけるSNS相談事業ガイドライン等を活用し、相談体制を広げる等の施策を進める。
  4. ④ 多重債務者対策本部が貸金業者による脱法行為を厳しく監視できるよう、都道府県・多重債務対策協議会における実態の検証・分析の強化と多重債務者対策本部との関係で有機的な連携をはかる。ヤミ金撲滅に向けて引き続き一層の取り組み強化をはかる。
  5. ⑤ 生活困窮者や多重債務者等の生活支援を目的とする生活再建支援事業(相談貸付事業等)を行う民間非営利組織が活用できる公的信用保証制度等のしくみを検討する。
  6. ⑥ 多重債務問題の誘発が懸念されるカジノ問題については、IR業者参入をめぐる収賄疑惑を徹底解明し、その間はカジノ推進を凍結するとともに、カジノ解禁の見直し・廃止について検証する。
  7. ⑦ カジノ管理委員会が制定する「管理規則」にカジノ施設の面積の規制やギャンブル依存症、マネー・ロンダリング対策等について盛り込む。
  8. ⑧ 改正貸金業法の定める総量規制の対象外である銀行カードローンに起因する過剰融資については、政府の多重債務問題に関する有識者懇談会でも指摘されており、多重債務の防止に向けて、啓発活動をはじめ法改正も含めた必要な対応をはかる。

(8)住まいの安心、住宅セーフティネットの拡充

  1. ① 「居住の権利」を基本的人権と位置づけ、分立する住宅保障の仕組みを統合し、住宅政策(国土交通省)と生活困窮者支援政策(厚生労働省)との一体的な運用を可能とする仕組みに再編成する。
     改正住宅セーフティネット法に基づく新たな住宅セーフティネット制度の周知を徹底し、住宅確保要配慮者の入居を拒まない登録住宅を増やすとともに、家賃低廉化補助を拡充する。また、同制度を機能させるために、居住支援協議会の設置や居住支援法人の指定を促進し、それらの活動への支援を強化する。
  2. ② 住宅確保要配慮者に対する住宅の提供と家賃補助・住宅債務保証を拡充するとともに、賃貸住宅居住者への税制支援を行う。
  3. ③ 生活困窮者を食い物にする「貧困ビジネス」(追い出し屋、脱法ハウスなど)を根絶するための規制を強化する。
  4. ④ 新型コロナウィルス感染症拡大に伴う緊急住宅支援として以下を行う。
    1. a)経済状況が改善するまでの一定期間、家賃滞納者への追い出し行為を行わないよう、公的住宅での家賃減免・猶予制度を積極的に活用するとともに、民間賃貸住宅の家主への損失を補償する制度を新設する。
    2. b)行政の保有する居住施設や公的住宅(公営・UR・公社)の空き室を活用するとともに、「セーフティネット住宅」等、民間住宅の空き家・空き室を行政が借り上げて、住居喪失者に無償提供する。

(9)休眠預金の有効活用

 休眠預金制度の助成事業にあたっては、子ども及び若者の支援や日常生活または社会生活を営む上での困難を有する者の支援に係る活動など広く市民による公益活動を促進するという当初の目的に合致した運用を行うとともに、進捗状況について検証を行う。

(10)その他

  1. ① 低所得者・経済的弱者のための「福祉灯油」制度の実施・拡充へ向け、実施自治体への財政支援の拡充を含む対策を講じる。
  2. ② 交通政策基本法の趣旨を踏まえ、高齢者や障害者の生活に必要な移動手段確保を社会保障の一環に位置付け、鉄道を含む地域公共交通体系を充実・整備する。

4.消費者政策の充実強化

(1)消費者裁判手続き特例法の国民への周知

 2016年10月から施行された消費者裁判手続き特例法だが、制度の周知は十分とは言えない。附則第7条では、法の趣旨および内容について国民への周知をはかるよう努めるものとされており、引き続き国民への制度の周知をはかる。
 行政による経済的不利益賦課制度、悪徳事業者による財産の隠匿・散逸防止策について検討を進める。

(2)地方消費者行政の充実・強化

 「地方消費者行政強化交付金」が、2019年度補正予算において11.5億円、2020年度予算案において20億円が盛り込まれたが前年より2億円減少している。消費者庁は、前年度より予算が削減された分、地方自主財源で手当てされるよう、首長への働きかけを強めるとともに、2020年度補正予算の確保や、2021年度同交付金の従来水準での確保に努め、地方消費者行政の充実・強化をはかる。また、消費者庁は、消費生活相談員の雇い止め問題への対策の実施にも、引き続き取り組む。

(3)消費者団体の公益的活動に対する支援

 消費者庁は、現に公益的な活動を行う。適格消費者団体、特定適格消費者団体に対し、その意義を社会的にも評価し、財政面・情報面の支援を行うこと。
 また、消費者庁は、「地方消費者行政強化作戦」にもとづき、適格消費者団体の不在地域で、団体の設立を促進する。

(4)地域での消費者教育の推進に対する支援

 「消費者教育の推進に関する基本方針」(2018年3月改訂)を踏まえ、「地方消費者行政強化交付金」も活用して、国は地域での取り組みを支援し、消費者市民社会の形成を進める。

(5)公益通報者保護の強化

 公益通報者保護法の改正案の国会審議にあたっては、通報者を徹底的に保護し、安心して通報が行える環境を法的に担保するという観点から、内部通報者が不利益な取り扱いを受けた場合の事業者に対する行政措置を盛り込むなど、実効性のある抜本的な法改正を行う。

(6)その他

  1. ① 物価の動向を引き続き監視するとともに、電気料金・都市ガス料金の自由化により、すでに自由料金であるLPガス・灯油・ガソリン価格を含めて家庭用エネルギー料金がすべて自由化された状況を踏まえ、消費者の権利を確保するための新たな政策を検討する。電気の小売規制料金に係る経過措置の存続のための指定の見直しは、公平な競争環境の整備や消費者への周知・広報の状況、特に消費者に与える影響を十分に考慮したうえで検討する。
  2. ② LPガス、石油製品(ガソリン・灯油)については、消費者のくらしに欠かせないものであることを踏まえ、公共料金に準じ、価格の決定過程の透明性、消費者参画の機会および価格の適正性など、様々な観点を踏まえた施策を、税負担のあり方等も含め検討、実施する。
  3. ③ 一部の消費者による過剰な要求、暴言・暴力等の問題について、公共の利益および消費者・労働者双方の権利を守る観点から、消費者と事業者の良好かつ健全なコミュニケーションを促進するよう普及・啓発を進める。
  4. ④ 公正な取引を担保するため、サプライチェーン全体における労働環境への理解を促す消費者教育や、雇用・労働を含む人や社会に配慮したエシカル消費を促進する。

5.ディーセント・ワークの実現

(1)働き方改革関連法の周知・徹底

  1. ① 働き方改革関連法は、2019年4月より順次実施されているが、事業主に対して内容の周知・徹底をはかる。
  2. ② 罰則付きの時間外労働の上限規制や「高度プロフェショナル制度」が長時間労働を誘発することがないよう、徹底した指導・監督を行う。
  3. ③ 非正規雇用で働く者の処遇改善をはかるため、「同一労働同一賃金」の適用を徹底するよう指導する。
  4. ④ 「勤務間インターバル制度」の導入を促進する。

(2)最低賃金の引き上げ、公契約基本法等の制定

  1. ① 最低賃金は、少なくとも1,000円は早期に達成し、大幅に引き上げる。
  2. ② 公的機関が民間企業などへ委託・発注するすべての事業において、適正な労働条件とサービスの質を確保するため、低価格入札に拘束された発注、不当な人件費や人員の削減、不安定雇用、下請け業者へのしわ寄せを排除する公契約基本法や条例を制定する。

(3)障害者雇用の促進

 2020年4月に施行された改正障害者雇用促進法の内容が確実に実行されるよう指導を徹底する。障害者一人ひとりの特徴や場面に応じた合理的配慮の提供が適切に実施されるよう指導するとともに、中央省庁、都道府県、市町村、及び関連公的機関の雇用率を引き続き調査・公表し、透明性のある運営を行う。

(4)職場におけるハラスメントの根絶

 職場におけるあらゆるハラスメントを根絶するため、2020年6月施行予定の改正労働政策総合推進法におけるパワーハラスメントの防止措置の企業への義務づけをはじめとする対策を徹底するとともに、ハラスメント行為そのものを禁止する規定を含めたさらなる法整備を行う。

(5)ワーク・ライフ・バランスの推進

  1. ① 仕事と家庭・子育てが両立できるよう、労働時間短縮など、ワーク・ライフ・バランスの取り組みを進める。
  2. ② 待機児童の解消に向けて、保育士の人材確保、処遇改善を進めるとともに、保育の質の向上、事故防止等の観点から教育訓練を実施・促進する。

6.中小企業勤労者の福祉格差の是正

(1)福祉格差是正のための法整備

 中小企業勤労者の福祉格差の是正に向けて、国・自治体・事業主の役割・責務等の明確化、ワーク・ライフ・バランスの推進、また、政府が進める「働き方改革」が勤労者の生活を「ゆとりと健康で充実したもの」とするため福利厚生の必要性を明確にし、国・自治体等・事業主の責務を明確にした法整備を行うこと。あわせて、従業員の福利厚生に積極的な取り組みを行う事業主、非正規労働者等が福利厚生制度を利用できるよう、財政面の充実をはかること。

(2)福利厚生サービスの充実支援

 中小企業勤労者福祉サービスセンターの自立と再生に向けて、広域化を推進するとともに、中小企業の「働き方改革」を福利厚生面から支える総合的福祉センターを展望し、魅力あるサービス内容への抜本改革を進める。

  1. ① すべての会員がいつでもサービスを気軽に利用できる仕組みを確立する。
  2. ② 既存の企業内福利厚生と重複せずに、従業員ニーズにあわせてサービス・会費が選択できる会員制度の導入を進める。
  3. ③ 地域の福祉団体やNPO等とのネットワークにより、個別企業では提供困難な子育て・介護支援、生活福祉相談、生涯生活設計支援、共済・生活保障、自己啓発、健康増進、生きがいづくりなど、ワーク・ライフ・バランスの支援や勤労者の多様なニーズにこたえるサービスを提供する。

(3)サービスセンターへの支援

 中小企業勤労者福祉サービスセンターの再編(広域化と改革)を進めるにあたって、都道府県が積極的な役割を果たすよう、国の支援・指導を強化するとともに、裏付けとなる財源確保をはかる。また、地域における勤労者のライフサポート事業の促進やサービスセンターの統合・事務の集中化を支援するための基金の造成など、国庫補助廃止に変わる新たなスキームでの国の支援策を早急に検討・実施する。また、全国レベルでのサービスセンターへの支援体制の構築や共同化推進事業等に対する予算措置を行う。(中小企業勤労者福祉事業対策費、全福センターへの補助)

(4)中退共制度の改善

 中小企業退職金共済制度(中退共)への加入促進をはかるとともに、以下の制度改善を行う。

○ 一般の中退共では、「掛金納付期間が1年未満は支給なし(2年未満は掛金納付額を下回る)」となっているが、企業の倒産・廃業の場合には掛金相当額が受給できるよう措置を講ずる。また、特定業種(建設業、清酒製造業、林業)退職金共済制度においては掛金納付期間が2年未満は支給されないことから、一般の中退共と同様に「1年未満」となるよう措置を講ずる。

7.勤労者の生活設計・保障への支援

(1)財形制度の改善

【普及促進に関する項目】
  1. ① 福利厚生の均等・均衡待遇の確保の観点から、パート・有期契約等で働く勤労者が財形貯蓄制度を利用しやすいように対策を講ずる。
  2. ② 「iDeCo」や「つみたてNISA」などの資産形成手段が注目される中にあっても、財形貯蓄制度が引き続き勤労者にとって有用な資産形成の手段のひとつであることを対外的にアピールする。特に新入社員を中心とする若年層に対しては、「資産形成の第一歩」として、財形貯蓄制度が果たす役割を明確化した広報活動を行う。
【税制改正に関する項目】
  1. ① 財形年金貯蓄および財形住宅貯蓄の非課税限度額を1,000万円に引き上げる。
  2. ② バリアフリー改修促進税制、省エネ改修促進税制にあわせ、財形住宅貯蓄の増改築等における適格払出しのバリアフリー改修、省エネ改修に係る費用要件75万円超を50万円超にする。
  3. ③ 介護にかかる非課税財形の払出し時の利子等を非課税とし遡及課税しない扱いとする。

(2)共済制度に関する税制等の改善

  1. ① 遺族の生活資金確保のため、死亡共済金の相続税非課税限度額について、現行限度額(「法定相続人数×500万円」)に「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算する。
  2. ② 消費税等において、控除対象外の仕入税額負担を軽減するための見直しを行う。
    1. a)課税売上割合を算出する際、共済掛金などの非課税売上に一定の率を乗じるなど、控除対象外の仕入税額負担を軽減するための措置を講じる。
    2. b)また、完全支配関係にある子会社との取引に係る消費税について一定の割合を控除するなど、消費税負担の軽減をするための措置を講じる。
  3. ③ 協同組合の性質、歴史的経緯等を勘案し、引き続き、国税・地方税について協同組合税制を堅持する。
  4. ④ 急速に進む社会・経済情勢の変化の中で、共済活動に課せられた社会的役割を果たすため、勤労者・生活者の自主、自発かつ自律的な活動を阻害することなく、相互扶助や協同・連帯の理念を実現しうる法制度の改善を行う。

8.安心・信頼できる社会保障の構築

(1)社会保障制度の再構築

 超少子・高齢、人口減少の急速な進展、単身世帯や単身高齢者世帯の増加、格差・貧困の拡大、社会的孤立者の増加など、経済・社会構造の変化に対応した社会保障制度に再構築するため、政府は国民の参画の下、早急に検討を行い実行する。

(2)失職等に伴う社会保障の充実

  1. ① 失職者等に対して医療保険の確実な給付を行うとともに、税・社会保険料の減免を広く適用するため、所得基準の弾力的運用や特例措置を講ずる。
  2. ② 雇用保険の基本手当について、所定給付日数・給付率の引き上げを行う。

(3)子育て支援

 子育てにおける親の費用負担の軽減のための施策を講ずる。

  1. ① 児童手当、児童扶養手当、出産・育児休業給付など、子育て家庭への給付を拡充する。
  2. ② 妊娠・出産期からの相談や支援につなげられるよう、自治体の相談窓口を地域の中に拡充する。
  3. ③ 必要な財源を確保したうえで、良質な保育・幼児教育など子ども・子育て支援策を充実する。保育・教育の人材を育成・確保・適正配置し、処遇を改善する。

(4)年金制度の信頼の確保

  1. ① 年金受給開始年齢にかかる選択幅を拡大する。
  2. ② 在職老齢年金は就労による労働参加率向上を促すようあり方を検討する。
  3. ③ 公的年金積立金の管理・運用にあたっては、以下の内容を重視する。
    1. a)公的年金積立金の運用については、専ら被保険者の利益のため運用する。
    2. b)運用方針の検討・決定については被保険者代表が過半数参加する合議機関でその同意を得て行う。また、合議機関の委員はインサイダーとなる業界構成員を除外するとともに、退任後も一定期間回転ドア型の業界再就職を制限する。
    3. c)政府が日銀の金融緩和と一体でGPIFに強要した株式投資比率拡大方針を撤回する。
    4. d)株式運用投資では、国連が呼びかけた「責任投資」を推進する。
  4. ④ 最低限の生活ができる年金給付制度の検討や納付負担の軽減のための施策を検討する。
  5. ⑤ 年金制度について、国民的議論ができるよう、情報提供を強化する。特に、若年層への制度の情報提供を強化する。
  6. ⑥ 短時間労働者の老後生活を支え、将来の年金財政安定に貢献するために、速やかにかつ抜本的に加入拡大を図る。
  7. ⑦ 年金・医療をはじめとする被用者保険について適用基準を満たす労働者に洩れなく適用させる。

(5)安心の医療・介護体制の整備

【医療分野】
  1. ① 総合診療医や訪問看護師の育成などの推進による、在宅医療の受け皿を拡充する。
  2. ② 地域医療構想の実現にむけて地元自治体や公的病院などとの連携を強化する。
  3. ③ 医療従事者の働き方改革を進めるため、医師数を増やす。
  4. ④ 後期高齢者の医療費の窓口負担を軽減するとともに子ども医療費施療制度を創設する。
  5. ⑤ 医療労働者が自己犠牲を払わない働き方を実現する診療報酬改定を行う。
【介護分野】
  1. ① 地域支援事業(総合事業)では、利用者・地域住民がサービスを受ける権利を保障し、介護予防や自立支援を進める観点から、総合事業の事業費上限を緩和するなど更なる制度見直しを行い、継続性のある事業を実施する。
  2. ② 「介護離職ゼロ」を実現する前提として「介護職員離職ゼロ」になるよう、全ての介護従事者の介護報酬を引き上げる。
  3. ③ 介護保険制度の見直しにあたっては、サービス内容の低下を招くことのないよう、利用者本位の見直しを行う。
  4. ④ 地域において、認知症の方の見守り活動に取り組むNPOや市民団体等に対する支援を拡大する。
  5. ⑤ 成年後見人制度及び市民後見人制度の拡充と、後見人の確保・育成、制度利用の周知のための支援を行う。
  6. ⑥ 市町村において、家族介護を行う介護者(ケアラー)が孤立しないよう、経済的な問題や身体的・精神的負担、就労など困り事に寄り添う相談体制の整備と相談員の確保・育成を行うための支援を強化する。
  7. ⑦ 介護人材の確保は事業所の努力だけでは限界があるため、第8期介護保険計画の作成にあたっては、各保険者が取り組むようにする。
  8. ⑧ 地域包括支援センターの機能を強化し、実施体制を整備するため、保険者ごとに基幹的役割を果たす地域包括支援センターの設置を促進する。また、地域包括支援センターの安定運営に向けて、保険者による財政措置、人材確保や教育研修など施策強化のための支援を行う

(6)医療・介護分野における人権保障

 身元保証人がいない人を医療機関や介護保険施設等が入院・入所を拒否することは、法違反にとどまらず人権問題である。厚生労働省は指導を強化し解決をはかる。一方で、医療機関や施設の利用料未回収問題に対しても政府の責任で改善策を検討する。

9.くらしの安全・安心の確保

(1)食品の安全性確保および表示問題

  1. ① 食品衛生法や食品表示制度の改正について周知をはかり、事業者・消費者双方に対して、食品の安全確保や食品表示に関する理解度を向上させる。
  2. ② いわゆる「健康食品」については、指定成分等(リスクの高い成分)を含む食品の監視指導を推進するとともに、リスクの高い他の成分等も追加する。広告、表示に対する監視指導を強化し、消費者やメディアへの情報発信、啓発を通じたリスクコミュニケーションを推進する。
  3. ③ ゲノム編集技術を利用して得られた食品について届出制度を的確に運用する。消費者の不安を招かないよう丁寧なリスクコミュニケーションを行い、表示や情報提供を開発者や事業者に対して指導する。

(2)防災や環境に配慮した住宅整備促進等の住宅政策の改善

  1. ① 特例措置制度等の恒久化と要件緩和

     良質で低廉な住宅の安定供給や流通促進、国民の住宅取得支援をはかるため、下記制度の恒久化や軽減措置の導入等を行う。

    1. a) 住宅ローン控除制度の恒久化ならびに床面積要件の引き下げ
       住宅ローンを利用して住宅を取得または増改築等の場合、一定の要件を満たせば住宅借入金等特別控除が適用され、その取得等に係わる住宅ローン等の年末残高から計算した金額が所得税額から控除することができるが、本住宅ローン控除制度は特例措置であり、制度の恒久化をはかる。
       さらに、床面積が50㎡以上でなければ控除を受けることができないため、要件の引き下げをはかる。
    2. b) 住宅取得支援、良質な住宅供給をはかる措置の恒久化
       ア)新築住宅に係わる固定資産税の軽減、イ)居住財産の譲渡に係わる特例、ウ)不動産取得税に係わる特例、エ)認定優良住宅を新築した場合の特例等について特例措置の延長から、措置の恒久化をはかる。
  2. ② 補助金制度の拡充・行政窓口の一元化
     東日本大震災を機に安全で震災に強い安心住宅や省エネルギー住宅がクローズアップされ、高いレベルでの省エネ基準は義務化の動きもある。すでに国による補助金制度はあるが、さらに、a)高耐震・高耐久住宅、b)省エネ対応住宅、c)耐震・バリアフリー・省エネリフォーム、d)液状化地盤改良工事等への国の補助金制度の拡充をはかる。
     また、対応する省庁が国土交通省、環境省など複数存在し補助制度を複雑化しているので、行政窓口の一元化をはかる。
  3. ③ 自然災害の復旧に際しての施策の充実
     甚大な自然災害の復旧に際しては、地域の実情等を十分に勘案した施策をはかる。とりわけ過疎地域等は都市部とは異なり、土地売却が困難である事に鑑み、国・地方自治体による買い上げや公的住宅の新設を行うとともに、生活援助一時金支給等を含めた制度の確立をめざす。当面、当該地域の自治体、地域代表者をメンバーに加えた有識者検討会を政府として設立し、具体的な施策を検討する。
  4. ④ 悪質リフォーム対策
     リフォーム工事業は近年様々な分野からの進出もあり、その競争が激化している。中には高齢者等をねらった悪質な事業者も未だに存在している。「住宅リフォーム事業者団体登録制度」の周知や相談窓口の充実など消費者を保護するための対策を徹底する。
     また、新築住宅に義務化されている瑕疵担保責任の適用を一定規模以上(請負金額300万円以上等)のリフォームにも適用する制度の創設をはかる。

(3)環境およびエネルギー政策について

  1. ① エネルギー政策基本法の改正
     現在のエネルギー政策基本法では、「安定供給の確保」、「環境への適合」、「市場原理の活用」の3つを基本視点として定めている。今後は、この3つの視点にもとづく取り組みを推進していくことに加えて、「安全の確保」と「国民の参加」を基本視点に盛り込む。
  2. ② 中長期的な日本のエネルギー政策を展望し、以下の課題に取り組む
    1. a)原子力発電への依存を段階的に低減し、最終的には原子力エネルギーに依存しない社会をめざす。
    2. b)省エネルギー(節電)による使用電力量の大幅削減に向けた施策を推進する。あわせて事業者の省エネルギーをさらに進めるための支援制度の充実をはかる。
    3. c)効果的な省エネルギー技術の開発と普及のための施策を行う。
    4. d)地域にある多様な資源を生かした再生可能エネルギー普及の取り組みを拡大する。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の見直しについては、電源ごとの状況や市場の整備状況、ならびに電力システム改革の進捗を考慮しながら慎重に進める。
    5. e)再生可能エネルギーの導入量増加による系統制約に対しては、合理的な利用と中長期の計画的な系統形成を進め、計画の進捗状況について公開する。また、系統整備費用の負担方式は消費者にとって透明性の高い仕組みとする。
    6. f)電力・ガスなどエネルギーシステム改革における消費者参画を広げ、消費者・需要家が多様な選択肢から選択できるよう推進していく。
    7. g)次世代送電網(スマートグリッド)のような革新的技術の構築を積極的に推進していく。
  3. ③ 3Rの推進に関する施策を強化する
     小売事業者が行うリサイクル活動について、より積極的に位置づけ、その促進のために関連法令(廃棄物処理法等)との整合性をはかる。
  4. ④ 温室効果ガスの削減
     政府は温室効果ガス排出量の目標設定にあたり、第四次環境基本計画(2012年4月27日閣議決定)にて長期的目標として設定している「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減」への道筋を明らかにし、各種施策を実施する。

(4)経済連携問題への労働者・消費者・市民の意見反映

 日本-EU経済連携協定の発効を踏まえ、協定に規定されている、「市民社会との共同対話」において、労働者・消費者・市民を含めた幅広い関係者との対話、および情報公開を行う。また、TPPおよびその他経済連携における協定においても、労働者・消費者・市民の労働や生活にも密接に関わる問題であり、同様に意見反映の場を設ける。

(5)水道の安全・安心の確保

 2019年10月の改正水道法施行に伴い、地方公共団体が担ってきた水道事業の運営権を民間に売却する(コンセッション方式)ことが可能になった。
 水道は公共性が高く、国民の日常生活や命に直結する貴重な財産であることから、安心・安全な水の供給、災害の発生等への備え、料金設定などが懸念される。水道供給事業の健全化にあたっては、民間活用も含めた手法について、メリット、デメリットを正しく開示する中で、受益者たる住民参加のもとで意思決定を行うことを自治体に周知徹底する。

TOPへ